怒った事でヤバくなったようだぜ!
上級生が立ち上がってルナ達が並ぶ列に追随したのを見てティナは少し嫌な予感がし、こそっと後をつけることにした。
「いい度胸だな、下級生」
「挑戦くらいしたっていいじゃないですか。上手く行くとも限らないのに」
「そうだといいけどな。上手く行った方が大変だぞ」
そう言うと上級生はルナにわざとぶつかりながら列を外れて皆が課題に取り組んでいる場所の近くでルナを見ている。
「おお、1年生!頑張るんだぞ!」
先生は彼らのやっていることがわかっていないのか笑顔でルナを出迎えると壁を作り出した。
「これを得意な魔法で壊せばクリアだ」
上級生が先んじて魔法で攻撃しているが見た目に反して魔法で作られたものだからか強度が高い。
火玉を作って飛ばしていた上級生は数発ぶつけているが罅や焦げ跡を作ったものの破壊までには至らなかった。
「くそっ」
「焦るな、魔法で作ったものには魔力が循環している場合があるぞ」
先生は失敗を重ねて焦っている生徒にもアドバイスをしながら彼らの挑戦を見守っている。
ルナはそれを先生の言葉を踏まえて観察してみる。
「魔力の循環・・・」
壁を見やると土で出来た壁の中に糸のようなものが張り巡らされているのが見える。そしてその途中途中でコブのように魔力の塊があるのが見える。おそらくはそこを狙って攻撃すれば少ない魔力で破壊できると言いたいのだろう。
「よし、それでは1年生!やってみろ!」
ルナが魔法を打とうとしたとき、不意に大きな風が吹いた。
「っ!」
土煙が舞い上がってルナが目を閉じると同時に後ろから石が飛んでくる。ルナは不意に背中に走った痛みに顔をしかめた。
「痛っ・・・」
眼を擦って周囲を見渡すと隣で挑戦している上級生が風の魔法を使っているらしいが魔力を集中させるために大きな風を起こしているようだ。石はおそらく後ろの上級生が飛ばしているらしい。
「こら!上級生!一年生の邪魔になるようなことをするんじゃない!」
「すみませーん」
先生が怒っても上級生は涼しい顔だ。どうやら確かめるまでもなくわざとらしい。
「・・・」
ルナが再び集中して魔法を使おうとすると再び上級生が風の魔法を使って土煙を起こす。ルナがどうにかして魔法を行使しようとした時、再び石が飛んできた。
「痛っ!」
今度は頭に当たった。一瞬視界が歪む勢いだった。頭を押さえてふらついたルナを見て石を飛ばした上級生は知らぬ顔をしていたが振り返ったルナが怒った顔をしているのをみて大げさに肩をすくめた。
「・・・もういい」
真面目にやろうとする人の足をひっぱる上級生の評価なんて知った事か。
ルナは掌に火球を作り出すと力任せに壁に向けて放った。その火球は直撃するとともに火柱を上げて燃え盛り、土壁をそのまま焼き尽くした。
「・・・ッ、痛いなぁ」
呆然としている上級生を他所にルナはカードを先生に見せる。
「ハンコください」
「あ、ああ・・・すごいぞ一年生・・・」
先生も驚いた表情をしているがすぐにハンコを押してくれた。そしてルナは怒った表情を崩すことなく上級生の前に立った。
「頑張ってくださいね」
表情を切り替えてにこりと微笑むとルナは上級生の肩に手を置いた。
「石を投げるより魔法の練習をした方がいいですよ?ね?」
「・・・ぐっ」
肩に置いた手が骨を砕きそうな勢いで握られて上級生は呻いた。
「ティナちゃん、いこ。もう手加減とかしったこっちゃないわ」
「お、おぉ・・・ルナちゃん」
「なに?」
「頭に当たったとこ大丈夫?」
「へーき、ありがと」
ティナはルナが怒っている事、そして魔力のボルテージがルナの体の内側で上がっていくことを感じ取って冷や汗をかいた。なんだかんだ言ってルナがこんな風に怒ったところは見たことがなかった。
「一年生、お前・・・」
「どいてくれます?今から降りるんで」
先ほどの温和な表情が一変して上級生を睨むルナに先ほどまで自分が優位な立場だと錯覚してた彼らはたじろいだ。
今の自分達が彼女に勝っている部分、それが大きく揺らいだ気がしたのだ。
「このまま降りるのか?どうなってもしらんぞ・・・?」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
上級生はキッとルナを睨んだが、その刹那、八つの目に射抜かれたような錯覚を覚えて黙り込んだ。
「?!・・・」
上位存在悪魔の姿を錯覚して上級生は思わず後退った。目の前にいるのは一年生。そのはずだ。
それなのにそれがまるで大いなる存在と重なって見えるのだ。
「Aクラスを差し置いて先に・・・」
「またそれ・・・もういいです」
吐き捨てるようにそういってルナはティナとカティナを連れて下山し始めた。
「ルナちゃん、大丈夫?」
「うん、ちょっと痛むけどすぐ治るから」
ルナの体は特別製だ、悪魔は魔力によって体を再構築できる上にルナは治癒術を使うことができる。
ただこの時の心配は体のことばかりではなかった。
ルナが爆発寸前であることを危惧していた。ティナはカティナと違い、ルナに隠すべき秘密があることを知っている。それを怒りに任せて暴露しないか心配していたのだ。




