帰ってきちゃいました。元の世界!
「ここは……?」
顔を上げる。
まだまだ高い太陽の光が降り注ぐ。
周りを見渡せば木があった。そうは言っても多いわけではない。ただ道路と現在の場所を分けるように生えていた。
周りを見渡せば滑り台にブランコ、シーソーなどの遊具がある。
そうなると、どうやらここは公園らしい。
公園の中には元気に遊ぶ子供の姿があった。その姿は良く知っている光景で、超能力を使うこともなかった。
ただ普通にサッカーをし、ブランコを漕ぎ、砂場で山を作る。
その光景にようやく元の世界に帰ってきたという実感が生まれ始めた。
「戻ってきた……って事で大丈夫だよな?」
そう思うと自然に、異世界に行く前に行ったコンビニにきていた。
あの日、マンガ雑誌を手に取った帰りに俺は地面に開いた穴に引きずりこまれ、異世界に行くこととなった。
全ての始まりともいえるその漫画雑誌に自然と手がいく。
売れ残りのボロボロとなったそれを手に取り、購入した。
その内容はやはり超能力など全キャラが当たり前に持っていることもせず、俺の知ってるものだ。超能力以外も違和感などない。
元の世界に帰ってきたという事実が確信へと近づくと次にその足は生まれ育った自分の家に向いた。
自らが穴に引きずりこまれた場所を見て懐かしく思う。
偽の聖剣、魔銃兄弟に襲われ、吹上に襲われ、アリサに襲われ、その後も本当の聖剣、魔銃兄弟だったりと色々と印象深い出来事があった――と言うより襲われまくった。
いや、本当にどれだけ襲われてんだよと自分に言いたくなってくる。
そして、今度はこちらから敵のアジトに乗り込む事になり、ディスティアと戦った。
ボロボロとなりながらも勝ち、そして平和を手に入れ、元の世界の情報も手に入れた。
思えば長い道のりであった気がする。
日付にすれば1年間にも満たない。だが、その短い期間はすごく濃密であった。
マンガやアニメ、小説の主人公にあこがれを持つただの高校生がこんな体験をするとは思っていなかったし、今でも信じられない。
まぁ、どの主人公だろうと自分が事件に巻き込まれるなんて考えて無いとは思うが……。
「家に帰らないとな……」
帰ってきてからからずっとに思っているはずなのに足が重い。
なんせ何も言わないまま家から消えていたのだ。とても怒られるだろう。それだけならまだ足が重くなったりはしない。それ以上に泣かれることが想像でき、家に行きたくなくなる。
両親や妹の泣いてる姿。
なんせ、異世界にて那美が本気で泣いてる姿を見ただけに、それは見たくないなぁと思ってしまうのだった。
それに俺は超能力を手に入れた。
先ほど軽く念じたら風を起こすことが普通に出来た。この分だと水も問題なく操れるだろう。そんな変わった姿を見られるのが、知られるのが怖かった。
俺は異世界にて世界の闇を見た。
平和そうなあの世界でも裏では超能力で様々な闇を抱えていたのだ。この世界でも多くの闇が隠れているだろう。
うちの両親は受け入れてくれるだろう。
それでも怖い。
受け入れてもらえても俺の超能力が原因で事件に巻き込まれたら?
考えるだけでも怖い。
ここが自分の知ってる世界ではなかったら。
死にたくなるほどに怖い。
ひたすらに怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
気がつけば足は自宅が見えるようになったところで足が止まっていた。
足を前に出そうとしても恐怖心で足が動かない。
あれだけ家に帰りたいと言い、多くの人の助けを借りて帰ってきた今。今度は帰りたくないとか笑い話にもならない。我ながら情けないとも思う。
「お兄ちゃん?」
そんなときふと後ろからそう声をかけられる。
「やっぱお兄ちゃんだ」
そのように言った人物は手に持ったビニール袋を落とし、こちらに駆け寄ってくる。
そして俺はそれを受け止めるように抱きしめた。
「……那美」
駆け寄ってきた人物は自らの妹である那美であった。
「お兄ちゃん今までどこに行ってたの……? すごい心配したんだから」
「ちょっとな。異世界に行って世界を裏から操る巨大組織つぶしてた」
「全く……いつまで経っても厨二何だから」
少しむすっとした。それ以上に嬉しそうな声色で言った。
そんな一言二言交わしただけで恐怖心は吹き飛んでいく。
この世界は間違いなく俺の世界で、間違いなく俺の家族だ。例えなにが来ても絶対に俺が守る。そんな決意が自然に決まった。
それと同時に安心する。ここが俺がいるべき場所だと。
「ねぇお兄ちゃん」
「うん?」
「親子丼作ってよ。どうせ卵も割れちゃっただろうし、それを使って」
「ああ。任せろ。それぐらいお安い御用だ」
「あ、やっぱいいや」
「どっちだよ!」
「私もね。親子丼を作れるようになったんだよ。それを見せてあげる」
「へぇ。それは楽しみだ。でも不安だから俺も一緒に作ろうかな」
「えー、酷い。まぁ、それじゃあ一緒に作ろうか」
「そうだな」
暖かい時間が続いていった。
妹と一緒にご飯を作る。両親に頭を下げ、抱きしめられる。
親子丼を食べながら今までの出来事を話し、笑いあった。
波の音が響く。
風が木々を揺らす。
直射日光が当たり、聞こえるのは虫や鳥の声ばかり。
そんなところに男と女、二人の人間がいた。
「ティナ、夕食はどうだい?」
「まずいな。魚の臭みが抜けてないし、草は苦い。調味料も一切かかってなくって最悪だ」
「それは手厳しいな」
男は女の辛口の評価に頭を掻きながら苦笑する。
そんな男の様子を見て、女もつられるように笑った。
「……だが、気持ちは不思議と満たされている」
屋根は木の枝を取っただけのものを蔓でまとめあげたもの。壁はなく、床は屋根と同じ。
机も蟻が集ってきて葉っぱのお皿に侵入しようとしている。
そんな決して快適、いや人の住む場所としては適さない場所に二人は住んで居た。
「だが、私はこんなに満たされていていいのだろうか? いや、私は私を倒した者の一人に死ねと言われた。ならば私は死ぬべきなのじゃないだろうか?」
「はぁ……。ティナ、満たされて良い、悪いは僕には分からない。だが今の君はどんな生活をしていても喜ぶだろうね。それこそもっと罪を重ねることをしない限り……。こんなサバイバル生活。しかも持ってきた物は僕たちが着ていた服とこの能力のみ。人の生活としては下の下だよ。それで満たされてるということはきっと君はもう罪を重ねないで居ることに満たされてるんだ。だからこそどんな生活をしようと満たされ続ける。罪を犯さなければね。それに君の倒した者の一人は君に生きろと言った。ならば君は死ぬべきではない」
「それはそうだが、それではもう一人との約束を果たさなくっても良いというのか? 私は矛盾した二つの約束で自分に都合の良い方を取ってるだけではないのか?」
「死んで楽をするってほうも都合が良い話だと僕は思うけど……?」
男は声を低く攻めるような声で言った。
彼女のした罪は大きい。それは分かっている。だが、男は女を死なせるつもりは無かった。
「ならば生き地獄を味わうべきではないのか? 常に死に続け、常に生き続ける。これならば二人の約束を違えることはないだろう」
「ならばこそ、この生活で良いじゃないか。この生活は十分に人として終わっている。それに生き地獄が良いと言うのならこれも生き地獄の一つだろう。君は僕の能力で老いじゃ死ねない。ならばこそ娯楽も何もない退屈な人生は狂うこともない分他の生き地獄よりも長い間苦しみ続けるだろう」
「だが、現に私は満たされている。こんなのは生き地獄とは呼べないだろう」
「まだね。だけど数百年間このなにもない場所に居ればどうかな? 数千年なら? 君は世界が滅ぶまで生き続けなければならない。そして君は世界が滅びそうになれば、大きな悲劇があるようなら、その能力でもってその悲劇を救わなければならない。それが君の償いさ」
「まったく、当事者でもなかった君が好き勝手言ってくれる。……だが、その気にもさせられるから私には否定できないな」
彼女は苦笑をする。
まずい飯をそのまま残りを平らげ、食事を終えると空を見上げた
「なぁ、私は今度こそ人を救えるようになると思うか?」
「さぁ、それは分からないよ。ただ今回は最初から僕が居る。君が道を踏み外しそうになったら僕が直そう。僕が道を踏み外しそうなら君が正しい道に直してくれ。それができれば僕たちは今度こそ人を救えるさ」
穏やかな海と共に時間が過ぎていく。
彼女等が今後どうなるかは誰も分からない。
「そうか、ありがとう……」
ただ、この誰にも聞こえないようにお礼を言った彼女が間違った道をいく未来は彼女の運命操作を使っても見えなかった。
これにて完結です。
これまで読んでくださった皆様ありがとうございました。
前回同様この後に1話分後書きとして投稿するつもりですので少しこの話の裏話とか気になれば見て行ってください。




