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異世界トリップしても俺TUEEEなんて夢のまた夢でした  作者: 棘田 清棘
異世界トリップしても状況は酷くなるばかりです
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雷光と意志


 連続する爆発音が聞こえてくる。

 俺、いや俺たちは今心地の良いもので包まれていた。


「しっかりしろ」


 後ろから聞こえる声。

 俺は先ほどまでの事を思い出し、慌てて脳を覚醒させる。


「あれからどれ位経った!?」


「ほんの一瞬だ。そうでなければ融合も解けてる」


 その言葉に安堵する。

 だが、戦いの中での一瞬は致命的なもののはずだ。

 そう。一瞬の隙は致命的。

 なのになぜ自分はこんなゆっくりできているのだろう? それにこの心地よい、周りを包む物はなんなのだ?

 次々湧き上がる疑問だったがそれも目の前の光景を見れば全て納得できた。

 目の前に立つのは一人の少女。

 俺達はその少女が生み出した透明な膜に包まれ、宙を浮いていた。

 これが爆発を防いでくれたのだろう。

 それと壁に目を移せば一ヶ所大きな穴が開いていた。この少女が壁に穴を空け、ここまで助けに来てくれたことを想像するのに難しくはない。

 振り返り、こちらを見る少女を見て俺はその名を呼ぶ。


「アリサ!」


「回復に手間取った。だけどもう大丈夫」


 最強のSSSランク。俺を庇ったが故に傷つき、倒れた少女。

 その彼女は力強く頷いた。


「奴の情報を思い浮かべて。私が記憶を読み取る」


 言われたとおりに今までの戦いから分かった情報を頭に思い浮かべる。

 アリサは俺の頭に軽く触れ、そして軽くうなずいた。


「ちゃんと伝わったか?」


「大丈夫。相棒だから」


 『相棒だから』

 意味は分からないが相当相棒という言葉が気に入ったらしい。そしてそれは悪い気がしなかった。

 以前の敵、それも殺し合いをしてから1ヶ月も経ってない奴と仲間になる。少年マンガではよくある展開で、現実ではあり得ないと思っていたが、こうして実際にその展開になると自然と受け入れている。

 ならば俺も彼女の相棒としてふさわしいように動かなくてはならない。

 俺も、俺たちも彼女の隣に立って戦おう。そうしなければ相棒などと胸を張って言えないから。


「大丈夫か? この世界の俺」


「問題ないに決まっている」


 少し休めた影響か、カッコつけると決めたからか、頭が妙にすっきりしていた。

 もう負ける気はしなかった。





 アリサの攻撃によって巨大な音と共に目の前の壁に穴が空く。

 すでにこの未来を予測していたのか、ディスティアは堂々と待ちかまえていた。


「本当に出てきたね。その娘が間に合う未来は5%ほどしか無かったんだけどね」


「そうか、それは残念だったな」


「あぁ、本当に残念さ」


 そう言って微笑む。

 だが、その笑みは今までの余裕を浮かべた顔ではなく、自虐的なものであった。

 正直言って勝負は見えていた。それは未来が見えるディスティアの方がよくわかっているだろう。先ほど吹上と合体した俺はディスティアとほぼ互角。いや、若干押されていた。が、そこにアリサが来れば負ける可能性はほとんど無いと言っていいだろう。

 だが、ディスティアは未だに諦めなかった。

 ポケットから小瓶を取り出し、一気に呷る。


「だけど私は負けるわけには行かない。負けられない。負けたらいけないんだよ」


 乱暴に口を拭う。

 眼を血走らせ、必死の形相でこちらを睨みつける。

 薬の影響か、視線が定まらない様であった。しかし、その恐ろしいまでの気迫に呑まれそうになり、動けない。


「知ってるよ。私は知っている。薬によって能力の限界をたやすく越えられることを。大きなリスクと共に能力は限界を超えることを!」


 言葉と共にディスティアは駆けだしてくる。

 近づかせたら危険な気がする。

 俺たちは直ぐに水を圧縮し、空気で加速させた球をディスティアに向かって無数に飛ばした。それに合わせてアリサが雷を水の弾丸にまとわりつかせ、威力の向上を図る。

 そしてそれは確実にディスティアに命中した。命中したはずだった。

 なのにだ。気がつけばその攻撃は、その先のなにもない壁を大きく削るだけに終わった。

 そして、その当たったはずのディスティアは駆け出す前に居た場所にいて、再びこちらに駆けだしてくる。


「幻覚? アリサ!」


 その声によって意図を察してくれたのか能力を発動する。

 天井から火の雨が、地面からは大量の土の槍が。それは俺達とアリサ自身を除いたこの道すべてを狙った攻撃だ。逃げ場などなく、安全地帯も俺とアリサが立っている場所しかない。

 幻覚を使った所で本体もまとめて倒せる――のはずだった。


「負けない。未来は変えさせない。未来が変わってしまったら私は……私は!」


 だが、彼女は無傷で居た。それも少しでもズレたら致命傷を負うような、逆に言えばギリギリ致命傷を負わない様な場所に。

 それも先ほどディスティアが居た場所とは全然違う位置である。

 『未来は変えさせない』

 その彼女の嘆きは、今までのどの言葉よりも想いがこもっていた。それだけ彼女を駆り立てるものは何なのか、俺には分からない。だが、それでも、その彼女を駆り立てる何かを壊そうとも、負けるわけにはいかなかった。

 こちらにも絶対に負けるわけにはいかない理由があるから。


「あんたが何で未来を変えさせたくないのか分からない。あんたにも正義か何かがあるのかもしれない。だけど俺は、俺達はこんなことを許すわけにはいかない。あの主人公達みたいになるために!」


 なぜ急に幻覚の様な能力に変わったのか分からない。しかし変わってしまった以上は相手の能力を確かめなければ負ける。そんな感じがした。

 一から考え直す必要はない。

 限界を超えるという言葉から恐らくは運命操作の派生だと予測できる。それならば元の能力からは大きく違わない能力のはずだ。

 お互いの振るう拳がそれぞれ顔を捉えた。

 拳に確かな手応えがあり、そして殴られた感触が頬を伝わる。しかし、次の瞬間には頬を殴られた痛みは消えて無くなり、拳の手応えも消えていた。それどころかいつの間にか体は宙に浮いていた。

 どうやらいつの間にか投げられていたらしい。触られた記憶のない右手から捕まれた様な感触の名残がそう確信させた。。

 そして追撃とばかりにディスティアは俺に向かって足を降り下ろす。

 腹に大きな衝撃が走ると共にアリサが放ったであろう風の刃がディスティアの首を切り落とす。

 ――が、腹の衝撃が無くなると共にディスティアは離れており、そこで銃を乱射していた。


「無駄」


 しかし、何も対策も取られてない只の鉛玉などアリサの支配下以外の何者でもない。

 不自然な方向で弾が曲がり、そのままディスティアに向かっていく。更には銃も刃に変形し、掴んでいたその手を斬りつける。

 だが再び何かが起こった。

 先ほどまでディスティアに握られていた銃は、刃に変化したままの状態で俺に向かって飛んでくる。

 アリサの支配化にあった弾丸は先ほどまでディスティアが存在していた場所を素通りするだけにとどまった。

 この時俺は2つの予想をする。。

 それを吹上にも頭の中で伝え、アリサに対してはサインを送り、テレパシーをつなげて貰う。


『繋げた』


 突如頭に響くアリサの声。

 それを聞いて相手に悟られないように今まで通りに戦いながらアリサへも伝えていく。


『分かったことは未来予測との両立が出来ないことと、相手の能力が事象を書き換えることが出来ることだ』


 まず一つ。未来予測が使えないというのは攻撃が普通に当たる様になったことから予測がつく。

 彼女は限界を超えると言っていた。そしてそれは今まで自分が使っていた能力以上の力を無理矢理越えるからこそ限界なのだろう。その証拠にディスティアの眼は赤く腫れ、鼻からは血が垂れ、体中に痣の様なものが浮き出ていた。恐らくは体の毛細血管があちこち破けているのだろう。

 そんな状態で元の能力を発動する余裕が無いはずだ。

 二つ目に彼女の能力は結果を変えることが出来るものだ。彼女に攻撃したときに感じた手応えは本物であったのだ。そしてその運命は彼女が躱す、またはカウンターをした未来に『書き換え』られた。

 だから俺達は課程に気づかずにまともに攻撃を既に食らっていた様な状況になったのだ。

 動きの完璧さは消えたが、それが弱体化したということではない。先読みが、後出しになった。只それだけ、それだけだが有効な攻撃手段は大幅に削られた。

 それだけではない。相手の行動をみてからその攻撃に対処できるだけの能力なら最初に行った廊下を埋め尽くす攻撃に対処が出来なかったはずだ。

 つまりは、攻撃が当たらなかった未来に『書き換え』た訳だ。理屈もなにも存在しないそんな未来。

 これではどんな能力を持ったところで攻撃は当たらない。


『対処法は?』


『ある。そしてそれを今からするからサポートを頼む。それと自分への電気の対策もだ』


 だが、驚異的な能力ではあるが無敵ではない。

 俺は空気を操り、空気を薄くする。

 水を操り、大気に水を多く含ませる。

 この場所は空と同じ条件となり、雲が出来る

 数多くの氷の粒が出来、擦れあって静電気を生む。

 どんどんと雲に電気がたまり、やがてそれは触れれば感電死は免れないだろう。

 自らは杭のように足を変化させ、そして電気が地面に逃げるように自分の身体を操る。

 広がる雷雲。

 既に視界は黒い霧で埋め尽くされ、何時電気が人に向かって電気が流れてもおかしくないようにも思える。

 だが、これ以上この雲を大きくし、維持することが出来なかった。

 空気を振るわせ、氷同士をぶつける。だが、生まれた電気はこれ以上溜まらず、空中や地面に逃げていく。

 アリサは一人でディスティアと対峙し、時間を稼いでる。

 正直に言えばアリサ一人でもこのまま勝てるかもしれない。だが、それは賭けにも近く、アリサは大きな怪我を負うことは避けられないだろう。

 だから、この状況を何とかするためにもこの雷雲を完成させなければならないのだが――。


「狙いは分かったけど無駄だ。未来は変わらない。君たちはここで死ぬんだ!」


「うっせぇ! 未来は自分達で掴むものだ。望む未来は俺達で掴みとってやる」


 吹上も脳を全力で動かし、少しでも多くの電気を得ようと頑張っている。俺もすべての思考能力を能力の形成に力を注いだ。

 だが、何時もやっている様に雷を相手のところに落とすだけなら兎も角、今回はずっと維持しなければならない。それが難易度を引き上げる。


全部操作オール。発動は次元操作ディメンション――距離操作ディスタンス


 俺達とディスティアの間に次元の壁が現れ、俺の後ろにアリサが現れる。


「大丈夫。凪なら行ける」


 アリサがSSSランクの能力を使えるのは知っていた。だが、それは劣化版であり、使用後は異常な疲れが体を襲うのも。

 そして今使ってしまった。それも攻撃ではなく、ただの時間稼ぎのために。これでアリサがディスティアに勝てる未来は無くなったと言っても良いだろう。

 そうなれば俺がディスティアを倒すしかない。

 アリサは俺の背中を押す様に手を当てた。


「私も一緒に頑張るから」


 体の奥底から力があふれだしてくる気がする。否、実際に溢れだしてる。


聖剣操作ソード魔銃操作ガン運命操作ディスティニーも限界を超えた。次元操作ディメンションも限界まで頑張った。だから今度は私の番」


 体中から電気が溢れ出す。元々持っていたこの世界の俺の能力。それも以前この世界の俺が使って居た能力とは比べものにならないほど強化されたものが。


全部操作オール限界突破オーバーリミテッド――能力操作スペック


 一度見た能力を再現する能力であった全部操作オール。だが、それは限界を超え、新たな能力を造り出す。

 俺から水や空気、肉体を操る力が抜けている。その代わりに一時的にSSランクをも超える電気を操る力が与えられた。

 11番目のSSSランク。そう名乗っても何の遜色もないほどの力である。


迅雷操作サンダークラップゥゥゥ!!」


 俺から解き放たれた電気は周りの静電気を吸収し、通路を抜け、壁を破壊し、地面を抜け空へと飛び出し、地上から天に向かう雷となった。

 しかもそれは一瞬だけの話ではない。数十秒間持続する。

 これが俺の考えたディスティアの新たな能力に対する攻略法。

 どこに行こうと避けきれない。交わした運命に書き換えたところで持続する攻撃は直ぐに彼女を襲う。

 だが、それでもディスティアは倒れなかった。

 運命を何度も書き換え、文字通り死ぬほどの痛みを受けながらも少しずつ進み、ナイフをこちらに伸ばしてくる。

 けれどそのナイフは俺を突き刺すことはなかった。

 強烈な磁力がディスティアの手からナイフを奪い、体の中に流れた電気が脳からの命令をかき乱す。

 そして俺は拳を構えていた。

 電気が流れ、体の自由の利かないディスティアに向かって電気を溜めた拳を突き出す。

 その拳が腹に直撃したディスティアは後ろに吹き飛びながら、完全に白目を向き、倒れた。

次回は13日の水曜日に投稿します

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