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異世界トリップしても俺TUEEEなんて夢のまた夢でした  作者: 棘田 清棘
異世界トリップしても状況は酷くなるばかりです
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次なる手と加速する戦い

ぐ……一週間と二日遅れ……

申し訳ございません……


「吹上……何でここにいる!?」


「あぁん? さっき言っただろ、奴らに借りを返しに来たって」


「そうじゃなくってだな……」


「こっそりと置いた鞄の中に入って、そのままお前等が乗ってきた飛行機に乗せてもらった」


「テメー……! わざとやってるだろ」


 何で生きているか。

 あのときに吹上の体が真っ二つになるのを確実に俺は見た。だからこその質問なのだが、吹上はどうやってここにきたかなどと言う意味で返す。

 それも気になるところではあるがもっと聞きたいことがある。

 そしてそれは俺自身である吹上が最も分かっているはずであった。だからこそ苛立ちを押さえることが出来ない。


「当たり前だろ」


 全てを理解した上で吹上はさも当然のように言い放つ。

 俺は頭の何かが切れる感覚と共に無言で吹上に向かって裏拳を叩き込もうとした。が、屈んで避けられてしまう。


「で、わざわざ俺たちが動くまで待っててくれた訳だ。お優しいことだな」


 ディスティアはそんなやりとりをしているにも関わらず、一切攻撃せずに事の成り行きを見守っていた。


「ふむ。別に優しいというわけではない。お前が生きていることは予想していなかったが所詮8720233通りの勝ち方が754039574通りの勝ち方に増えただけだ。奇襲してもしなくてもこちらの勝ちは知っている。ならばわざわざ奇襲する必要もない。同一人物の最後の会話劇を邪魔するのも無粋だからな」


 わずかに俺は驚きを表す。

 最後の発言。吹上が俺と同一人物と知るのはごく一部の人間だけである。それも全員が信頼できる人物で口を割ったとも思えない。

 ならば何故ディスティアは今は全く見た目が似ていない俺と吹上を同一人物だと知ったのか?

 その疑問が解ける前に吹上は動き出した。


「へぇ。わざわざお別れを済ませるまで待ってくれようとしたのか。なら、俺はお前と永遠にお別れをしたいがな」


 その言葉実現させようと吹上は駆け出す。

 手を剣のように変え、ディスティアに向かって突き出した。だが--。


「--知ってるよ。その動きも。342通りの行動パターンのうち83通りがその動きから始まる」


 言葉通り事前にその動きを知っていたかのように、攻撃しようと吹上が動き始める前からディスティアも動いていた。吹上は突然動きを止めることも出来ず、その攻撃は空を切る結果となる。

 だが、それだけで止まる吹上ではない。左半身を軽く引き、次の攻撃の体勢に入った--が。


「左半身を引いたということは次の行動は4通りまで絞られる。そして視線をずらすフェイント。その場合はそのまま左手を変形させて突きをくり出す。その後に背後からの奇襲攻撃だね」


 ディスティアの言葉と同時に吹上は言葉通りの動きをしていた。すでに吹上は行動し始めているので急に止まるはずもなく、そのままディスティアの言葉通りの行動をとってしまう。

 勿論すでに予想されたその攻撃が当たるはずもなく、すべてが躱されていく。

 足を変形させ、背後という完全な死角からの奇襲攻撃も見えているのではと勘違いしそうになるほどに完璧に躱しきっていた。

 ディスティアが再びスマホのようなものを操作すると天井から剣のようなものが振ってきて吹上に直撃する。何とか皮膚を硬化させるのが間に合ったようで怪我はないが、耐える為に踏ん張ったコンマ数秒の間に距離が離されてしまった。


「さて、今度は58通りの未来が見えるが君はどれを選ぶのかな?」


「そりゃあもちろん59番目の選択肢だよ。まさか俺が下にいる時に何もしてなかった訳がないだろ? それにお前は俺がいることにさっき気づいたばっかだ。俺が下でなにやっていたかなど知るはずもない」


 吹上がポケットに手を入れ、何かを押す。それと同時に爆音とともに地面が崩れた。


「残念ながらこれは27番目の選択肢だ。決して59番目ではない」


「っち、それは残念だ」


 吹上はいくつかの瓦礫を足場にディスティアに向かっていく。俺はその様なことが出来ないので能力を使う。そうは言っても空気操作エアーでは人を浮かばすほどの力はない。それでも落ちる場所を変えるぐらいは出来た。それに加え、水を筒上にし、そこに落ちることによって浮力を利用する。そして完全に落下の衝撃を無くすことに成功した。

 アリサも自らの能力を行使し、落ちる際のダメージは無いようだ。

 ディスティアはポケットから何かを取り出し、それを吹上に投げつけた。そしてその何かは巨大な岩となり、吹上に襲いかかる。だが、それは体を刃物のようにした吹上によって切り刻まれてしまった。

 そしてディスティアは地面に落ちていく。だが、ポケットから取り出した何かを地面に投げつけることにより、スライムのような物が展開される。そしてそこに落ちたディスティアにはかすり傷一つ無いようだった。


「っち、めんどい能力だな……。変な道具も使いやがるし……。で、あいつの能力は何だと思う?」


 突然吹上はこちらに話を振ってくる。

 恐らくは吹上が現れたことで俺が相手の能力の分析に回ったことに気づき、その上で相手の情報を引き出すように立ち回ったのだろう。

 ここで吹上と争っても良いことなどないので俺は素直に答える。


「未来予測……又はそれに近い能力だと思う。まずあいつはこちらの行動を予測する能力があるのは間違いない。それで最初は心を読んでいるのかと思った。だけどあいつは飛んでくる瓦礫や自分の落ちる場所。果ては近くにいない認識など出来ない距離の時に俺たちの居場所を知っていた。何時何処に現れるかそのタイミングまでだ。これじゃあ未来を視てるとしか思えない」


 更にこれに付け加えるとしたらディスティアの未来予測は直接その場所を視る必要はない。だからこそ未来において何処で作るか分からないあの飴の開発だってできたし、ミドル兄弟の攻撃タイミングも指示することができた。


「んで、予想はつくがそれが未来予知ではなく未来予測なのはどういうわけだ?」


「お前の最初の攻撃を知らなかった」


 未来予知ならば知らないことも分かっていたであろう。だが、未来予測は知っている材料からの発展だ。例えば少し暴論になるが一冊のライトノベルがある。その存在を知る前に展開が分かるのが未来予知、タイトルや冒頭で全ての展開が分かるのが未来予測ってわけだ。俺の解釈で言うならばそうなる。

 恐らくは俺たちと同じようにディスティアも真っ二つになった吹上が生きているはずがないと考えてしまった。だからこそ存在しないはずだった吹上の攻撃は予想外であった。そして吹上の存在を知った後になら攻撃を完璧に躱すことができたのだ。


「んで、攻略法は?」


「予測できない攻撃か、どうやっても躱すことのできない攻撃をする」


「単純明快だな」


 それが最も難しい事だとは言わない。

 攻撃に使う方法なんて何かの延長だ。殴る蹴るもそうだし、能力でさえ何か元となることがある。それに予測できない方法で攻撃出来たとしても次からはすでに知っている攻撃、つまりは予測出来る攻撃だ。

 新たな攻撃方法を生み出し、それで一撃で倒さなければならないということだ。

 次に躱すことが出来ない攻撃を繰り出すのは一見簡単そうに見える。なぜならディスティアは未来は見えるかもしれないが身体能力は常識の範囲を出ない。能力や何らかの道具で底上げされていると言うことはなく、女子にしては身体能力が高いレベルである。

 だからこそそれは難しくなさそうだと思える。だが、俺が思いつく方法など相手の能力を知らなくともアリサが既に試しているだろう。

 例えば雷の早さなら多くの属性で攻撃する際に使っているだろう。他にも物量で逃げ道を無くす方法が思いつく。が、それこそアリサの得意とすることであり、何らかの対処をされて終わりだろう。。

 恐らくはこの施設と未来予測、先ほど使った不思議な道具。その様々な方法により、その攻撃に対する最良のが対処法が行われるだろう。


「お見事。まさかこの短い間にここまで分析されていると思わなかったよ。おおよそ7割正解と言ったところだ」


 一人の拍手の音が聞こえる。

 それはあまりにもこの状況にそぐわない緊張感の抜ける音はディスティアによるものだ。

 戦いにおいて能力が全てではないとはいえ、能力についてほとんど明かされたと言うのにその顔に焦りはない。寧ろ感心するような満面の笑みを浮かべていた。


「補足させてもらうと、私が視る事が出来るのは未来だけじゃない。過去もだ。そして私の能力の本質は未来を視ることではない。全ての運命を知り、自分の行動によって好きなように運命を動かすことの出来る。それが”運命操作ディスティニー”名前を付けるとするのならばそれが私の能力だよ」


 それだけに留まらず、ディスティアは自らの能力を明かしてしまう。それが本当か嘘かは分からないが、もし全て本当だとしたら恐ろしい事だ。なにせ自分の能力を知られた程度じゃ問題ないと言っているようなものである。

 だが、語ってるないようが本当だとしたらSSSランクと言うのも頷けてしまう。

 SSSランクなんて言っても色々あるがどれもこれもが恐ろしい能力だ。

 例えば聖剣や魔銃は存在しないものだ。それを生み出し、操る二人はどんな攻撃にも対応してきた。それはまさに理不尽の固まり、それに挑むには理不尽を蹴散らす実力が必要だ。

 次元の次元操作ディメンションに勝つには次元を超越するだけの力が、アリサの全部操作オールにはありとあらゆる攻撃や防御に対する対応力が求められる。

 どれもこれもがあり得ないほどの力。そして今度は運命に抗うだけの力が求められるときた。これは最早笑うしかない。


「んま、様々な主人公が運命に抗ってきたんだ。俺も精一杯抗うとしましょうかね……」


 ここまできた以上もう後には引けない。後悔することなど出来ない。ならば無理矢理にでも自分を奮い立たせるだけである。


「吹上……。やりたいことがある」


 なにをする気だ? と、吹上が視線で問いかけてくる。

 成功するかどうかも分からない。失敗したらどうなるかも分からない。だが、失敗など恐れていては運命などには勝てない。だから俺は堂々と、それでいて能力も駆使してディスティアに聞こえないように言う。


「合体だ!」

次だ、次こそは6月の17日に更新!

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