バザーでござーる!
そんなラルドだがどうにも今回のバザーに際して問題が起きたらしい。
「ラルドのヤツ、どうにも細工の仕上げの作業が忙しいからバザーに行けないかもと言い出したんだ」
「えっ、じゃあその部分はどうするの?」
「行かないといけないが人を今更探すわけにもいかないから頼めないかと来た」
「で、お父さんが引き受けるの?」
「いや、それがだな」
バザーの場所を登録して出店しなかったら店の信用に関わるからとのこと。当然ではあるがエルドも最初に手伝おうとしたのだが・・・。
「どうも女性向けの小物らしい。銀細工などもあるそうだが・・・そもそもワシも仕事あるし」
「それを叔父さんが売ってたのか・・・」
接客に向いていないラルドということを差し引いても強面の男が女性向けの小物を売っていたら変だろう。
目当ての女性はラルドを見て逃げるだろうし、声を掛ければ男女問わず顔を赤くするのだ。
どんな商品があっても売れる気がしない。
「ワシが女物の櫛なんか売ってたらどう思う?」
「すごく・・・似合わない」
しかも繊細な細工なんてエルドに持たせたら壊しそうである。それ故にルナに打診しているのだろう。
「イングリッドちゃんはどうする?やってみる?」
「・・・人混みはちょっと」
ルナにくっついていたイングリッドは人混みと衆目に晒されることを考えて今回はついてくる気はない様だ。
しかしそうなるとルナは必然的に一人で店番をすることになるのだが・・・。
「そうだなぁ、私一人じゃ不安だし・・・友達に商会の人の子がいるからその子と一緒にやっていい?」
商売となるとルナは未経験だ。しかしそんな時に頼りになりそうな存在が一人。
ティナである。彼女は商会の関係者の娘だし、こう言ったことに目がない。頼めば喜んで引き受けてくれるだろう。
ルナは最悪自分の御駄賃を譲るつもりで提案してみたが
「もちろん、その子にもちゃんと日当を払うように頼んでおくさ」
こちらもお礼を用意しとかないとな。とエルドが言うのでルナは安心してティナを頼ることにした。
「そういうわけなんだけど、次のバザーに売り子のお手伝い頼んでいい?」
「マジ?いいの?もちろんやるってばさ」
翌日、バザーの日が近づく中でルナの頼みをティナは二つ返事で了承した。
「銀細工を含めた女物の小物か。これは売れそうな予感・・・それにルナちゃんの叔父さんのラルドってあれだね
、確か結構そういう界隈では名の通っている人だったような」
商会の情報に詳しいティナはラルドがそれなりに名の通った職人であると知っていた。
ルナはどうにもそう言った装飾に興味がなかったのでイマイチピンと来ていない様子だった。
「そうなの?」
「うん、確か・・・えーと、そのはずなんだけど・・・売り場に立ってるのが女性だったからイマイチ・・・」
「ああ、それたぶん叔母さんがお手伝いしてるからだね」
ティナの想像がイマイチ情報と噛み合わないのは恐らく商売にはラルドの妻が代打で頑張っているからだろう。
「そうなの?」
「叔父さんすっごく恥ずかしがり屋だから・・・」
ラルドは兄と同じく誠実で実直な性格をしている。それ故にか結婚相手にも運よく良き人がやってきてくれた。
明るく、元気で引っ込み思案なラルドに関わってくれる太陽のような女性だ。
しかしそんな信用と能力を同時に持っている人材なんて何人も居るはずもなく、バザーの日は大抵彼女は店番で、一人バザーにいるラルドは終始無表情のまま人の流れを見つめては顔色を上下させているのだ。
品に惹かれて来た客も微動だにせず黙ったままのラルドに自然と離れていく。
「なぜ、なぜにバザーに一人で・・・」
「宣伝とかしたかったんじゃないかな・・・多分」
作っていることを知ってもらう事は大事な事だ。しかし肝心の売り子がまるで仁王像のようにしているのでは全く意味がない気がするのだが・・・。
「まあ私とルナちゃんが売り子するなら大丈夫っしょ!任せといてよ!」
ティナの自信がこういうときは便りになる。経験もありそうだし、ルナもその姿を見て幾分か不安が薄まった。
そうしてバザー当日。
「おはようございます」
「おはようございまーす」
二人はラルドのお店を訪ねた。ラルドへの挨拶とバザーの商品を受け取るためである。
「はいはーい、あら、ルナちゃん」
ドアを開けて出てきたのはラルドの妻、エリザだった。エリザはルナを見ると花が咲いたような笑顔を見せた。
「叔母さん、お手伝いに来ました」
「おほー、朝から美人に会えてラッキー。どもども!ティナ・ユピトールでーす」
「あらお友達?わざわざありがとうね」
笑顔が素敵な女性である。ティナの元気ぶりに動じないメンタルでもある。
「今回はあなた達にまかせっきりになるかもだから商品も少な目にしといたわ」
「ありゃ、そうなんですか?ウチなら全部売り切る自信あるのに」
「それは心強いわ!でも、子供にお店のお金を任せるのはあまりよくないからね」
片付けまでには必ず迎えにいくからね、とそう言いながら小さな蓋つきの荷車を持ってきた。
そこにはラルドのこだわりらしく、停車して車輪を固定した後その荷車がそのまま商品の陳列台になるように設計されているようだ。




