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「やっぱりこの方法はだめかしら」
「ニャー」
ランドルフ様は慰めるように一鳴きしている。
「きっと合っていると思うけど、別の方法もやっておこうかな!」
私はその木の棒で地面に複雑な魔法陣を描き、魔力を流して詠唱する。すると魔法陣は淡い萌黄色を放ち、その中から丸い球体が浮かび上がった。
『我を呼ぶものは誰だ?』
『ユリアと言います』
『我に何用だ?』
『この街に魔獣を送り込んだとされるエンドルード教の教祖ガジャダナ・メドを探しています。ガジャダナ・メドの居場所を教えて下さい』
すると、魔力が一気に吸われていく。
私の魔力を使って探しているのか、それとも報酬として要求された分の魔力なのか分からない。
『ガジャダナ・メドはここから東に十キロほど進んだ先にある湖の手前に居る』
『教えていただき、ありがとうございました』
私がそう答えると、光の玉はふっと消えた。魔法陣もパンッと音を立てて消えてしまった。この方法でよかったのかしら。
私たちが普段使っているのは魔法円だけど、古い魔法やとても詠唱を含めたとても難しい魔法では魔法陣が用いられる。
今回使ったのはここの周辺にいる精霊を呼び出すための魔法陣だ。そもそも精霊は人間よりも身分が高いとされているため、私たちの呼びかけに反応しないことも多い。手伝ってくれたのは本当に運が良かった。
「やっぱり東の方なのね! この棒だって凄いわ! ランドルフ様、向かいましょう」
「ニャ」
私は木の棒を持って走りだした。
街の東の門は既に通行可能となっていて、たくさんの人々が行き交っている。私たちもその人たちに紛れ、街を出たところでふわりと飛んで東の湖を目指した。
たしか、この辺りよね?
湖の周辺にはたくさんの家畜が放牧されていて、近くには家々もある。王都の街からも近いため、人々の往来も多い。
私はまた棒を持って占視をやってみる。
「ガジャダナ・メドはどーこだ?」
すると棒はぱたりと湖の左手にある家の一つを指した。
大丈夫かしら。
私は慎重に家の前まで歩いていき、様子を窺う。家の中には誰かが住んでいるような気配はしている。
どうしよう。
こういう場合は先に突っ込んでいっては駄目よね。
敵は王宮魔術師だったのなら家自体に魔法が掛けられているなんてこともある。ヴェーラの時のように突然魔獣が! なんてことになったら私一人では対処できない。
そもそもここにガジャダナ・メドがここに住んでいるという確証もないわけだし。
一応、師匠には報告をして周りの家に聞き込みをしていけばいいわよね。
『師匠、精霊から教えてもらった場所に到着しました。街から東に出てすぐに湖があり、そこの一軒の家だと思われます』
『そうか。なら魔法を打ち込んで破壊だ』
『えっ、でも、この家がガジャダナ・メドとまではわからないんですが』
『分からない……?』
『ここから周りの家の人々に聞き込みをしようかと思っていて……』
『なら魔力を視ればいいよ。やつは魔法使いだ。周辺の魔力を探索すればすぐにわかるはずだよね』
『!! そうでした』
私は師匠に言われて、すぐに家の周辺の魔力の流れを視た。確かに強い魔力の流れが目的の家の周辺には流れている。でも一つ気になった。家を取り囲むような魔力の流れ。
普通なら人の歩く筋道のようになっているはずなのに。
「ユリア、わかったかい?」
いつの間にか師匠は私の隣に転移してきていたようだ。少し驚いたけれど、そのまま話を続ける。
「師匠、魔力の流れはあの家から感じるんですが、家全体を囲うように視えるんです」
「そうか」
師匠はそう言うと、躊躇することなく巨大な火球をその家に放った。
「えっ!? 師匠、確認しないんですか?」
「ユリアが確認しただろう?」
「ええぇぇぇ!? そんな、魔力を視ただけですし、もしかしたらって……」
私が焦って早口でそういうと、師匠は笑い始めた。
「ユリア、よく見ろ。当たりだよ」
師匠の声に家を見て見ると、家の外観は焼け落ちたけれど、中は傷一つ与えていなかった。家の中には結界が張られていたのだ。
私が探し出した方の家には男の人がいて、足元には巨大な魔法円が描かれている。
もしかして師匠は結界まできちんと視えていたのかしら。
「師匠、結界まで視えていたんですか?」
「視えているよ」
「さすが師匠!」
「無駄口叩いている暇はないよ。ほら怒って出てきた」
私はその言葉に師匠から家の方へ視線を向けると、男の人が顔を真っ赤にしてこちらの方へやってきた。
「なんだお前たち!なぜワシの邪魔をするのだ!」
「お前、ガジャダナ・メドだろう?」
「誰だ? ワシの名を呼ぶのは。さては、王宮魔法使いだな!?」
「不正解。ユリア、分かっているよね?」
「はい、師匠!」
私は即座にガジャダナ・メドに捕縛魔法を掛けた。
「ワシは今、捕まるわけにはいかんのだーーー!!」
ガジャダナ・メドはそう大声で叫びながら魔力を放出させ、抵抗をはじめた。力で押し切る気ね。私は出力を上げて捕縛しようとする。
すると、突然ガジャダナ・メドの頭上に氷の塊が落ちてきてガジャダナは気を失い、あっさりと捕縛に成功した。
「ランドルフ、よくやった」
「ニャー」
なるほど、ランドルフ様が魔法を使ってくれたのね。
「ルフ様、助かりました」
「ニャー」
ガジャダナがいた家はすっかりなくなったけれど、結界が張られていた内部は綺麗に残っている。
「師匠、床に描かれているのは魔法円ではなく魔法陣ですよね。これって……」
「悪魔の儀式とでもいうべきものだろう」
師匠はあっさりと言いきった。魔法陣には精霊を呼び出すためのものが描かれている。
私が描いたものに近いけれど、それよりももっと複雑な魔法陣だ。より強い精霊を呼び出そうとしていたのかもしれない。




