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以上を踏まえて

「今回フラウステッドが契約した悪魔はインプ、害も少ないし殺される事もほとんど無い」

「クインクちゃんはいい子ですよ」


ルナがそう言うとクインクは照れたように身を捩った。


「だが、世間には下級悪魔と契約したという事実しか伝わらん事も多い」

「実際ルナちゃんだったら中級でも倒せるよね」

「頑張ったらいけるかも」


ティナがそう言うとルナもやや言葉を濁したが肯定した。実際はルナは肩書きや所属を明らかにするだけで大抵の悪魔は彼女に逆らえないのである。


「フラウステッドならルルイエを隣に立たせたら大抵の悪魔は泣いて命乞いするだろ」

「Fクラスで唯一の使い魔契約をしてる生徒だね」

「だから真似してエラい目を見る奴も出てくるんだ!死人がでかねん」


Fクラスの一年生が下級悪魔と自力で契約した。そう言う話が公になると中には話の中身を理解せずに『それなら自分も・・・』と考える者が出てくるというわけである。その事が招く危険を知らぬルナに黒板消しで頭をポンポンしながらアダムはぷりぷりと怒っている。


「ひぃん」

「まったく!」


ルナの頭が真っ白になった頃にようやく怒りが落ち着き始めたらしくアダムはクインクにも言含めることにした。


「クインクと言ったな、悪いがお前さんの主人は大概規格外だ。そう言った意味ではお前さんは非常に運がない」

「きかくがい・・・?」

「ああ、まあこれはまたフラウステッドと三人の時に話すが・・・お前さんには是非とも主人のストッパーになって欲しいところだ」


ふぅ・・・と溜息をついたアダムの言葉をクインクはまだ理解できずにいた。

アダムはクインクの首にエトナ―特製の首飾りが付いているのを見てさらに溜息をついた。


(コイツも規格外寄りか・・・?だとするとさらに面倒なことになるだろうな・・・)


アダムはそれ以降、表情や態度には出さず、皆にこの事を口外しないことを徹底して授業を始めた。



「アダム、彼女は、面白い、運命だな」


休憩時間になり資料を取りに職員室に戻ったアダムにサピスキアが話しかけてきた。

アダムはあえてとぼけたように答える。


「彼女というと、クインクというインプの事か?」

「ああ、彼女はもう、インプでは、ないが」


サピスキアの目は特別製だ。膨大な知識と疑似体験した経験に裏打ちされた理合いと魂の色を見抜く魔眼にも似た性質の瞳はクインクの異常性を一目で看破していた。


「上級悪魔、そして、種族として、純粋な、悪魔に、なっている」

「・・・嫌な予感の通りになったか」


彼女の才能なのか、それとも大悪魔たるルナの異常性なのか彼女はインプという種族を超越して他種族に成り果てたという。種族としての悪魔、魔を司る種族の一員と。


「彼女は、どこまで、いくのだろうね」


その言葉にアダムは沈黙で返した。彼女とはクインクではなく、ルナのことだろうと思ったからだ。

インプを上級悪魔にしてしまう大悪魔。72柱の新たな末席。ルルイエの愛し子。聖人の内弟子。深淵にてなお清らかなる者。


肩書だけでも恐ろしい。


「俺にはわからん、だからといって放り出すわけにもいくまい。教え導くのが教師の仕事だ」

「導く、か・・・そうだね」


サピスキアは窓の外を見て感慨深げにつぶやいた。


「君は、諦めない人、だ・・・彼女も、運が、いい」

「そんなんじゃない」


仕事だ仕事。とアダムはそう言うと資料を乱暴に集めて職員室を出ていった。

サピスキアはそんなアダムを笑顔で追いかけていった。





「さて、クインクちゃんも仲間になった事だし一緒に色々と練習しよう」


放課後、ティナを連れて実習室に来たルナは魔法の練習を兼ねてクインクの実力チェックをすることに。


「ほどほどにな」


一応監督としてアダムを伴っての練習もこれで何度目だろうか。ティナは順調に失神と覚醒を繰り返しながら雷の属性鍛錬を続けている。


「色々と言いますと・・・」

「力のコントロール!色々とやっとかないと大変だからね」


ルナは両手で体を抱くようにするとそのまま腕を広げる際に蝙蝠の羽根に変形させた。


「みっ!?」

「わはー、ルナちゃんと同じリアクションだ・・・びびび」

「ひおっ!?」


ティナが驚くクインクを見てケタケタと笑っている。そして自分の頭をピコッとハンマーでたたいて感電している。


「だいぶコツが掴めてきたなぁ」

「そうかそうか、何十回と失神した甲斐があったな」


帯電しながらどこか満足気なティナを見てアダムは遠い目をしていた。

これまでさんざん自分の頭を叩いては失神していたのだ。傍から見れば異常者以外の何物でもない。

しかしながらその努力の甲斐あってかティナの雷の魔力に対するキャパシティーと操れる威力は非常に高くなっており、そろそろ魔力をコントロールして身体強化や魔法の使用へとステップアップする頃合いだろう。


「雷光のように素早く走れたらいいのになー」

「その勢いで壁とかにぶつかったら漏れなくミンチになるがな」

「うげえ!」


アダムが釘を刺し、ティナは青い顔をする。


「さ、クインクちゃんもやってみて」


ルナはそう言うと悪魔としての姿を露わにしていく。


「・・・」


まるで温かい光のような・・・。クインクはその姿から感じ取れる魔力が驚くほど自分と親和性が高いことに気付いた。

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