第8話:宇宙修学旅行の事前学習、情報量が多すぎる
朝のHRで、化世先生がニコニコしながら言った。
「今月末、宇宙修学旅行ガアリマス」
「修学旅行“ガ”? ていうか“宇宙”って聞き間違いじゃないよな!?」
「行先ハ、“メテオ温泉郷(第三次元)”デス。銀河評価4.7星ノ名所」
「星の評価なのか、評価が星なのか、星そのものなのか分からん!!」
「ソレデハ、事前学習ヲ始メマス」
教室の電気が消え、プロジェクターが起動。スクリーンに映ったのは──
“修学旅行しおり・時空対応版”
著:化世ヒカリ(自作PDF)
ページ1:旅の目的
・多次元間の異文化交流
・宇宙における“友情”の再定義
・おみやげの適切な選び方(重要)
「三つ目だけ地味に現実的!!」
ページ2:旅程(仮)
・初日:メテオ温泉にて“重力風呂”体験
・二日目:小惑星探索ツアー(選抜式:酸素ボンベ付き)
・三日目:異星民族と“伝統じゃんけん”で勝負(負けると講演会参加)
「重力風呂!?じゃんけんで人生左右されるの!?」
ページ3:持ち物リスト
・歯ブラシ
・タオル
・精神安定剤(3次元酔い防止)
・“存在証明カード”※異次元に消されないためのもの
「最後だけ物騒すぎるわ!!消されるの前提!?」
すると、先生がカバンから現物を取り出した。
「コレガ、“存在証明カード”デス。本人ノ記憶ノ一部ヲコピーシ、時空ノ歪ミ内デ自己認識ヲ固定スル装置」
「理屈は分からんが……ちくわぶの形してる!!」
「安心感ノ象徴デス」
「むしろ不安になるわ!!」
ページ4:注意事項
・銀河語B~Dまでは最低限話せるようにしておく
・“時空のひずみ”で体が2人に分裂しても慌てない
・“時の番人”に話しかけられても無視しない(※大切)
「なんで注意事項に“分裂”とか“番人”とか入ってくるんだよ!!」
教室がざわつく中、田島副担任(まだ生きてた)が手を挙げて質問した。
「先生、この“次元税”ってなんですか?」
「異なる存在平面を跨グ際ノ、通行料デス。校納金ニ含マレテマス」
「親にどう説明すりゃいいんだよ、その“次元税”……!」
ページ5:宇宙マナー講座
・ワープ中に他人の“精神軸”を触らない
・“無形体”の生徒とも積極的に交流すること
・温泉で“物理化”が始まっても笑わないこと
「もう全部が初耳すぎて意味が分からん!!」
補足:非常時の行動マニュアル
時間が逆行し始めた場合 → 静かに先生の名前を三回呼ぶ
宇宙船が“自己否定”を始めた場合 → 褒めて伸ばす
うっかり神格存在に話しかけた場合 → 土下座してそのまま寝たふり
「この旅、命がけすぎない!?」
そのとき、スクリーンが消え、教室が暗闇に包まれた。
「……停電?」とざわついた瞬間、天井から降りてきたのは、宇宙服を着た“案内ロボ”だった。
「コンニチワ、修学旅行ガイドAI“ワタルMk-IV”デス」
「ワタル!? なんでロボがしゃべってんだ!?」
「皆サンノ安全ヲ第一ニ考エ……アレ?……チクワブ検出。設定違反。異常検出……」
「ちょ、待て!!先生、なんかロボが暴走し始めたぞ!?!?」
化世先生がさっと前に出て、ポケットからちくわぶを取り出した。
「落チ着ケ……チクワブヲ見ロ……コレガ真実」
「先生、それ万能アイテムじゃねぇからな!?!?」
ロボは数秒間静止した後、機械音を立てながらしゃがみ込んだ。
「……安定シマシタ。チクワブ、癒シ……」
「いやどんなプログラムだよお前!!!」
こうして、事前学習は無事(?)終了した。
俺たちの前に広がる、銀河の果ての修学旅行。
でもその前に——
「先生、本当に行けるんですか?」
「校長ノ承認ノ印鑑、まだモラッテマセン」
「まだ申請通ってねえのかよ!!!」




