学校にて
「おはようございます」
翌日、ルナ達は魔法学校に登校した。
「おはようルナちゃん」
「おーす!ルナちゃん・・・ん?その子だぁれ?」
その途中でティナとマリーがルナ達を出迎える。
元気印のティナが手を振りながら近づくとルナとイングリッド以外の姿を見つけて首を傾けた。
クインクはティナの遠慮のない注目に少しだけ体を固くしている。
「ふふふ、実はね・・・私の使い魔のクインクちゃんだよ!」
「えっ!使い魔!」
「でかい!」
二人はルナがそう言ってむん!と自慢げに胸を張ったのを見て驚いた。
ティナは驚きのポイントがちょっとズレていた。
「使い魔ってもう少し上の学年にならないと契約出来ないんじゃなかった?」
「そうなの?」
実際、魔法学校では使い魔の契約には危険が伴う為に一年生の使い魔契約は基本的に許可されていない。
クインクは元々が下級の中でも力の弱い部類であった為に街を歩いていても放置されていたがこれが魔獣などのタイプに分類されていると駆除されていたかもしれない。下級と言えど魔界に生きるものなのである。
「そうなるとディーン先生に相談しないと・・・」
「そうだね、いつ契約したのかは知らないけどとにかく言うだけは言っとこ」
一行はそのまま学校へと急いだ。
「おはようございまーす」
Fクラスの教室に入ったところでルナ達はいつも座っている位置に陣取った。クインクは何処に座ろうか悩んでいたが手を引かれてルナの膝の上に収まった。
「おや、知らない顔ですね」
「ダズ君、この子ルナちゃんの使い魔だって。名前はクインクちゃん」
「へえ、インプに見えますね。よろしくお願いしますね、クインクさん」
ダズが興味本位で話しかけてくる。彼ものんびりした性格ながら知的好奇心は高く、居眠りの常習犯ながら座学の成績は悪くない。そして誰に対しても丁寧な物腰なのでクラスの面々からの評価も高い。
「インプはそのルーツを妖精に持つと聞いたことがありますよ」
「妖精?」
「ブラウニーたちと同じく家に住む妖精です。悪戯をすることもあるが基本的に無害で、意外と人気のある悪魔と聞いたことがあります」
人気と言っても家事をする人からですが。とダズは言う。
ブラウニーも同様に家事手伝いや家の管理をする妖精で、屋敷や家が古くなり妖精を生み出す土壌となる条件を満たすとそこからブラウニーは生まれる。そう言った家は価値のある家とされる。
「ほえー」
「戦闘能力はほとんどありませんがルナさんは魔力がとても多いので貴女が魔力を供給すれば魔法を使って補助することもできるかも」
「詳しいね」
「図書館で調べましたからね」
ちょっと自慢げなダズ。皆もそれには素直に感心していた。そうして話しているとアダムが教室に入ってきた。
「おはよう、授業を始めるぞ」
「「「「おはようございまーす」」」」
教壇に出席簿を置いてアダムは授業を始めようとしたがルナが手を挙げているのに気付いた。
「どうしたフラウステッド」
「えっと、あのう・・・この子のことなんですが」
アダムの視線がクインクを捉える。そしてやれやれと言わんばかりに溜息をついた。
「どこから連れて来た?インプじゃないか、屋敷の人が困る前に帰してこい」
「いや、私の使い魔です」
それを聞いたアダムはぴたりと動きを止めた。ルナは若干嫌な予感がした。
おそらくだがコロンはアダムに連絡はしてくれていないのだろう。彼の反応からそれはおおよそ察せられた。
そしてつかつかとルナの前までやってくると・・・。
「おーまーえーはー!またそうやって勝手なことをぉぉぉ!」
「いひゃいいひゃい!」
「やめ、やめてぇぇ」
ルナの頬を怒り顔で引っ張る。クインクが半泣きで抵抗するがアダムの手が余計に動いて被害が悪化しただけだった。
「まったく!一年生が使い魔の契約だなどと異例の事だ。家系に仕える悪魔ならともかく・・・」
「そうなんですか?」
「当たり前だ!召喚術の応用にしろ、野良の悪魔を捕まえて使役するにしろ危険に決まってるだろ!」
悪魔の召喚による使い魔の契約は当然ながら失敗すると死の危険がある。また契約の失敗ともなると悪魔も色々な制約の免責事項の為容赦がない。
「使い魔になるということは相手を契約の間だけとはいえ主人と仰ぐことだ、単に手伝いをしてもらう事とは難易度が段違いなんだ」
前提として力ずくで相手を制御できること、もしくは悪魔を納得させるだけの能力を示す必要がある。
例え下級の悪魔であっても魔法使いが使い魔として使役する悪魔は殆どが獣をベースにした魔獣タイプが多い。
彼らはそもそも意思の疎通が難しく、使い魔契約をしてようやく命令を聞いてくれるレベルだ。
「魔獣タイプの悪魔は身体能力が高く・・・まあ、それが目当てで使役するんだが・・・その分突然飛び掛かられたりして命を落とす魔法使いは多いんだ」
狼型などは人気だが当然ながら猛獣である。彼らに喉笛を食いちぎられたり杖を持つ手を食いちぎられたりして命を落とす魔法使いは多い。下級の悪魔は剣士や兵士でも対処ができるが彼らは逆にフィジカルに自信がある。
懐に飛び込まれた際の対処を念頭に置いて鎧やガントレットなどを装備しているが魔法使いにそういった備えをする者は少ないのだ。
「防具とかつけないんですか?」
「遠くからなら容易く魔法で対処できること、下級という響きに惑わされるものが多いんだ。とくに学生はな」
多くは飛び道具、もしくは遠距離攻撃ができるという慢心が彼らの命を奪うのだ。
下級悪魔相手に兵士や剣士が善戦できるのはひとえに獣相手に戦った経験値の差だという。




