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バザーでござーる! その2

荷車には木箱に商品が布と一緒に詰められている。中身を確認してみるとアクセサリー、櫛、髪留め、女性の身だしなみに使うブラシや手鏡に細かい装飾が施されたものだ。


「お、匂い袋じゃん」


おっしゃれー!とティナは木箱の中身を確認するとすいーっと匂いを楽しむ。

匂い袋はエチケットとして持ち歩くものから衣類の防虫の為にクローゼットにや衣服と共にしまったり、中には聖職者が魔物から身を守るために破魔の香を詰め込んだりする。

市井の人々はそれを装飾と実用性を兼ね備えた一品として持ち歩き、女性は香水よりも安価で持続性が高いことなどから好んでそれを持ち歩いている。

そういった背景から匂い袋は様々なものが作られており、ラルドはその袋に銀細工を縫い付けることで魔除けと同時に見た目を華やかなものにしている。


「これが売れないくらいルナちゃんの叔父さんは・・・」

「ティナちゃん、それは言わないで上げようよ・・・」


ティナは顔を逸らしたがその先に店の角からこちらをじっと見ている大男の存在に気付いてビクッとした。


「デカい人がいる!」

「え・・・あ、叔父さん」

「叔父さん!?」


顔半分だけ出して無表情でこちらを見ているので怪しさ満点。しかも体はデカいので肩や太い腕がはみ出している。

そんなのがティナと目が合ったのでみるみる内に顔を赤くし始めたのを見てティナはどんどん渋い顔になった。


「あれは売れんわ」

「・・・」


ティナの忌憚のない意見にルナは掛ける言葉がなかった。


「叔母さん、叔父さんが物陰から見てるよ」

「あら、ホント・・・ラルド!こっちにきて挨拶くらいしてあげなさい!」


良く通る声でそう言われるとラルドは一瞬引っ込んだがのそのそと歩いてきた。

しかしながら視線を合わせないでやってくるので時折物を蹴散らしながら近づいてくる。


「やあ、ルナちゃん」


短く、絞り出すような声で言うラルド。エリザは流石に呆れた様子で夫を見守っていたがそれきり口を開く様子がないので溜息をついた。


「こんな様子よ・・・、前回も思ったけどこれでよくバザーに行こうと思ったわ」

「・・・無謀でしたね」

「・・・宣伝は・・・したいんだ・・・」

「体と声量のギャップが酷すぎる・・・」


喋る際にも徹底して初対面の相手と目を合わせようとしないラルド。体格はエルドと同じくデカいだけに色々と酷い事になっている。


「ま、まあ物はいいし!ウチらにどんと任せてちょうだいよ!」

「・・・たのむよ」

「え?」

「・・・」


声の小ささに思わず聞き返したティナ、それが不味かったのかラルドの顔はあっという間に真っ赤になった。

そしてそのままスススーッとスライドしていくように店の中に入って行ってしまった。


「悪いことしちゃったかな」

「いいのよ、あの人時々あんな体格してるのに居る事を忘れられるくらい喋らないし」

「・・・いいのかなぁ」

「私で釣り合いを取るから問題ないわよ」


ティナがぼそりと呟いた。もちろん良いわけないのだがエリザが非常に前向きなので常に『どうにかなる』の精神なのだ。

そしてラルドはそれに応えられるオトコではある。

ただただとてもシャイなのだ。


「と、とにかく!ウチらで頑張ってみるから!」


ティナは何度となく出鼻をくじかれまくって空回りしている感が凄かったが商売人の娘である。元気とやる気はある。




「おー、かなり賑わってるね」


荷車を転がしてバザーの開催地に向かうと既に準備を始めている人たちでにぎわっている。

街の中で大きな広場があり、そこが毎回バザーの開催場所になっている。

バザーは基本的に届け出と場所の空きさえあればだれでも参加が可能だ。それが今の盛況ぶりに一役買っている。


「私達のところはどこだっけ?」

「ええとね、この紙に書いてある・・・」


よく見ると地面に区画が書かれており、それぞれの場所が区切られている。

一人につき一つのスペース、もしくは申請があったところは大きめのスペースが作られているところも。

ルナ達が向かうのは広場の真ん中らへん。出店などが近くにあって食べるものを売る店もあるようだ。


「バザーというよりお祭りみたいだね」

「まあ実際そんな感じだよ、だからこそこういった場所で如何に儲けるかが腕の見せ所なんだよね」


荷車を停めて、車輪を固定すると足を出して売り場になるように広げていく。

初めて触るはずなのになんでこんなにスムーズにできるのか不思議に思っていたが・・・。


「初めてみるのによくわかるね?」

「ウチの両親は出だしが行商でさ、こう言った荷車はわりと良く触ったもんよ。そんでそれが高じて商品には荷車も売ってたりする」


たぶんこれウチでも扱ってるタイプを加工したやつだね。とティナは共通する部品を指してササっと作業を終えてしまった。あとは商品を陳列していくだけである。


「お釣りのお金と、商品と、値札と・・・テーブルクロスかな?これを敷いてと」


手慣れた様子のティナ。呼んで良かったとルナも一安心である。

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ティナがいなければ危なかった……
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