番外編 異世界ズ・オブザデッド
「さーて今回はどんなものが手に入るんじゃろうな?」
次元雛は趣味である異世界グッズ集めを今日も行っていた。次元を他の次元につなげることで異世界と自分の世界を繋げているのである。
いつだったか、この趣味のせいで人一人を引っ張って来てしまってから回数を減らし、持ってくる物の感触を確かめてから行っていた。
「うむ……。なんじゃこれは? ガラス? 試験管かの?」
次元がその触れたものを引っ張り出してみればそれは予想通りに試験管であった。
中には緑色の液体が入っており、コルクのようなものとテープにより蓋がされていた。
「おーい。次元はいるか?」
そうやって自分の部屋の乱入者を見るとすっかりと見慣れた凪がいた。
勿論のことこの部屋は次元を変えており、次元があらかじめ設定した人物以外次元を超えられないようにしているのだから当たり前なのだが、突然の来客にあわてて試験管を次元の穴に捨てる。
元々人を引っ張って来たというのはこの凪のことなのだから、その人物の前で趣味に走るわけには行かなかったのだ。
だが、この時の次元の穴はどこにつながっているか全く設定されていなかった。だからこれがあのような事件を起こすとはだれも予想をしていなかった。
――いや、あの人物ならこの運命も知っていたのかもしれない。
「な、なんだよ……これは?」
双神凪が雛と共に投稿して発した一言目はそんな言葉であった。目の前には白目を剥きながら涎を垂らして何かを探し求めるように歩き回る生徒達の様子であった。
「うーあー……」
凪に無造作に伸ばされる腕。それを慌てて払う。
そして払った拍子にこけた相手は凪がよく知る相手であった。
「ふ、船井!?」
凪が転校してきて一番に話しかけてくれた人物である。クラスメイトで最も仲がよく、現在では親友と呼んでも差し支えの無い相手であった。だが、その親友は他の生徒と同じように白目を剥いて生存者に襲いかかるだけの存在となってしまっている。
「な、凪よ……」
「あぁ……」
凪と雛はこんな生徒達を見て一つの見解にする。
「「これはゾンビだ(じゃ)」」
ゾンビ。それは生きる屍(死体)などと呼ばれ、魔術によって人間の死体を操り人形にしたりゾンビパウダーなどによって造り出されると言われている。
近年ゾンビと言うのも大分変ってきており、多くの種類が生まれた。ファンタジー作品では人間の死体を放置するとアンデット、ゾンビになるというものも存在する。そんな豊富な種類が存在する中でもある映画のゾンビは有名であろう。Tウイルス。そのウイルスに感染した物はゾンビとなり、他の生物を襲う。そのゾンビに噛まれればその噛まれた側はそのウイルスに感染し、ウイルスが体に回るとゾンビになるというものだ。
このゾンビの設定はあらゆるところで使われ、日本にもこれと同じようなものがある。
だがゾンビというのは前述したとおり多くの種類があり、元々のゾンビというものが改変され、探すことも困難となっている。なのでここで記述しているものも多くが間違っているかもしれない。
だが、今はそのことは重要ではない。凪と雛が見る限りこの学校の生徒の動きは二人が思い浮かべるゾンビのイメージと一致していた。
そして二人はまだ知らないがこの原因は雛が昨日慌てて捨てた試験管にあった。
「な、なんということじゃ……。この学校に何が起きたというのじゃ……!?」
「わ、分からん。だが、一先ず逃げるぞ」
凪は反転し、学校を出ようと走り出した。だが、それは3歩も歩かないうちに足を止めることとなる。
ドッゴーン。
そのような音と共に多くの砂煙をあげ、ある人物が行く手を阻んだ。強靭な脚力に任せて跳躍し、二人を飛び越えたのである。
そんなことができる人物を凪は一人しか知らなかった。
「こ、校長!?」
この学校の校長であり、雛とアリサという規格外なSSSランクを除けばこの学校一番の実力者であり、その昔。世界で名を轟かせた伝説の傭兵であった。
だが、その校長の様子は他の者と同じように白目を剥き人の言葉ではないものが口から洩れていた。
「グゥゥゥゥ……」
そのうめき声を聞いただけで凪はヤバイと思う。ゾンビとなってもこの老人の強さは十分に世界クラスであった。
「に、逃げるぞ! とりあえず校舎の中に入るんだ」
「わ、分かったのじゃ」
二人は校舎の中へと入り、雛の能力によって先ほどまでいた運動場を丸ごと次元をずらす。このことによって一見何の変哲もないが、次元の壁ができ、それこそ次元を超えることができるような攻撃でなければ破れない世界最強の壁となった。
「ハァハァ……。とりあえず校長をはどうにかできたのか?」
「あたりまえじゃろ……。儂の能力じゃからあの校長でもどうにもできん。――はずじゃ……」
「あの校長じゃ断言できないのが怖いところだよなぁ。で、どうする?」
そうやって凪が見つめる瞳にはゾンビとなった生徒達が一斉にこちらへ向かってる光景が映し出されていた。
「どうするもこうも逃げるしかないじゃろ!」
そうやって二人は走り出す。風で転ばせ、次元の壁で道を造り出す。二人の連携により、階段への道を切り開いた。
戻るという選択肢はなかった。
戻るには能力を解除して運動場を行かなければならない。あの校長がいる運動場に戻るのはなんとしても避けたかった。
「で、もう一度どうする?」
「じゃから分からん。とりあえず逃げ続けるしかないじゃろう」
ゾンビから逃げ回りながら走る二人はそんな風に言葉を交わす。どこに逃げれば良いのかもわからない。雛の能力を使えば一時的に安全地帯を造り出せるもののその後飢えて死ぬだけである。だからこそ逃げる必要があるのだ。
『こっち』
凪と雛の頭に聞き覚えのある声が響く。
そしてこっちとだけとしか言われていないのに二人は笑顔を浮かべ、頷き合う。目指す場所は決まった。
「良かったのじゃ。まだ儂ら以外にも生き残りが居ったんじゃ!」
「しかもこの声は……!」
図書館の扉に手を掛けようとすると扉が突然開く。そして二人で転げるように中に入ると扉は閉められ、さらに本棚で、扉自体開かなくされた。
「……情けない。この程度で逃げ回るなんて……」
「ふふ。まぁ二人が無事でよかったよ」
「相変わらずだなぁ。お前は……」
「良かった」
「眠い……」
出迎えたのは何故か仁王立ちで扉の前に居た氷上。たった今押し出した本棚に手をつく完二さんと雄介さん。そして相変わらず無表情なアリサと机に突っ伏すように寝ている音夢里先輩であった。
雄介は用務員として、完二は教師としてこの学校に来ている警察である。こういう時に居るのはとてもありがたかった。
「氷上。ちょっとだけテンションあがってないか?」
「別に……」
凪の質問に言葉ではそっけなく返しているものの、目を泳がせ、明らかに動揺を浮かべていた。
「そうか、そうか。まぁ、マンガやアニメみたいな状況でテンション上がるのは仕方がないよな。ではテンションが上がってるみたいだし、一人で事件解決行ってみようか? 俺らはここで待ってるから。この状況もこの程度なんだろ? 余裕だよな?」
「ご、ごめんなさい。だ、だから窓から突き落とそうとしないで! って、なんで窓からなの!? せめて普通に扉からにしてよ」
「だって扉開けたらゾンビども入ってくるじゃん」
氷上と凪が漫才をしていると少しだけ場が明るくなる。だが――
ゴン! ゴン!
壁から聞こえるそのような音。次第に音が大きくなり、間隔も短くなってきた。
そしてどうしようかと考えてるうちにその時は来た。
「きやがった!」
壁は壊され、大量のゾンビたちが来る。
「ここは私が食い止める」
「おい! アリサ。お前……」
「大丈夫。すぐに追いつく」
そのように覚悟を決めたアリサに恥をかかせられないとゾンビたちの前に立つアリサに向かって背を向ける。
「凪! こっちじゃ」
窓から出て、能力で足場を作り空中に立つ雛が手を差し伸べる。凪はその手を握った。
「終わった」
「えっ!?」
そして空中に踊り出た所でアリサが戻ってくる。見ればゾンビどもは全員地面やら布やらで拘束されており、アリサには傷一つなかった。
「何を驚いておる。アリサもSSSランクなのじゃ。このぐらい当たり前じゃろ」
そうであった。SSSランクは規格外。凪が心配することなど何一つなかったのだ。
『校長室。あそこはミサイルでも数発耐えれるように作られてる。ゾンビどももやってこれない』
音夢里がテレパシーを使ってそのように全員に向かって言う。この学校を最も知っているのは音夢里である。単純に雄介、完二、アリサ、凪の4人はこの学校に来て日が短く、寝夢里がこの学校に最も長くいるというのもあるが、単純に能力によってこの学校すべての構造。人や物の位置を把握しているのだった。
現在は雛が足場を作ることによって校舎の外。それも空中を移動している。正直このまま出て行ってもいいのだが、学校の外では何も異変が起きてないため、このようになった原因も学校の中にあると思われる。
なので、原因究明のためにも外に出るわけには行かなかった。
そしてそうこうしているうちに校長室の外にまで到着する。
「さて、着いたね。扉は開いてるようだけど中に誰もいないね」
「人が居ないここに用はないって事だろうよ。さて、窓は閉まってるようだがどうする?」
「こんな窓ぶち破ればいい……。氷精よ。我がもとに集まりて敵を貫かん。氷弾」
氷上が空中の水分を使い、氷のつぶてを作って打ち出すが、窓は傷一つつかなかった。
ちなみに詠唱に何の意味も存在しない。言ったところで言わなかったところで全く同じことができた
『ミサイルさえ防ぐ壁があるのに窓が氷の礫ぐらいじゃ傷つかないのも当たり前だ』
その言葉に氷上の顔が引きつる。そう言うことは早く言え、恥じかいたじゃないかとでも言いたげな顔だ。
「任せて……。錠前操作」
アリサが使う能力によって鍵が勝手に開いた。そのことによって窓は普通に開けれるようになり、窓から校長室に入り、扉をすぐに閉める。
部屋の中の様子はお茶が入ったコップが地面に転がっており、他に何の異常もなかった。
「さて、ここならばゆっくり話ができるだろう。窓から逃げられると分かってるわけだしね」
「んで、重要なのはどうしてこんなことになったのかと、解決方法だ……」
「問題は学校内だけでおきてる」
『学校内に関係者以外はいないね』
「ってことは事故か、内部犯か……」
「……事故? こんなことが起きるとは思えない」
「ってことは事件かな」
「なら目的と手段が重要になってくる」
5人は真面目に考察と共に解決方法を探る。
「おい、次元も話し合いに参加しろ!」
そう。5人である。この部屋に居るのは凪、次元、雄介、完二、氷上、音夢里、アリサの6人であり、次元はこの部屋に入ってから一言もしゃべらなかった。
「ど、どうしたらいいのじゃ……?」
だからこそ声を掛けたのだがその様子は凪が予想していたものとは全く違った。涙目になりながら凪のことを見つめてくる。
「こんなことになったのも儂のせいじゃ……。儂が懲りておらぬから……」
要約すると事件の始まりは異世界から取り出した一つの試験管。それを特に座標も決めずに次元の穴を作ったせいで極近くにつながってしまったのだ。それが校長室にあるポットの中。そしてそのポットの中で投げられ、ポットの中に叩きつけられた拍子にひびが入り、そしてそのままポットの中に薬品が流れ込んだ。それに気づかずにお茶を飲んだ校長が第一の被害者。そしてそのまま誰かに噛みつき、そこからネズミ算式にどんどん広がっていった。ということである。
6人は知る由もないがその試験管の中身は敵軍隊を倒すための新たなる兵器であり、人間の思考力を奪い、噛むことによってどんどん広がるというものである。
本来ならゾンビ状態になった者達を完全武装した人たちが捕え、捕虜にするのが目的だったがその試作品を雛が取ってしまったわけである。
この薬はずっとだと意味がないため、時間経過で元に戻るようになっていた。
すべての現況である雛を叱ってる間に正気に戻った人の悲鳴を先頭にどんどんと正気に戻っていった。中にはすぐに他のゾンビに襲われ、ゾンビになったがすぐに元に戻った。
この後雛は3か月間次元を他の異世界につなげる事を禁止され、真相を知る者達から色々とこき使われたのであった。
お久しぶりでございます。再び一か月もの間を開けて申し訳ありませんでした。
今回はエイプリルフールということで短編を。
書いてて気づきましたが嘘関係ない!
まぁそこは気にしない方向で(汗
とりあえず更新は4/1に間に合ってよかったです
4月1日午後26時8分だから間に合ってるよね?




