チクワブ式卒業式準備①
二学期の終わりが見えてきたある日、化世先生が珍しく神妙な顔をして言った。
「皆サン、ソロソロ“卒業式ノ準備”ヲ、始メマショウ」
教室内が、一瞬ざわつく。
「えっ、もうそんな時期か……」
「来年から担任いないと思うとちょっと寂しい……」
「ちくわぶのない生活なんて、考えられない!!」
最後のは俺じゃない。たぶん田所。
そして、ここで先生が一枚の設計図(という名のスケッチ)を掲げた。
「卒業式ノ飾リ付ケ案、完成シマシタ」
黒板に映し出されたその図は──
ちくわぶアーチ、ちくわぶブーケ、ちくわぶくす玉、
校門にちくわぶ巨大彫刻(通称:門ブ)……
「全部、ちくわぶやんけ!!!」
「もうちくわぶ式典じゃん!!」
「いやでも……逆にここまできたらやるしかなくね?」
「ここまで付き合ってきた俺たちが、今さら引けるわけねえだろ!」
勢いでクラス全員が賛同し、**“チクワブ卒業式”**プロジェクトが正式始動した。
数日後——
装飾係の田所と俺は、体育館に約300本のちくわぶを吊るしていた。
「これ、重量で梁が崩れないかな?」
「だいじょぶ、先生が“軽量化ちくわぶ”ってやつ使ってる。真空加工らしい」
「真空ちくわぶってなんだよ!!」
そして校門には、3mを超える金色の“門ブ”が完成。遠くから見ると……巨大なバームクーヘンにしか見えない。
「これぞ、チクワブ・オブ・レガシー……」
「うまいこと言うなよ!!」
完成した飾り付けを見て、先生は満足そうにうなずいた。
「完璧デス。地球デノ初卒業式、ワタシ感無量……」
そこに。
「これは何の冗談だァァァァ!!!???」
爆音のような怒声が響き渡った。
振り返ると、そこには鬼の形相の校長先生が立っていた。
「ちくわぶに次ぐちくわぶ! 体育館が煮物の具で満たされているとはどういうことだッ!!!」
「違います、あれは“空中ディスプレイ式チクワブ”です!」
「言い訳にもなってないわ!!!」
校長の顔は紅潮し、ついに地球上の色域を超えて紫色になった。
「いくら人気が出たとはいえ、学園祭でギリギリのラインだったのを忘れたのか!? 今度ばかりは許さん!!!」
化世先生もさすがに神妙な顔。
「ワタシ、過剰装飾ヲ反省……」
が、次の瞬間。
「——デモ、地球ノ卒業式、“伝統的要素ガ乏シイ”トノ報告アリマス」
「報告元どこだよ!? どこの銀河系の卒業式と比べてんの!!」
「デスカラ、チクワブヲ通ジテ、記憶ニ残ル式ニ……」
「いい加減にしなさい!!!」
そのまま、校長室に連行される先生。
俺たちは呆然とその背中を見送るしかなかった。




