第19話:卒業式反撃編〜プレゼンバトル〜
校長の怒号と共に、ちくわぶ装飾は全撤去された。
先生はまたしても「解任検討対象」となり、卒業式からの全面排除も正式に言い渡された。
しかし、俺たちは諦めなかった。
「このまま、先生を黙って追い出させるわけにはいかねえ……!」
「やるか、“卒業式プレゼンバトル”」
きっかけは、生徒会長・空閑先輩の一言だった。
曰く、式典内容の最終決定権は校長にあるものの、「生徒会からの提案を発表する場」が、閉式3日前に毎年あるという。
つまり——
「ここで校長を納得させれば、ちくわぶ卒業式は“復活”できる」
そして当日。
体育館には、全校生徒・教員・保護者・地域代表などが集まり、ステージには**“卒業式提案会”**と書かれた垂れ幕がかかっていた。
先陣を切るのは、3年A組の発表。
「我々は、伝統に立ち返り、紅白の幕、琴の演奏、黒板アートで“厳かに送り出す”ことを提案します!」
拍手が起こる。
続いて、3年C組。
「私たちは“涙と感謝”をテーマに、生徒一人ひとりの手紙朗読を組み込みます!」
感動ムードが高まり、会場の涙腺が温まり始めたそのとき——
「続キマシテ、2年B組。“チクワブ卒業式”案、発表シマス」
化世先生、堂々登壇。
隣には、パワポ操作担当の田所。俺たちは正座して祈るような気持ちで見守った。
スライド①:「チクワブと地球」
「コノ“チクワブ”ハ、元々地球ノ食材。シカシ、宇宙ニモ同様ノ食品ガ存在シマス。“ブチクーワ”ト呼バレ、友情ノ証トシテ用イラレマス」
スライド②:「卒業式×ちくわぶの融合」
「皆デ飾リ、皆デ食ベル。卒業式デ“大切ナモノ”ヲ共有スル文化、創リタイデス」
スライド③:「地球ト宇宙、そして未来へ」
「地球ハ、マダ未完成デス。皆ノ卒業ト共ニ、未来ヲ“煮込ンデ”イキマショウ」
俺たち生徒の中には、すでに鼻をすすってる奴もいた。
「……ちくわぶ、食いたくなってきたな……」
「なんか、うどんと並ぶ国民食に思えてきた……」
だが、最大の難関はここからだった。
校長質疑タイム。
壇上に立つのはもちろん、あの怒りの赤鬼・校長先生。
「なるほど……では一つだけ質問しよう。“ちくわぶでなければならない理由”は何だ?」
一同、凍りつく。
「……」
化世先生が、静かにマイクを持ち直した。
「チクワブハ、“未完成ノ象徴”デス」
「未完成?」
「チクワブハ、素材トシテハ地味デ、独立シテ食ベルコトモ少ナイ。ダカラ、“他者ト共ニ在ル”コトデ意味ガ生マレマス」
「……」
「卒業スル皆サンモ、“未完成”ナ存在。ダカラコソ、未来デ混ザリ合イ、誰カト意味ヲ作ッテイク。ソノ象徴ガ、“チクワブ”ナノデス」
……沈黙。
静寂を破ったのは、校長の咳払い。
「フン……屁理屈にしては、よく煮込まれていたな」
え、今、煮込まれてたって言った!?
次の瞬間。
「……認めよう。**“演出の一部”として、ちくわぶの使用を許可する。**ただし“節度を持って”な」
「やったあああああああ!!!!!」
拍手が爆発した。田所が先生に抱きついて転がり落ちていった。
「“節度”って言ってたぞ! くす玉をちくわぶで作るのはナシな!!」
「ダイジョウブデス。“光ルちくわぶ”ニ変更シマス」
「先生、すでにアウト気味だよ!!!」
こうして、ちくわぶ卒業式案は正式採用された。
装飾係は再び動き出し、保健室では“ちくわぶアレルギー確認表”が配布され、家庭科部は“式後ちくわぶ試食会”の準備に追われた。
俺たちは、これまでにない想いで式のリハーサルを繰り返した。
なぜなら、そこには確かにあったから。
担任への感謝。
そして——
“煮込んだ日々”への敬意。
次回、ついに卒業式本番。
俺たちは、ちくわぶと共に旅立つ。




