自白と自虐
すべてが終わった。
とはいえ少しやりすぎてしまったようだ。
ディスティアの心臓が止まり、呼吸をしていなかった。
慌ててディスティアに触れ、電気を操ることにより心臓を動かす。また、他にも異常がある部分は生体電気を使い出来るだけ整える。
アリサも治癒系の能力で手伝ってくれたのでこれで死ぬことは無い。
例え偽善でも、敵であっても、もう二度と目の前で人が死ぬところはもうみたくないから。
そして治療が功を成したのか、ディスティアはゆっくりと眼を開いた。
「そっか……私は負けたのか……」
「あぁ。お前の負けだ。100%無いと言っていたお前のな」
いつの間にか分離した吹上が皮肉を込めながらそのように言う。
それに伴ってアリサの能力は解け、能力も元に戻っていた。それはおそらく吹上もそうでだろう。
元に戻ってしまったのはちょっと残念だが、あれだけの力を得て能力を失わずにすんだことを喜ぶべきだろう。
いや、アリサの事だから能力を失う様な事をするとは思えないが、漫画のパターン的に能力が使えなくなるのが王道だと思ったので少し不安だったのだ。
「なぁ、聞かせてくれよ。おまえがそこまで必死になって勝ちたかった意味を」
運命を書き換える力。
書き換えることができるのはほんの数瞬の間だけだが非常に強力な能力であった。そしてその強力な能力は強大な意志によって進化したものであった。
俺の予想が正しければSSSランクはほぼ全員が能力を100%使えない。それは強大な力故にすべての力を使ったら自らを滅ぼすからだ。ほかにも鍛えなくとも強力な能力だからと鍛える必要がないというのも理由の一つだろう。
だが、さらなる力が欲しいと思ったとしても、自分の身を傷つけない為のリミッターを外すときも、そこには「自分はどうなってもいいから勝ちたい」と言えるほどの気持ちが必要だったはずなのだ。
だからこそ彼女は何を望み、何のために戦ったのか知らないままではいられなかった。
「……大した理由なんか無いさ。ただ私の過去を否定されたようで、今までの全ての行動を否定されたような気がするからさ。情けないねぇ。それが私が望んでたことなのにいざ可能性を示されるとなんとしても阻止しなきゃいけないと思ったのだから」
そして彼女は懺悔するように語りだした。
「私が未来が見えるようになったのは一般に能力がまだ存在しない5歳ぐらいの頃さ。貧民街に捨てられ、名前のない5つほど上の男の子に拾われてた私はある日喧嘩して、その男の子に死んじゃえって言ったのさ。そしてその時に男の子が野良犬に噛まれ、狂犬病に蝕まれて死ぬ未来が見えたのだよ。私は突然見えた未来に怖くなってその男の子に急いで謝って、外に行かない様に頼んだんだよ。そしてその時は何事も無くすんだのさ」
「それからだった。ふとした拍子に未来を見えるようになったのは良いこと、悪いこと全てが見えた。良いことならばそのようにし、悪いようになるのならそれを避ける。そうして貧民街に暮らす身としては順風満帆に生きていたよ」
「あれは7歳の頃だった。育ての男の子ってのも変な言葉だが、その男の子が死ぬ未来を再び見たんだ。当然その未来を変えようとした。また外に行かないでって泣きついたんだ。だが、それだけじゃ死ぬ未来は変えられなかった」
「まずは拠点としてた場所に奴隷売人が進入してくる未来が見えた。私は慌てて一緒に外にでようと男の子に言ったよ。そして男の子は困ったようにしながらも私の言葉に従ってくれた。そして外を出た先では警察とマフィアの戦いの流れ弾が、また別の道では野良犬が、また別の道ではお貴族様の逆鱗に触れ、また別の道では飢餓に満ちた人に襲われ、また別の道では盗みの常習犯であった私たちを撃ち殺そうと店主が銃を撃って、また別の道では、ほかの道では、他の、立ち止まって、危険を縫うように、道以外の道、隠れる場所、他の、他の案ではどうだろうか?」
「結果的に言うとその全てが駄目だったよ。どこに行こうとも男の子が死ぬ運命しか見えなかった。絶望した私を慰めようと男の子は大丈夫だよって繰り返し繰り返し頭を撫でながら言ってくれた」
「次の瞬間だったよ。その男の子が死んだのは。原因はぼろぼろとなった家の崩落。その下敷きになって男の子は死に、男の子に抱きつかれていた私は男の子に守られるように生きていた」
「私は私を呪ったね。未来が見えた所で未来は変えられなかった。男の子が死ぬ運命は変えられなかった」
「その後、私はせめて男の子の分も生きようとしたよ。自分の幸せな未来を見えるか試してみて、そして一番良い未来だった貴族様に拾ってもらう運命を選んだ」
「そして私はこの能力を自由に使えるようになっていった」
「私を拾ったのは幸いにも貧民街のぼろぼろの娘を拾うような人物だ。とても良い人物で私にマリーゴールドという名前を付けてくれて可愛がってくれたよ。能力のことを知っても怖がったり、利用したりせずにただそうかと言ってくれた。男の子が死んだ話をしたら辛かったね、と抱きしめ、狙ってこの屋敷に拾われようとしたことを言っても別に良いんだよと頭をなでてくれたよ」
「そんなある日のことだ。人が良すぎるその貴族はその貴族よりも階級が上の貴族にミスを押しつけられ、そして滅んだよ」
「私はもちろんどうにかしようと思ったよ。だが、どんなに未来を見ても彼が処刑される未来しか見えなかった。誰よりも優しかった彼が私に迫り、未来が見えるんだろ? 助けてくれと泣きついてきたのはとても辛く、恐ろしかったよ」
「そう恐ろしかった。そして私は逃げ出した」
「その後に待ってた未来は大したことがない。広場に見せ物のように置かれた首だけとなった彼と再会しただけだよ。私も指名手配されていたがこの能力のおかげで捕まらなかった。それがだいたい16歳の頃だったかな?」
「私は運命を変えるための方法を探したよ。遠くに逃げ出した私は未来のアメリカ大統領のリンカーンに出会った」
「国のトップなら殺されることも無いし、彼の権力の裏で運命を変える何かが出来るかもと思ったのさ」
「彼の秘書の様な事をやりながら未来の天才たちを集めて二つの研究をさせていた。私の見た未来を変える研究と、私の様な能力者を生み出す研究だ。私を素材として色々と能力について研究させたよ」
「私には無理でも私以外の能力者ならどんな理不尽な死の運命でも覆せると思ったのさ」
「実験の方はおおむね順調だった本来なら天才でも何十年もかかる実験の結果を私は内容を聞いただけで成功するかしないかが分かるからね。人類の開発としてはかなりの早さで研究が進められていった」
「それでも10年近くが経った。リンカーンは未来予測の通りに大統領となり、大成功を収めていた。だが、そんなある時だ。彼が爆弾テロによって死ぬ未来が見えたのさ」
「そしてその日から私の戦いが始まった。男の子の時の経験があるし、彼の様に避けられない死も回避したつもりだった。まぁ、それは概ね間違いでは無かったと思う」
「事実だけ述べよう。リンカーンも死んだ。20日ぐらい死を避けてもずっと違う死の運命が見えていた。それは私が寝ようとしても見え、私は寝る暇も惜しんで死を回避させようとしてたよ。だが、限界は来た。私は眠気に逆らえなくなり、気絶するように寝たよ。そして次に起きた時に始めに聞いたのはリンカーンの死の知らせだった」
「そして私は悟ったのだよ。運命は変えられない。いくら見えていても、目の前の運命を変えようとしたところで結果は変わらないのだと」
「その後、能力者を生み出す研究の方は成功した。超能力を生み出す薬を完成させたんだ。そしてそれは量産できるまでになった」
「その薬で一番最初に生まれたSSSランクの能力者がが時間操作だ。時間操作といっても過去は数秒間しか変えられない。そしてその能力でさえも運命は変えられないことが判明したよ」
「それで私は彼に私の体の時間。老化を止めてもらった。運命は変えられないくせに寿命には逆らえると知ったとき私は笑えたよ。何せ運命を変えるのと同等。またはそれ以上に不可能だと思っていた事をあっさり成し遂げたのだからね」
「そして私は運命を変えることの出来る能力者を生みだそうとあらゆる人間を攫い、非人道的な実験も数々行ってきた。私はただ死ぬ運命の大事な人を守りたかっただけなのにいつしかその目的は運命を帰ることができる能力を手に入れることに変わってたよ」
「そして今日。いざ運命が変えるという時には私は怖くなった」
「私が今までしてきたことは何だったのか。今まで何人もの人間を犠牲にしてきたことは何だったのか。あの男の子も貴族もリンカーンも救えたのではないか? そう思うと運命が変わるのが怖かった」
「まったく、我ながら自分勝手な話だとは思うよ。まるで子供だ。思い通りに行かないから上手く行ってる人の妨害をする。いやなガキだよ」
「本当に……ね」
次は15日の金曜日に




