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目覚めた!

紙相撲のコマのようにあちらこちらへアタフタする二人。

そんな二人を他所にベッドの上のクインクはやがてゆっくりと目を開いた。


「お、起きましたよ!」

「そうですねぇ!」


うーんとうーんと、と唸るルナとえーとね、と考え込むコロン。目を開けたクインクは起き上がると伸びをして目を擦りながら呟いた。


「兄ちゃん、今日は何するんだっけ・・・?」


その言葉に二人がキョトンとしているとクインクは返事がない事に気がついたのか周囲を見渡した。


「・・・ここどこ?」


それから理解が追いついて来たのか、顔をくしゃくしゃにして膝を抱えた。


「どうしたの?」

「お兄ちゃん・・・死んじゃった」


命の危機が去ったと同時に彼女は喪失感を感じていたのだ。いつも隣にいた、自分がいつも便りにしていた兄を失った実感を。


「お兄ちゃんが?」

「ふぐ、う・・・ううっ、さいごの、たったひとりの、兄ちゃんだった・・・のに、わたしの、せいで死んだ!」

「あなたのせい?どうして・・・?」


ルナがクインクの肩を抱いて問いかけるとクインクは涙を流しながら事情を打ち明けた。

酷い悪魔に搾取され続けて兄たちを立て続けに失ったこと、そして最後に残った兄をその悪魔のせいで喪ったこと。

悪魔から逃がす為に死して灰になってなお自分を庇い助けてくれたこと。


「私が・・・わるいんだ・・・兄ちゃんの・・・じゃまになったんだ・・・だから・・・」

「・・・むっ、そんなこと・・・」


そんなことない、と言いかけながらもルナはクインクの言葉を聞き続ける。


「何をしたらいいかわからなくて、一人じゃなにも、できなくてっ・・・役立たずでっ・・・」

「むむっ・・・」

「だからっ・・・」


自分の兄が死んだことで自分を責めているクインクに最初こそ悲しい顔をしていたルナだったがクインクが自分の価値を貶めるような言葉を言うにつれて表情を厳しいものにしていく。


「わたしが・・・わたしが・・・あのとき・・・」


代わりに死ねばよかった


その言葉を言わせまいと遮るようにルナはクインクの顔を掴むと強引に頬をビンタした。


「あ、いっ・・・」

「あなたとあなたのお兄さんを貶めるのはやめなさい!」


ビンタされた頬を押さえ、呆然とした顔で自分を見上げるクインクにルナは目に涙を溜めて叫んだ。


「え・・・?」

「いい?聞いて!貴女のお兄さんは!決してどうでもいい者の為に!灰になってからも助けに来たりしない!」

「で、でも、でもっ!」


兄が生きていた方が色々な事が出来たかもしれない。そんな風に考えるクインクの肩を掴んでルナは言う。


「どんな風に生きてたってあなたをバカにする人はいるかもしれない、失敗して惨めな気持ちになることもあるかもしれない!」


クインクの頭にボルブの顔が浮かぶ。そして、無力な自分の姿も。しかしそれを吹き飛ばすようにルナはつづけた。


「でも!それでも!貴女は貴女自身を馬鹿にしてはいけないの!わかる?」

「ど、どうして・・・」


どうして自分を責めてはいけないのか?どうしてそれが兄と自分を貶める事になるのかわからず混乱するクインクにルナは息を吸い込んで、まるで意を決するようにはっきりと答えた。


「お兄さんが貴女に生きていて欲しいと願ったから!それだけで十分!貴女のお兄さんはそのために命を賭けた!」


お兄さんは貴女に何と言ったの?とルナが真っ直ぐに自分を見つめて投げかけた問いかけにクインクの瞳が揺れた。


「死んだら・・・ダメだって・・・」

「それだけ?」

「生きて、幸せに・・・って・・・言ったぁ・・・」


言葉を聞き、すぐにルナはクインクを抱きしめた。優しく、受け止めるように。


「それじゃあ、生きなきゃ。それから、幸せにならなきゃ」

「うぅ、ううう・・・けど、けど!か、かなしくて・・・つらくて・・・!」

「もちろん、今は無理。辛いよね・・・だから、我慢しなくていい」


一杯泣いてあげて、大切なお兄さんの為に。そう言って強く抱きしめると、クインクはそれに応えるように声を上げて泣いた。今まであったたくさんの辛い事を吐き出す様に。







「う、ぐす・・・」

「落ち着いた?」


それからどれくらい時間が経っただろう。嗚咽がまだ残っていたがクインクは大分とすっきりした気持ちになった。

兄の死をまだ乗り越えたわけではない。まだ一人で生きていける自信もない。

ただ、自分の事をこんなにも考えてくれる人がいる。

それだけで今は十分な気がした。



それから少しして、ドアの音と共にコロンが紙袋を持って入ってきた。そして二人の様子を少し伺いながら言った。


「お二人さん、そろそろお昼にしませんかぁ?」


まったくもってのマイペースであるが、クインクをルナが宥めている間に昼食を買いに行っていたようだ。


「フラウステッドさんもいかがです?」

「え、いいんですか?」

「もちろん」


紙袋からパンを取り出すとその内の一つをルナに。もう一つをコロンはクインクに差し出した。

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