ダンピールとは
吸血鬼の中で太陽に耐性がある者は極たまにしか産まれない。
そしてそれに加えて吸血鬼は子供が産まれにくいと言う特徴もある。それ故に吸血鬼達は社会に溶け込むために混血の道を選んだ。
「ダンピールとは、昨今において混血の吸血鬼を指す言葉だ」
アダムは黒板にイングリッドのご先祖さまの系譜を大まかに纏める。
まず最初に吸血鬼の中から人間に対して忌避感のない人物を列挙して月光教に入信させ、そこからツテを辿って人間と交流し協力を得る。そこから結婚したり、養子を取ったりして前者はそのまま子供を、後者は後々に親族と婚姻させて子供を作る。
「そして後は混血の子供の中から素質のある子を一族の代表として人族との交渉役や連絡役として使い、そこからお互いの落としどころを探ったり、運が良ければお互いに受け入れ合って同じ町や村の中で暮らし始めた」
それが森や廃墟ではなく人里や町で暮らし始めたダンピールと吸血鬼の歴史だ。とアダムは言う。
そして当然と言うべきかはわからないが人間や日光教と真っ向から対立する夜族もいる。
どちらも吸血鬼の一族が多いので厄介だがそれは人間も同じことなのでこの世界ではあまり気にしていない。
「さて、今回はここまでにしておこう」
アダムが時間を確認すると午前中の授業は終わりを告げる時間になっていた。
「それじゃあ、また明日」
「「「はぁい」」」
今日は午前中で授業は終わりだった。アダムが言うにはまた学校のイベントの為に会議があるのだという。
それが何かまではまだ決まっていないとのことだがともかく早く帰れるのでルナ達は帰り支度をしながら話し合っていた。
「これからどうする?」
「いったん帰ってご飯たべるかな。イングリッドちゃんもいるし」
ルナはイングリッドを連れて一旦家に帰るつもりのようだ。イングリッドもルナと一緒ならば不満はない。
ティナはそんな中で思いだしたように口に出した。
「そういえば近々バザーがあったよね」
「バザー?」
「うん、届け出があればだれでも出品できるヤツだよ」
この街にはバザーが定期的に開かれる。大抵は行商が露店を開く場所が与えられて開く者が多い。
イベントというより朝市や蚤の市といったもの。そこでは掘り出し物も売られるし、魔法学校があることで学生が作った魔法道具などが売りに出されることも。
「Fクラスで何か出してみる?」
「売り物にできるものがあるんでしょうか?」
ティナの提案にダズはそう言って考え込んだ。古物や掘り出し物が並ぶバザーで魔法学校の生徒とはいえそこまで魔法を宿らせる特殊な彫金や魔法陣を描けるわけでもない自分たちに何か売り物が用意できるだろうか?と考えたのだ。
「うーん、皆は何かある?」
「わからないなぁ、テイロス君みたいに鍛冶とかできるわけじゃないし・・・」
「俺だってまだ売り物にできるほどの物は作れないぞ」
テイロスはそう言うと困ったように言う。しかしながら彼の言う売り物というのは先達のドワーフから合格点を貰えるレベルということである。実際に小物や包丁などの家庭用品なら十分高い品質を出せるほどだ。
「・・・そもそもティナは勉強しなきゃじゃないの?」
バザーの話題に興味を持っていたティナにクロエが呟いた。座学ではFクラスでワーストを叩き出している彼女である。それを心配したクロエだがティナはぎぎぎと首を動かすと
「勉強もだけど・・・学費もいるんだよ・・・」
「ご、ごめん・・・」
そう暗い顔で言った。ティナは補習組であり、そして金欠でもあった。そんなどこか影が差したような顔の彼女にクロエは押し黙った。
「けど売り物がないと話にならない・・・くそう」
ティナは儲けのための商品がない事に悔しそうにしている。しかしながらそんな上手い話があるわけも・・・
「おお、ルナ。ちょうどよかった。近々バザーがあるだろ?」
どうやらあるらしい。解散して家に帰ってきたルナにエルドが話しかけてきた。
「うん、今日学校でも聞いたよ」
「ラルドを覚えてるか?」
「ラルドって・・・ラルド叔父さんのこと?」
その言葉にエルドは頷く。
ラルド・フラウステッド。エルドとそっくりの弟でフラウステッド家の男らしく筋骨隆々の大男。
しかしその性格は正反対といってよく、豪快で何かと賑やかなエルドと違い、ラルドは無口かつ静物のようにおとなしい性格だった。
「アイツがバザーで商品を何度か出していたんだがどうにも売れ行きが良くないらしくてな」
エルドが言うには品物の質はいいらしい。しかし生来の無口で、大柄かつ強面な顔つきの男が表情を変えずにバザーの席に座っていたら客も買い物どころではないだろう。
「ラルド叔父さん恥ずかしがり屋だしねぇ」
「接客は基本的にカミさん任せだからな」
はにかみ屋の性格でもあるラルドは熱心に話しかけられるとすぐに赤面してしまう。しかし無口で無表情のまま顔だけが赤くなるので大抵の人は彼が怒ったと勘違いして逃げてしまうのだ。
その度合いはかなりひどく、身内のルナでさえ初対面では真っ赤になっていた。




