意志と執念と力
すいません。2か月以上も更新せずにすいません。
漸く書けました。もうしばらくお付き合いお願いします
「はぁ? なに言ってるんだ、頭大丈夫か?」
吹上の反応は予想通りであった。
相手が何時までも待ってくれるとは思えないので最も短く伝えようとしたから誤解を生んだのかもしれない。
「お前の能力を使って俺の身体を操れ。その小さい身体よりかはマシだろう?」
「本当に頭いかれたのか? いいか、俺の能力は俺自身の肉体を操作するものであって――……いや、そういやお前の傷を塞ぐためにお前の身体をいじった事があったな」
吹上――つまりはこの世界の俺と対決した日。あの時俺は俺自身や偽聖剣、魔銃兄弟との対決によりボロボロになっていた。そして俺と対決した後そのまま気絶したのだ。
次に目を覚ませばあらゆる怪我が治っていたのだ。
後で直接聞いて確認したのだが、やはり治したのはこの世界の俺であったらしい。
何でも俺も自分自身だと認識することにより能力の適用内にする事により俺の身体も自由に操作できたのだ。
それを知っていたのでこんな提案したのだ。俺自身は元の世界では平和に暮らしていたので戦闘の心得などない。吹上は恐らくアリサに斬られた影響で、身長が半分ほどしかない。それが原因で先の格闘戦の時に動きにくそうにしていたのは確認済みだ。
「当然リスクも理解して言ってるんだよな?」
「もちろんだ」
そもそもこの世界の俺が俺のことを自分だと認めなければならないし、合体中に自分自身と差異を感じれば、合体が解除されるだけでなく更に酷いことになる可能性が高い。同一人物の俺と吹上以外の誰にもできない方法。だからこそ何が起きるか誰も知らない。非常に危険な行為だ。
「だが、なにもしなければやられるだけだ。分かってるんだろ?」
こちらの攻撃は全て躱され、相手の攻撃は直撃はしないものの確実に体力を削り少しずつ追いつめられつつあった。このまま行けばその差がどんどん開き、負けてしまうだろう。
「っち、仕方ねぇか……」
その返事を聞くと俺は走り出す。吹上がこちらの意図を理解してくれると分かっているから。
ディスティアにぎりぎりまで悟れない様にする。そのために接近し、この世界の俺には縮んだ体格を活かして俺の陰に隠れてもらう。
「ふむ。今度はお前が相手か。しかし、私は武の優れた未来を見て格闘技のコツも掴んでいる。コツだけで体は鍛えていないがあの小さな方の君にはともかく、君程度には負けないよ」
「……」
「黙りか……。それもいい。全霊を持って君の相手をさせてもらう――と言いたいところだが、見た未来とは少々差異があるようだが君が飛び出してくるってことは小さな君が後ろから奇襲攻撃だろ? 既に知っている」
「あんまり喋るなよ。舌噛むぞ?」
イラっときたのかディスティアは無言でズボンに手を伸ばし、そしてスマホの様な物を操作する。
ディスティアの背後にシャッターが落ちてくる。が――そこには誰もいなかった。
「何故だ!? 何故後ろに誰もいない。ならば奴は何処に行った!?」
ディスティアは相手の姿が見えないだけで取り乱した。
正直その程度で? とも思えるが、彼女は未来が見えるが故に知らない未来に対して対応能力が低いのだろう。そして、自分の知らない突発的な出来事の対処方法が分からない。それこそが彼女の能力の弱点なのだ。
ディスティアは場所で捜す事によって未来を見たのか俺に目を向ける。いや、俺にくっついている者に向けてだ。
「誰を捜しているんだ?」
ディスティアが吹上の声を受けて慌てて跳び退こうとする。
だが、既に遅い。俺達はその場で手を突き出す。
距離が離れているためにそのままでは当たるわけがない。が、腕が伸びることによってディスティアにまで届く。
何故伸びたのか説明すれば簡単である。
吹上と合体したときに体積は俺自身と、子供ほどの身長になっている吹上を足しただけ存在している。そしてあまりにも背が大きい場合は動きにくいだけなので筋肉を増量して身体を強化している。それでも余るのは背中に避けてある。なら、その避けてある分を使い、片腕にまわせば手が伸びるというわけである。
説明をするのは簡単な事だ。だが、やってるこちらとしては頭が沸騰しそうになるぐらい大変である。
まずそれだけ手を伸ばしてもバランスを崩さないように身体を支え、なおかつ長く不安定になる手の強度を上げなければならない。
「腕を伸ばすってどっかの海賊みたいだな。ピストルって技名でもつけるか?」
「やめろ! 色々なところから怒られる。それにあれとは原理が違いすぎるしな。いや……、まぁあれに原理があるのか知らないけど……な」
俺達は合体し、一つの身体を操っていた。合体と言ってもさすがに脳まで一つにするのは怖いので頭が二つあるという不気味な状態だが……。
それでも、頭が二つあるというのは利点でもある。吹上が身体を操作し、俺が能力を使う。この事によってお互いに一つのことに集中できるので普段以上の実力を出すことが可能だ。
更に完全につながってないわけでなく、俺達は思考をほぼノータイムで伝えることができる。これによって今まででも完璧と言っていいほどのコンビネーションにも磨きがかかっている。
「これは予想外の展開だね……正直恐れ入ったよ。だけど最終的に勝のは私だ」
ディスティアはポケットからカプセル状の何かを取り出す。
その道具は俺は勿論、この世界の俺でさえ知らない。恐らくはここの研究成果の一つだということは何となく察しは付くがどんなものなのかは分からない。
前に使ったときはスライムのような物が出て落下による衝撃を無くしたり、岩を出して吹上に攻撃していた。それだけなら今の俺たちにとっては問題ないが、注意するに越したことはない。
「とはいえ、無傷で勝つのも出費を抑えて勝つのも厳しいみたいだからね。色々とこの戦いで負うリスクを覚悟させてもらったよ」
「それはこっちの台詞だ。この状態を長く続けるのも怖いからさっさと負けてもらうぞ」
俺達はディスティアに向かって駆け出す。
一歩進むごとに足を一瞬だけ伸ばし、その勢いでいつも以上の力で大地を踏みしめる。そこに風を使い、追い風による加速。元の世界における短距離の世界記録を大きく上回るスピードでディスティアに迫る。
が、ディスティアは俺達が動き出す前にカプセル状のそれを落とし、そしてカプセルから急速に植物が育つ。
その植物は俺達にぶつかりながらも成長を続け、天井に俺達を張り付けにした。
「何かを小さくして持ち歩くための道具か?」
「分からん。とりあえずそう仮定したとしても決めつけるなよ」
俺達は全身を刃物にすることにより植物を切り、脱出。だが、ディスティアの攻撃はまだ終わらない。
目の前に迫るのは雷、石、水、火、風等々の様々な攻撃。どこかで見たことあるようなその攻撃への対処法は分かっていた。
大量の水で壁を作り、体を鋼鉄のように変化させる。様々な種類の攻撃と言えば聞こえがよく、それぞれ的確な対処をしなければならないように感じるが実際は違う。火も雷も塩酸だろうが毒だろうが水で防げるし、岩も氷も頑丈なもので防げる。このように一つのもので複数の攻撃を防ぐ事も可能だ。ならば俺達は風の膜で逸らし、巨大な水の盾で防ぎ、鉄のようになった肉体で受け止める。
この三つすべての防御を超えて俺にダメージを与えるものは皆無だった。
これがもしアリサの能力であれば個別に潰され、一瞬で倒されるであろう。だが、自身の能力ではなく道具を用いた攻撃などこんなものだ。
体にまで届いた攻撃を利用し、その反動で距離を取ろうとする――が、天井から突っ張り棒のようなものが出てきて俺の動きを封じる。だがそれも一瞬の事。直ぐに体を変化させその棒を切り裂く。ただ相手の狙いもその一瞬を稼ぐことの様だ。
下から再び投げられたカプセル。そして目の前から発射される巨大な杭。
水は間に合わない。風は距離がなければ封じるだけの力は得られない。両方の攻撃に対応するために体を丸め、鋼鉄のように変化させる。だが、それでは衝撃を防げず、吹き飛ぶ。その先には袋小路。そして袋小路の壁が両脇から迫ろうとしていた。
そのタイミングは丁度俺たちが絶妙な位置に来るときに閉じる事が分かる。
「舐めるな!!」
俺は両手、両足を広げ突っ張り棒とする。そして体の余った部分を変化させ、そして爆発するかのように壁にぶつける。そして一瞬壁が止まり、その一瞬で袋小路から抜け出そうとする。だが――。
「それはこっちの台詞だよ、若造。だが、何百年も生きてきてここまで追い詰めたのは君が初めてだ。そこは誉めてやろう。だが、私は負けるわけにはいかない。私の見た運命を変えさせるわけにはいかないのだよ」
そのように勝ち誇り、だけど泣きそうな顔で見るディスティア。それを遮るように唯一の道に降りてくるシャッター。
壁の中へと大量に落とされる爆弾。迫りくる壁。
逃げる場所もなく、衝撃を逃がす場所もない。
今できる最大の防御をしたとしても閉鎖空間だからこその反響した衝撃が体内をぐちゃぐちゃにかき乱すであろう。
二つの脳を持ってしまったからこそ分かる絶望。これだけ考えることが出来るのはもしかしたら走馬灯というもので思考が引き伸ばされてるのではないかと苦笑いする。
追い詰められ、そして対処方法がない文字通り絶体絶命。
次の瞬間には破裂する爆弾の閃光が視界を埋め尽くした。
次回は……ちょっと予想が付きません。
精神的に不安定で今回の様に遅くなるかもしれません。また、調子が良ければすぐに投稿できるかもしれません。こんな作者ですがTUEEE出来ないをどうぞよろしくお願いします




