第9話:宇宙修学旅行、初日から常識崩壊
出発当日、校庭に集合した俺たち3年B組を待っていたのは——飛行船? UFO? いや、どう見ても「デカい鍋のフタ」にしか見えない謎の浮遊体だった。
「コレ、宇宙船デス。“校外学習用時空航行艇・ぶにょⅡ世カップ(GⅠ)”」
「名前にツッコミどころが多すぎる!」
出入口が“ベコッ”と音を立てて開いた。案内された内部は意外にも豪華。リクライニングシートに宇宙カラオケルーム、なぜか畳の茶室。
「宇宙なのに和風!? いや宇宙だから和風!?」
全員着席し、5点式シートベルト(うち1本は“魂固定用”)を装着。
「発進準備、OKデス」
先生がパネルにちくわぶを差し込むと、船が唸りを上げ、空が裂けた。次の瞬間、星の間を突き抜ける“非現実”の旅が始まった。
「……宇宙、すげぇ。雲が下で月が隣で、小惑星が自撮り棒使ってる……」
2時間後、到着したのは「メテオ温泉郷」。火山クレーターの周りに立ち並ぶカプセル型宿泊施設。空は常に虹色に揺れており、地面の石が話しかけてくる。
「おっとっと、靴の裏チョコついてるよ~」
「石が接客すんな!」
まずは部屋割り。各部屋には“無重力畳”が敷かれていて、座るとスッ……と体が浮いた。
「ふわっ!? く、くつろげねぇ……」
「“畳を信じるココロ”が安定の秘訣デス」
どこまでも精神論なのは地球と同じらしい。
午後はお楽しみ、「重力風呂」。これがまたトチ狂っていた。
湯船に入るたび、重力がランダムで変化する仕様。沈んだと思えば浮き、浮いた瞬間に“加速した温泉まんじゅう”が顔面に衝突。
「うわっ、まんじゅう速っ!! 顔面直撃してくるんですけど先生!?」
「伝統文化デス」
「どこの文化だよ!!」
さらに混浴制で、隣の湯船にはプルプルしたアメーバ型生命体が浸かっていた。
「え、あれって……」
「“トロ族ノ中学生”。目線禁止、シャイデス」
絶対見ちゃいけないやつだった。
その夜は、宿の大広間で交流会。銀河各地の料理がずらりと並び、謎の生物が皿の上で寝ていたり踊っていたり、時々メニュー表が消えたりした。
「これ……ちくわぶじゃね?」
「“ルミナス式・ちくわぶ風タンパク体”デス」
「“風”ってつけるだけで許される世界、怖すぎる!」
お開きのあと、部屋に戻ると、ベッドの横に謎の張り紙が。
『夜間、時空のズレが発生しますが、深呼吸して寝てください。なお、夢と現実の区別が曖昧になる可能性がありますが、次回の小テストには出ません』
「安心できるか!!」
布団に入りながら、俺はぼんやりと空の“色が動く”様子を眺めた。怖い、けど不思議と楽しい。明日は惑星探検らしい。
「……ま、寝よ」
布団の下から聞こえた。
「おやすみ~」
「誰だお前!?」




