103 三人の男
疑問に思っていると、彼らは大きなため息を吐き、大げさなリアクションを取り始めた。なんだか感じが悪いわ。
先生は気づいているのか、気にしていないようでそのまま説明を続けている。
「あーあ、やってらんねえよ」
ついに一人が私たちに聞こえるような声で呟いた。周りの数人も同調するように態度を変え始めている。
「……」
先生は黙っているけれど、彼らの態度は目に余るわ。これでは他の人たちにも伝染してしまいそう。
「ユリア、ここの仕事は――」
先生が無視をする形で私に話していると、耐えきれなくなったようで一人の魔法使いがジャンニーノ先生の前に立った。
「ジャンニーノ筆頭、俺は納得できないです」
「何が納得できないんでしょう?」
「だってそうでしょう? ただの新人が顧問付きになるっておかしい! 俺たちの方が実力は上に決まっている! 筆頭だってそうだ。新人の女に甘すぎる」
「俺もそう思います!」
「私も」
「なら、ユリアと決闘すればいいよ」
「師匠!」
振り向くと、そこには楽しそうな顔をした師匠が立っていた。ルフ様が私の頬に頭をすりすりとしているわ。きっとルフ様が師匠を呼んだのね。
「ジョンソン顧問、突然そんなことを言われても困ります。彼らにだって仕事がありますから」
先生は、はあと一つ息を吐いた。
「彼らもユリアの実力を知れば納得するだろう?それともお前たちは新人に負けるわけがないと考えているのかな」
「俺たちがこんな小娘に負ける理由なんてないですよ」
「顧問、もし、俺たちが勝てば顧問付きにしてもらえますか」
「ああ、いいよ」
ジョーン師匠は笑顔でそう答えている。とっても楽しそうだわ。
「……仕方がないですね。訓練場へ出ますよ」
ジャンニーノ先生は面倒なことになったと言わんばかりの態度で訓練場へと歩き出した。反対に師匠は上機嫌で後ろを歩いている。
当然私に拒否権はないらしい。
ぐぬぬ。
私たちの後ろには三人の魔法使いが偉そうな態度で歩いて付いてきている。その後ろから面白そうだと他の魔法使いたちも付いてきた。
誰かが知らせたのか他の団の魔法使いたちもぞろぞろと訓練場に集まり出し、かなりの人が訓練場に集まっている。
どうしてこんなに人が集まってきたの!?
私は周りを見渡して焦っているのに師匠はずっと楽しそうなままだ。
訓練場の中央に私と向かい合うように三人の男が立ち、先生と師匠がその真ん中に立っている。そして見物人たちが私たちを囲うようにして立っている。
「では、これから勝負をしますが、何かありますか?」
先生はそう聞いてきた。私はすかさず手を挙げた。
「ユリア様、どうしましたか?」
「私は彼らの名前を知りません」
「ああ、確かにそうですね。一番背の高い赤茶色の髪の毛をした彼がラウ、隣にいる焦げ茶色の髪の毛の彼がリベラート、後ろにいるのがテオドルです」
彼らがラウ・ペウツ伯爵子息、リベラート・メンドリ子爵子息、テオドル・クルペーツ子爵子息ね。もちろん名前は貴族名鑑でしっかりと覚えているわ。
「先輩方、どうぞよろしくお願いします」
「新人がいい気になりやがって」
ラウ魔法使いは何故私を嫌っているのかしら? あとの二人は彼に追従しているようにもみえるのよね。
三人は魔法使いということは魔法が得意なのよね。一体どんな魔法を使うのかしら。私はいつも魔獣と戦っていたけれど、対人戦はしたことがなかった。
やりすぎてしまわないように気を付けないとね。
「さて、始めようか」
師匠はパチンと指を鳴らすと、私たちの周りにいた魔法使い達の前に魔法壁を出した。すると、ぐぐぐと壁が押し広がるように動いていき、観客たちは後ろへと下がっていく。
そうして訓練場は大きなスペースが確保された。
「これで心置きなく魔法が打てるね」
今まで私の肩にいたルフ様がひょこりと肩から降りて私の前に立った。
「ルフ様……?」
私が師匠にルフ様を預けようと思っていたけれど、ルフ様はイカ耳で既に戦闘態勢に入っているみたい。
「お前の使い魔か? こんなちっこい猫にやられるほど俺らはやわじゃねえよ」
「……では三人は白い猫を認めますね」
「ああ、構わないぜ」
「俺も、問題ない」
「使い魔くらい俺も認めるさ」
三人とも馬鹿にしたような態度を取っている。
……馬鹿ね。
ルフ様はこの国でも有数の魔力保持者だったし、私よりもずっとずっと有能なのよ。
「ユリア様もそれでいいですか?」
「ええ、もちろんです。ルフ様、私の後ろに隠れていてもいいですからね」
「ニャ」
師匠が張った魔法壁は単に魔法攻撃を防ぐだけのもののようで集まった魔法使いたちの声はそのまま聞こえてきた。
私たちを煽る声が多い。
みんな退屈しのぎに集まってきたのね。
「相手が戦闘不能、参ったと言えば試合終了です」
大怪我をしても問題ないのね。
師匠や先生が治してくれるってことよね。
闘技上の中心には審判のジャンニーノ先生、ジョーン師匠を挟んでルフ様と私、リベラート、ラウ、テオドルが立っている。




