102 王宮魔法使い
私は魔法陣を眺めている横で師匠はモジョードさんに連絡を取り、ガジャダナを捕縛したことを伝えていた。
「なんだか、あっさり捕縛できてしまいましたね」
「だね。つまらなかったな。もう少し骨のあるやつだと思っていたんだが。所詮は王宮魔導士崩れってとこか」
「でも、長年王宮魔法使いだったんですよね?」
「長く働けばいいってものじゃない。常に勉強と修行だからね。人より魔法が使えるだけで鼻にかけてさぼっていればこんなものだよ」
「たしかに」
私と師匠が雑談をしていると、モジョードさんが数名の騎士と一緒に私たちの前に転移してきた。
「ジョンソン殿、アジトは見つかったのですか?」
「ああ、あっさりと見つけたよ。モジョード君が探していたのはあそこに転がっている奴だろう?」
師匠が地面に転がっている男を指さした。
「さすがジョンソン殿。この男です」
「僕じゃないよ。弟子のユリアが見つけて捕縛した」
「ユリア殿でしたか。やはりジョンソン殿の弟子は優秀ですな。修行を終えたらぜひ我が国で活躍してもらいたいものです」
「残念ながらユリアはガーランドから出ないと思うよ。さっ、ユリア。依頼も終わったし、国に戻る」
師匠の足元には転移の魔法円が浮かび上がっていた。私は慌てて魔法円の中に入る。
「師匠、わかりました。モジョードさん、では失礼します」
「ジョンソン殿、ユリア殿、ありがとうございました」
モジョードさんの声を聞いたと同時に師匠の部屋に戻っていた。
「師匠、もっとゆっくりしていけばよかったんじゃないですか?」
「依頼は達成したし、ゆっくりしているとジャンニーノが怒るからな」
師匠は笑いながらお茶を淹れている。
「ジャンニーノ先生は王宮魔法使い筆頭として忙しくしているから平気だと思ったんですけど」
「ジャンニーノも一緒に行って羽根を伸ばしたがっていたよ」
「私ももう少し現地でゆっくり過ごしたかったですけど!」
「ユリアは駄目だね。まだ新米魔法使いだからやることがたくさんあるから」
「えー。師匠のけちー」
私は師匠からお茶を淹れてもらって飲んだ。
最近は師匠の執務室で勉強していることがほとんどなのだけれど、これでも私は新人王宮魔法使いなのよね。
外の人たちはどんな仕事をしているのかしら。
「ユリア、どうしたの?」
「いえ、なんでもないです。ただ、他の魔法使いはどんな仕事をしているのかなーって思っただけです」
「なんだ、そんなことか。知りたいなら言えばいつでも見せるのに」
師匠は何だそんなことかと優雅にお茶を飲みながら話し、どこかへ伝言魔法を送っている。
しばらくすると、扉がノックされ、ジャンニーノ先生が入ってきた。
「ジョンソン顧問。また何か問題が起こったのでしょうか?」
「ジャンニーノ君。いつも僕が問題を起こしているような言いぐさじゃないか」
「ジョンソン顧問が関わるものは大規模で尚且つ、複雑なものばかりですから後処理も大変なのですよ」
「ジャンニーノ君なら問題ないだろう」
「……。で、ご用は何でしょうか?」
先生はまた厄介事が増えるのかと身構えながら聞いている。
確かに師匠が動くのは普通の魔法使いでは手に余るようなものばかりだと思う。
それだけ師匠は凄いということなんだけどね。
「ユリアが王宮魔法使いになってしばらく経ったけど、ずっと僕の元で勉強していたから一般的な魔法使いの仕事が分からないんだよ。ジャンニーノ君、ちょっと教えてあげてくれ」
「そう言われれば、そうですね。ではユリア様、行きましょうか」
「師匠、では行ってきます」
「いっぱい勉強をしておいで」
私は飲んでいたお茶を飲み干し、清浄魔法をカップに掛けた後、立ち上がり先生の元に立った。ランドルフ様は私の肩に飛び乗り、付いてきてくれるみたい。
魔法使いも人数は騎士団ほど多くはいないけれど、一応十師団まで分かれている。
第一から第三師団は貴族出身の人たちで構成されている。第四師団から貴族と平民が混じり、第十師団は団長と副団長以外はほぼ平民になっている。
第一師団はもちろん王族の警備を専門にしているわ。
「王宮の魔法使いは普段この部屋で日々の業務や、魔法についての研究を行っています。第四からは王宮や王都の街を巡回していることの方が多いですね」
「確かに王宮や街で巡回している姿をよく見かけます」
ジャンニーノ先生の説明を受けながら第一師団の魔法使いたちが集まる部屋へと入っていった。
見た感じ、ローブを着ているが、みんな黙々と机で何か書類を書いていて文官と変わらないのかなと思ってしまったわ。
各々イメージはもっと魔法円を浮かばせたり、魔法を使った実験をしたりしているのだと思っていたもの。
「意外と王宮文官と変わらない感じなんですね」
「確かにそうですね。魔法使いは派手な魔法を使うイメージがありますが、実際は地味なものですよ」
私がジャンニーノ先生としゃべりながら部屋を見学していると、いくつかの視線がこちらに向いていることに気づいた。ちらりと視線の先を見て見ると、私に好意を向けていないことはすぐにでも伝わってくる。
私が一体何をしたのかしら?




