遂に決着。聖剣魔剣兄弟の最後
うぐ……
納得出来る物が書けないと唸っていたらすでに一か月近い時間。更新すると言った日から20日近い時間が……
本当に申し訳ありません。
「次元、大丈夫か?」
「何とか……じゃが、な……」
先ほどの防御にどれだけの力を使ったのか俺には想像もつかないが、既に次元は膝をつき、まともに立ってすらいられないほどに疲労しきっていた。
「あーあ。全力でやったのに見事に一人で防がれちまったな。あーあ」
「次元の壁さえ呑み込む僕たちの全力の一撃。どうやってあれを止めたの? 防げたの?」
砂煙が晴れていく中、そのような問いかけがなされる。次元は虚勢を張りながら、まだ余力があると思わせるために大きな声で言葉を返す。
「確かにお主等の攻撃は強力で4次元どころか5次元の域にまで到達していた。ただでさえ1次元上に行くのは凄まじいエネルギーが必要だというのに、お主等はただのエネルギー波でここよりも2つ上の域にまで達しておった。じゃが、儂が操るのは次元。直接的に干渉する分お主等よりも遙かに少ない力で済む。じゃから儂の能力すべてを一枚の壁に収束し、6次元まで次元の壁張っただけじゃ」
その答えに二人は絶句したのか周りの空気が止まる。そしてやがて聞こえてくる笑い声。
「ははは、もうありえねぇ。6次元って何だよ。そんなんどんな攻撃だってたどり着けねぇよ。もう笑うしかねぇ」
「完敗だよ。もう僕らに抵抗する気力も体力もないよ。もういいよ。殺しなよ。止めを刺しなよ」
兄弟もすでに体を動かす力が残ってないのか、体を大の字に広げ、動く気さえ見せない。
先ほどの攻撃で気力が残ってるとも思えないが、あまりにのんびりとしたその態度を罠かと疑ってしまう。だが、そんな風に疑心暗鬼に陥っている俺の心を見透かす様に兄弟が再び言葉を紡ぐ。
「安心しな。罠じゃねぇよ。何だったらさっきのミサイルやら炎やらを遠くから投げつければいい。その程度吸収したところで大して力にならないし、もう避ける気力もない。だから安心して殺していいぜ」
このままじゃ本当に自分たちが死ぬというこの局面で、この兄弟が本当のことを言っているとは思えないが……しかし、その言葉を否定する根拠がない。
一撃を放ち、それを防げば嘘であるだろうし、遠くだからカウンターを放ってきても十分に反応できるであろう。また、手加減して攻撃を放てば跳ね返されたところで防げると思う。そんなこと少し考えれば分かることだし、そんなことは奴らも分かっているだろうから余計に困らせられる。
「大丈夫じゃ……。儂がやる」
その戸惑ってる様子を見てか、次元がふらつきながらも立ち上がる。既に幾度も本気で戦い、能力を限界まで使い、つい先ほどは最強のランクの能力者二人による攻撃をたった一人で防ぎきったのだ。余力はないだろう。
だが、次元はこちらの言いたいことは分かっているとでも言いたげな顔をしていた。
ただ無言で手を前に掲げる。
「次元の狭間に落とせば防ぐ手段はあっても利用する方法はない。それにあったとしても次元の狭間は儂の支配領域。好きにはさせんのじゃ」
「まだなのか? 罠じゃないって言ってるのに疑り深い奴らだぜ。で、まだなのか?」
「安心せい、もう終わりじゃ」
その手をかざした方向。つまり聖剣魔銃兄弟の後ろに巨大な裂け目が現れる。中は黒く、様々な色の光がその存在を主張していた。それでいて先が見えないその裂け目が恐怖を駆り立てる。
「兄ちゃん、兄ちゃん」
「そうだな。弟よ、俺もそう思う」
そのように兄弟は言い、立ち上がる。
死を前にしてその態度は冷静すぎる様な気がして恐ろしくーーいや、冷静というわけではないのかもしれない。その目は死を目の前にしたと言うより、何かを覚悟した目へと変わっていた。
「弟よ。後どれぐらいの力が残ってる? 弟よ」
「もう一丁も出せない。せいぜい半分ぐらいかな? 半分ぐらいだね」
「そうか、俺も同じ様なもんだ。ってことで俺とおまえであわせて一本だ。そうだな」
「そういうこと。初めてやることだから出来るか分からないけどお兄ちゃんと一緒ならできる気がするよ。やれる気がするよ」
弟の声を聞いてか、兄はクスリと笑う。
二人はどこか楽しそうで、これからどんな攻撃がくるのか警戒を忘れてしまった。
やがて二人が背中合わせにし、こちらに突き出す。その手の先に力が集まり始め、やがて形を形成していく。
「”次元を」「撃ち斬る」「「聖魔銃剣”」」
兄弟の手の中に先が剣となっており、持ち手がライフルの様になっている銃が生み出された。そして二人がその持ち手を手をクロスさせ、一緒に持つ。
「ちょ、ちょっと待て。おまえ等は負けを認めたんだろ? ならもう争う理由はないじゃないか!」
俺は正気を取り戻すとあわてて言う。
元々これは命を賭けた戦いである。そこに卑怯とかも存在しないし、負けを認めたからって大人しく死ぬわけにもいかない。そんなことは分かっているから時間稼ぎ以外の何ものでもない会話。この間に次にくるであろう攻撃を防ぐ方法を考えなければならない。だが、その予想とは全く違う答えが返ってきた。
「そうだよ。もう争う必要はない。後は死を待つのみだったけど彼女を見てたら気が変わった。そんな風に殺すのを恐れてる彼女に殺されるわけには行かない。殺されてはいけない」
魔銃使いの言葉にようやく次元の姿を見る余裕ができる。
能力を発動する場所の指定をしやすくする指標として伸ばされた腕。その手は明らかに疲労とは別のことで震え、息は荒くなっていた。
「次元……」
そうだった……。
いつか木里さんに聞いた話では次元には殺す覚悟はある。しかし、今まで一度も人を殺したことは無いと語っていた。
今まで一緒に暮らしてきて人を殺す機会など無かったのだから人を殺したことは無いのだろう。
何時までも俺をこの世界に連れてきたことを悔やむような人を思う心がある次元がいくら覚悟をしていたとはいえ、躊躇いもなく人を殺せるわけがなかったのだ。
それに校長の言葉からするとこの組織以外にも裏の闇を知っている可能性が高い。なのに今まで一人も殺していないのは自らが強者であり、相手の生死を決める余裕があったのも理由の一つだろう。だが、それ以上に次元は誰一人として殺したくは無かったのだと思う。
「大丈夫じゃ……。儂は大丈夫なのじゃ。お主は儂が守る。殺す覚悟も決めておる。じゃからお主はなにも心配しなくってもいいのじゃ」
その言葉は俺に言っているというより自分自身に言い聞かせているように聞こえた。
「別に俺らは戦闘は好きで、強敵と戦いたいからって傭兵なんかやっているけど、別に人にトラウマを植え付けたいだとか、殺る気の無い奴にわざわざ止めをさしてもらいたいとは思ってないぞ。戦闘は大好きだが」
「そんなわけで別にお前等にトラウマ植え付けるなら僕ら自ら消えてやろうって事さ。訳さ」
「俺らの攻撃を防いだ次元操作の使い手に敬意を表して次元の彼方に消えるのが一番いい選択だと思ったんだよ。全力を防いだ嬢ちゃんに敬意を表すのに」
「ってことでーー。あぁ、そういえば名乗るのを忘れてたね。僕の名前はアーマロ。アーマロ・ミドルだよ」
「グリッドだ。俺の名前はグリッド・ミドル」
「もう会うことは無いだろうけど」
「名前を覚える必要も無いが」
「またね」
「覚えていってくれ」
「「強敵さん達。また来世で」」
こちらが何かをいうよりも早く、矛盾だらけの言葉を好き勝手言う。
そして、その銃剣を自分達の真下に向けると、そのまま引き金を引く。
銃剣から撃たれた斬撃が次元の壁を斬り裂き、穴を開ける。兄弟は特に何も抵抗することもなく、穴に落ちていった。慌てて駆け出し、ミドル兄弟をつかもうとした伸ばした手はその遙か手前で空を切る。笑顔を浮かべたまま次元の彼方へと消えていったミドル兄弟の顔が鮮明に写った。
「なんで……なんでなんだよ!」
俺には死ぬ手前で笑っていた兄弟の気持ちが分からずにただ呆然と穴があった場所を見つめる。
敵であった。殺す気でいた。同情の余地は無かった。
自分勝手に生き、そして周りの命を奪ったりと他人に迷惑をかけてきたのだ。死んで幸せになる人物も多いだろう。
だが、俺はそのことを素直に喜ぶことが、二人の気持ちを理解することが出来なかった。残ったのは後味の悪さだけ。この、やるせないこの気持ちをどうすればいいのか俺には分からなかった。
「お主が何か悩む必要は無いのじゃ。これは儂が抱えるべき事。お主が何かを抱え込む事はしなくっていいのじゃ」
そう言って俺の頭を撫でる次元の手は震えていた。
次元は明らかに無理をしているのが分かった。そしてすべてを一人で背負い、潰れそうになりながらも俺を必死に守ろうとしてくれているのだ。
「ありがとうな」
本来なら一人で背負うなとか、お前は一人で悩まなくても大丈夫だなどと言えればよかったのだろう。だけどそれは次元の覚悟を無駄にするような気がしてそれだけしか言えなかった。
「治療する」
そう言ってアリサが次元に手をかざす。
アニメとかで見る様に緑色の光が放たれたりはせずに傷口から新たな血管、筋肉、皮膚が現れ、思わず目を逸らしてしまったのはここだけの話。
実際に傷が自然治癒以外で治るとここまでグロいのかと思わされる……。
だが、その甲斐あって銃によって貫かれたわき腹は傷一つ見あたらなかった。
「もう大丈夫じゃ」
次元が立ち上がろうとするが、ふらついて倒れかける。アリサがとっさに支えようと手を伸ばさなければ実際に倒れていたであろう。
「おいおい、全然大丈夫じゃ無いじゃないか」
「傷は治したと言ってもその時に使ったエネルギーはあなた自身のもの。それにあれだけの力を使っておいて動ける方が異常」
俺とアリサがゆっくりしているように次元に呼びかける。しかし、次元は首を振り、その提案を断った。
「大丈夫じゃ。もう相手にSSSランクはいないんじゃし、増援が現れないうちに急ごう」
そうは言っても次元は明らかに疲労困憊で、顔色も悪い。立つだけでも精一杯といった様子である。
「次元、自分一人の身を守る力はあるか?」
「大丈夫じゃが……なにが言いたい?」
だからこそ俺は一つのことを決める。これ以上俺のわがままのために次元を巻き込みたくはないと思ったのだ。
それと同時にこれは俺一人ではどうにもならない。だからここにいるもう一人に声をかける。
「アリサ。その首輪はどうやれば安全に外せる?」
「その爆発装置を起動させたら接合部が壊れる。極少量しか火薬が入ってないから危険性もない。他にも電気操作、機械操作、爆破操作、開閉操作、鋼鉄操作。何個もはずす能力に心当たりがある」
「……は? もしかして雄介さんも知っている……? ってことはつまり……」
「そう」
どうやら首輪は危険性など無いらしい。
雄介さんの言っていた言葉を思い出す。
『その首輪には少ないが火薬が入っている。つまりは分かるな?』
確かに火薬は入ってるみたいだ。直接的に死ぬとは言っていないので俺の勝手な勘違いだろう。だが、雄介さんはわざと嘘はついていないと言い訳出来る余地を残し、俺を勘違いするようにし向けたのだ。アリサも雄介さんが仕組んだと認めた以上間違いないだろう。
雄介さんのことを後でぶん殴ると心に決め、アリサに向き直る。
「アリサ。さっさとその変な首輪外してしまえ」
コクリと頷くと何の能力を使ったのかわからないがアリサはあっさりとその首輪を外す。
「凪よ、儂も行くぞ。自分より弱く、本来なら戦う必要など無い者を戦場に立たせておいて自分がゆっくり休むなど儂には無理じゃ!」
「おいおい。この組織の戦いは俺が言い出したことだぜ? それこそ無関係の女を巻き込んでおいてこれ以上無理させるとか男として……いや、人間として無理だ。それに次元はなにもしてないわけじゃない。俺にこのトンファーを渡してくれた。これがこれから先何度も助けられることだろうから気にすんな」
「お主は! ……いや、今の儂が行っても足手まといじゃな……。すまぬ……」
「なに、次元がいなかったらもう死んでたんだ。いいってことよ。それに足手まといって言ったら俺の方がよっぽど足手まといだよ」
そしてこの先も一緒に無茶をしてもらうアリサを見る。
既に縛るものは何もない。いつでも裏切ろうと思えば裏切れる状況。だから目で『信じてもいいんだよな?』と問いかける。
「大丈夫。私はあなたの兵器。あなたが裏切れと言わない限りは裏切ることはない」
「モノ、者、物ねぇ。男なら言われて嬉しいんだけどなんか好きになれないな、その言葉は……。だってアリサ、お前は人間で物じゃない。だからお前は俺のモノではなく、俺の相棒だ」
「相棒……」
アリサは少し嬉しそうにその言葉を繰り返す。相変わらず無表情だが、言葉にはしっかりとそんな感情が宿ってるように感じた。俺はその喜ぶ様子を見てちょっとだけ嬉しく思う。
だからこそ言い聞かせるように再び言った。
「そう、相棒だ。頼りにしてるぜ相棒!」
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