ダメ押しに・・・!
値札を全て取り換えたティナは準備万端とばかりに開始の合図を待った。
「太鼓の音だ」
そして広場に陣取っていた管理者が太鼓をたたき、同時に時報としても機能する教会の鐘が鳴った。
バザー開始の合図である。
「凄い人!」
ルナは入り口が解放されると同時に流れ込んだ人の波に驚いた。
「いっつもこんなもんだよ、だから売り物があればなぁって言ってたんだよ」
ティナが言うにはバザーはいつも大賑わいだそうだ。しかしルナは朝に此処に来たことがなかったのでここまで朝から賑わっているとは思いもしなかった。
「ほえー」
「ほら、ルナちゃん!声!声出して!」
「あ、うん、・・・いらっしゃーい!」
ルナが大きな声をあげると何人かがこちらにやって来た。そして置いてある商品をまじまじと見つめ始める。
「これはいい品だ・・・いくらだい?」
「こちらの値段になりまーす」
値札を見て一人の男性が少し迷った素振りを見せる。そこでルナは男性に笑顔で声を掛ける。
「どうでしょうか、ご家族に。喜んでもらえると思いますよ」
「そ、そうだね・・・妻も喜んでくれるかな」
「もちろん」
ルナがそう言うと男性は財布を取り出して貨幣を数え始めた。
「それではこれをくれ」
「ありがとうございます!」
ルナが声を上げるとティナがすぐさま男性が買った品をバババッと包装した。凄まじい手捌きである。
「お買い上げどうもー!」
「ありがとう」
男性は綺麗に包装されたアクセサリーを大事そうに抱えるとそのまま代金を払って帰って行った。
「さっそく売れたね、まかさ値切り無しで買ってくれるとは」
「叔父さんはやっぱり腕利きなんだ」
それからしばらくは人が流れていくのを見ながら時折やってくる客の応対をしていたが・・・。
「これ、どうやって使うの?」
「あ、この髪留めですか?これは・・・こうやって・・・」
ルナが商品の使い方を説明したところから少しずつ雲行きが怪しくなってくる。
後ろで髪を纏め、それを留めるのに使うタイプだったが・・・。
「おおっ・・・」
男がそれを見て声を上げた。髪を纏める都合上、ルナは後ろを向いてやって見せたがその際の仕草がどうやら男の興味を引いたようだった。
「・・・」
「はっ!? ええと、いいね!それ!もらうよ!」
「???・・・ありがとうございます」
ティナがじとーっとそれを見ていたのに気付いて男は我に返ったらしくお金を払ってその髪留めを買ってそそくさと居なくなった。しかしそれを機に・・・
「このネックレスつけてるとこ見せてもらっていい?」
「え、あ・・・はい、こうですかね?」
「おお・・・ごほん、もうちょい目立たせるように・・・」
「おーきゃーくーさーん?」
「うっ・・・、いい感じだ!これなら彼女も喜ぶよ!」
ルナが身に着けて実演するのを要求する客が露骨に増えた。ティナが声を掛けると慌てて代金を払って立ち去っていくが遠巻きに彼女を見ている男が増えてきた気がする。
「面白くないなー!」
「なんか変な人が増えた気が・・・」
「商品じゃなくてルナちゃん目当てだなぁー!このやろうどもめ!」
ティナは自分の決めた値段で売れる事自体は喜んではいたが、それがルナ目当ての次いでと言う事がわかるとすぐに不機嫌になった。
「アイツら商品をついでに見てるなぁ・・・もう」
「なんか視線がおかしいと思ったら・・・」
二人は少し呆れた視線を送りつつ考えを切り替えるために匂い袋を取り出した。
飲食店の多い中央付近だと迷惑になるかもしれないがルナ達は幸い入口に近い場所。遠慮なく使う事ができる。
「これいい匂いだよね」
「落ち着く香りだね、あとこれは叔母さんに教えてもらったんだけどね」
こうすると匂いが服に残っていい感じになるって、とルナはティナの服の袖を匂い袋でぽんぽんと叩いた。
すると匂い袋に入っている香りを放つ成分が僅かに飛散してティナの服の袖につくのだ。
「へー、これは長持ちしそうだね」
「肌につける香水と違って汗とかで流れないからね」
くんくんと匂いを嗅いでみると少し弱いながら香りがついており、ティナは笑顔を見せた。
ルナもそれに倣って袖や手首に匂いをつけるようにぽんぽんと叩いた。
「あの、それ匂い袋ですか?」
「はいそうですよ」
「そ、それ一つください」
お客が来たと二人が使っていた匂い袋を置いて別のを渡そうとすると・・・。
男はルナが持っている匂い袋を指さした。
「あの、その使ったヤツください」
「えっ、なんで・・・?」
「いや、その・・・」
視線が胡乱なものを見る目になってきたので男はしどろもどろになってきた。
「あの、ここは小物やアクセサリーを売る店であってそういったお店ではないんですが?」
「・・・」
「こっちの新品を買ってください」
「あ、はい」
そう言うと男は匂い袋を買ってすごすごと帰って行った。
「どうしよう・・・まるでいかがわしい店みたいだよ」
「悪いことしてないのにどうしてこうなるのかなぁ・・・」
男の背中をみつつ二人は揃ってため息をついた。




