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「師匠、何かわかりましたか?」
「んー。分からないな。どこから来たのか。ただ、このキリムは若い個体らしい。羽根を持たないキリムがここまで自力でくるとは思えない。やはり誰かがここへ飛ばしたのが濃厚かな」
「だとすれば、キリムの生息地の情報を得なければならないってことですよね」
「そうだね。既にいくつかの生息地にある国の魔術師に連絡は送ってある」
「さすが師匠。仕事が早いですね」
師匠と話をしている間に伝言魔法が師匠のところへ次々と届いてきた。
「ふむ。各国のキリムの動向を確認してもらったけれど、特に変化はなかったようだ。だが、一つだけ返事がない。そこが引っかかる」
「返事が返ってこない国って?どこなのですか」
「ドライフェル国だ」
「ドライフェル国?」
「連絡がないということは何かあったんだろう。はあ、少し遠いが現地に行くしかないな。ユリア、行く準備はできている?」
「えっと、できていません」
「小屋に一式揃っているだろう?」
「もちろんです」
「なら大丈夫だね」
どうやら今から小屋に戻ってそのままドライフェル国へと向かうらしい。
師匠は鍵を取り出し、私たちは小屋へと戻った。
修行の時はいつもこの小屋が拠点として使われるため、最低限の生活道具はここに置いてある。
「ああ、そうだ。ユリア、これに着替えて」
師匠がそう言って騎士服と王宮魔術師のローブを手渡してきた。
もちろん魔法で一瞬にして着替える方法をちゃんと覚えたのでパチンと指を鳴らし、着替えを済ませる。
やはり他国へ行くにはそれなりの服をきていかなければ失礼に当たるし、信用されないものね。
「着替えたか。じゃあ、いくよ」
「はい」
そう言って師匠は小屋の扉を開けた。
扉の先には草原地帯が広がっており、その先には高い壁がそびえ建っている。
「師匠、ここがドライフェル国ですか?」
「……ああ。ユリア、気を付けろ。後ろ」
師匠がそう言うと、横に飛んだ。
私の肩に乗っていたランドルフ殿下が、魔法盾を出して突然の攻撃を防いでくれる。
「ランドルフ様、ありがとうございます」
「ニャ」
後ろにいたのは五体のリザードマンだった。リザードマンはどこにでも生息しているけれど、ここのリザードマンは土色をしている。
森に生息しているのは緑が多い。やはり場所によって皮膚の色は変わるのね。
私はすぐに剣で攻撃してきた敵を斬りつけていく。
我ながら慣れたものだわ。
二体倒したところで後の三体はあっさりと逃げて行った。
「王都の近くだというのに人の往来がないわ」
「そうだね。とりあえず王都の街に入るか」
そう言って私は師匠の後ろを歩いていく。
街を囲う高い城壁。国の入り口には当然衛兵が立っているはずなのに、人の姿が見えない。
どうなっているの?
不安になりながら門の前に立った。
「師匠、なんだか変ですね。入り口を守る衛兵がいないわ」
「ユリア、入るのを少し待つんだ」
街の中へ入ろうとする私を師匠が制止する。
入り口の周りを確認してみると、門の左端に小さな魔道具らしきものが置いてあることに気づいた。
「師匠、これは?」
「……これは結界を張るための道具だ。だが、少し様子がおかしい」
そう言いながら師匠はその道具を拾い上げた。
「大丈夫なんですか? 勝手に道具を持って。ドライフェル国の人に怒られませんか?」
「大丈夫だ。一つ取ったくらいじゃ結界は揺るがないよ。むしろこの道具を取った方がいい」
「どうしてですか? 敵からの侵入を拒むための結界じゃないんですか?」
「普通はそうだけど、この結界は違うようだ。中のものを外へ出さないような結界になっている」
「それじゃ、師匠に連絡が来ないのもこの結界のせい?」
「だろうね。もう一つあっちの端に転がっているだろう?それも取ってきてくれ」
師匠は魔道具に魔力を流し、魔法円を書き換えているようだ。
私は左端にある魔道具を拾い、師匠に手渡した。
師匠は書き換えられた魔道具を受け取り、元の場所に戻す。
「これでこの門だけは人の出入りができるようになった。後はこの国の魔術師がなんとかするだろう」
「結界を張っている魔道具を回収しないんですか?」
「街全体を囲うほどだ。何十と数がある。それは僕の仕事ではないな」
たしかにそうよね。
これはドライフェル国のすることよね。
私たちは街に入ると、人の往来はあるものの、どこか緊迫したような、切羽詰まっているような雰囲気だ。
少し遠いけれど、私たちは街の様子を確認しながら王城まで歩いていく。城には当然門番がいて私たちは呼び留められた。
「ジョンソン・リツィードが来たと筆頭魔術師に伝えてくれ」
門番は不審そうにしながらも私たちの制服を見て一応連絡は取ってくれるようだ。
しばらく待っていると、門番に連絡があり、私たちは中へと通された。
城の中では街の人たちよりももっと忙しなく人が動いている。
一体何があったのかしら。




