聖人、クインクを見守る
エトナーはクインクがルナと一緒にいることがいい結果に繋がるだろうと思い、重ねて二人に使い魔としての契約を促す事に。
「二人とも、ここでの生活には使い魔の契約が不可欠だ。ルルイエの奴に頼めば契約くらいはできるだろ」
エトナ―はそう言うと二人の頭を撫でて笑顔を見せた。二人が目を細めてそれを受け入れるのを嬉しく思いつつ、エトナ―はコロンに後の事を任せて自身は早々に引きあげることに。
「そんじゃ、ちょいと用事があるからお暇するぜ」
「あ、はい。お騒がせしました」
「いいってことよ。お騒がせも師匠の何千分の一程度だぜ」
笑いながらエトナ―は保健室を出ていくとそのまま魔法学校の正門へと向かう。
「おお、こりゃまた・・・」
正門には数人の聖職者が門を挟んで校務員となにやら揉めていた。
「こまります!確証も無しにあなた方を招くわけには・・・!」
「悪魔の気配がするのだ、それを調べるのは我々の責務」
「ですから、それに関しては学校の職員を呼ぶまでお待ちいただきたいのです!」
留守を預かる校務員としては部外者をおいそれと招くわけにはいかないだろう。せめて教員を呼びたいと言っているがその間にも彼らは押し入ろうとするかもしれない。
そう思わせるほど剣呑な雰囲気だ。
「よーす、お前ら・・・なーに、おっちゃん脅してんだよ」
後ろから声を掛けられて校務員は仰天している。そしてそれを見て悪魔祓い達は厳しい目をエトナ―に向けた。
「貴女こそ一体何を・・・」
「ん?ああ、さっき上級悪魔の事を対処してきたとこだ」
「そもそもどうやって校内に・・・」
悪魔祓いは呆れたように溜息をつき、校務員は不思議そうにエトナ―を見ている。
「ん?勝手口から入ったぜ」
「え!結界があったはずですが・・・」
「はじき出すタイプじゃないと意味ないぜ」
そう言うとエトナ―は行きと同じように結界をバチバチと音を立てながら素通りした。
今度は校務員だけでなく悪魔祓い達も仰天した。
「お前さん達も職務に熱心なのはいいがな。ちょいとばかし肩に力が入り過ぎだ」
「貴女が緩み過ぎなのでは?」
悪魔祓いの言葉にエトナ―は豪快に笑う。
「わはは!自力で結界も抜けられない癖に言うじゃねえか。どうやって上級と渡り合うつもりだったのか知らんが悪魔を見くびるなよ」
そんな殺気丸出しのお前さん達に見つかるほど馬鹿じゃねえよ。と言いながら帰ろうとするので悪魔祓い達は慌てて引き留めた。
「待ってください!対処したというのはどういうことです?」
「魔力を制限して、おいおい知り合いの使い魔にするつもりだけども?」
あっけらかんと答えたエトナ―に悪魔祓いは不満を述べた。
「また勝手な事を!それに上級ともなれば魔界に帰すべきではないのですか!」
「悪さもしてないのにか?どっちにしろ下級クラスまで落としたから問題ねーだろ」
悪魔祓いの一人はその言葉に歯噛みした。エトナ―の決定は教会の決定に等しい。また下級クラスまで魔力を制限したのであれば悪魔はおおよそ無力化されたと言っていい。下級であれば多少魔法の心得があれば対処可能だからだ。
おまじないで行動を制限できるし、魔除けで追い払うこともできる。
「そんな都合のいい事ができるんですか?」
「おー、疑うのか?ぺーぺーの悪魔祓いが。なんなら少し、遊んでやるぜ」
「なにを・・・がっ・・・、は、はぁっ」
振り返って鋭い眼差しで見つめる。するとその威圧感はまるで巨大な掌に押しつぶされるような凄まじいもの。
目が合った悪魔祓いはその威圧感に負けて冷や汗をかき、息苦しそうに息を吐いた。
「口ばっかか?その程度の重圧を跳ね除けられないなら相手がその気になった時点で負けだな」
「っ!」
言い返そうと睨みつけたものの、出てくるのは苦しそうな息遣いばかりであった。
「悪魔祓いに一番必要なものを教えといてやる。お前らもよく聞いとけ」
そしてエトナ―は自身の心臓がある位置を親指で指し示していう。
「ここだ、度胸と信仰。これに尽きる!お前らみたいに普段つんけんしてるのにいざってなると怖気づいちまうような半端もんが一番困る!」
エトナ―はそう言うと悪魔祓いの一人の首根っこを掴むと有無を言わせず大聖堂へと向かった。
「お前らもこい!口ばっかの連中にゃいっぺん灸を据えてやろうと思ってたんだ」
エトナ―は悪魔祓い達に向かって怒鳴りつけると全員を引き連れて引き上げていった。
校務員は嵐のようなエトナ―に呆れるやら感心するやら。ただただその圧倒的な威圧感に動けずにいた。
「それじゃあ私達も戻ります」
「ええ、気を付けてくださいねぇ」
ルナとクインクはそう言うとコロンに再三のお礼を述べて保健室を後にした。そして当初の予定とは大きく違ってしまったがそのまま家に帰ることにした。ルナはクインクを連れて帰路につく。
「あの・・・、フラウステッド・・・さん」
「ルナでいいよ」
「でも、その・・・」
遠慮がちに尋ねるクインクにルナはそう気軽に答えた。ルナにはクインクの聞きたいことがなんとなくわかっていた。




