別格の戦い
「は、はい。申し訳ありません。すぐに基地に案内いたしますので許してください」
SSSランク二人によって速攻で倒された男はアリサの通訳を介してそう言う。
何度か「馬鹿め、素直に教えると思ったか!」などと言って襲いかかってきたりはしたが、一瞬のうちに無表情のアリサと次元によって一瞬で倒されていた。その際に指を砕かれたり、足を撃ち抜かれたりして軽い拷問みたいなレベルである。
無表情でそのようにする二人に俺は味方でありながらも恐怖を感じ、二人には逆らわないことを心に決めるのはまた別の話だ。
「あの丘を越えた先に地下への扉がありm――」
男が言い切る前に突風が起き、言葉を止まった。
そして一瞬遅れて俺たちの後ろにある山が真っ二つになった。
「……はっ?」
俺にはそう声を漏らすのが精いっぱいであった。
「ふむ、危なかったのじゃ。防御が間に合ってよかったのじゃ」
次元の台詞でようやく攻撃されていたことに気付く。それも山を斬るレベルの恐ろしい攻撃が……。
「兄ちゃんの攻撃を防いじゃった。やるじゃん。あの女やるじゃん」
「そうだな弟よ。それにしてもあの女の言った通り侵入者が来たみたいだな。弟よ」
「そうだねぇ。あの女が言うにはあいつらって裏切り者と反逆者なんだよね。なら全員殺しちゃうよ。殺しちゃっていいんでしょ」
突如聞こえた日本語。
次の瞬間には目の前の丘が斬れ、二人の男が立っていた。
二人は日本人とはかけ離れた格好で一人は剣を、もう一人は銃を持っていた。
「ついにお出ましのようじゃの。聖剣魔銃兄弟」
「俺たちのこと知ってるのか? 日本語覚えといてよかったぜ。俺たちのこと知ってるのなら」
聖剣魔銃兄弟。それは世界最高ランクのSSSランクである二人組の傭兵、その呼び名。
以前にも一度そのように名前を名乗るやつもいたがこいつらは桁が違った。そいつはコンクリートを斬っていたがこちらは遠くに離れた山。もし次元が次元の壁で防いで居なかったら何が起こったのか知ることもなく死んでいたことであろう。
「いきなり大ボスかよ……。行くぜ。アリサ、次元」
俺は素早く次元から貰った異世界の武器。隠しギミックの付いたトンファーを構える。
だが――。
「何を言っておる? お主は足手まといじゃ。そこで大人しくしとれ」
その言葉と共に俺がいる場所の次元がずらされる。これによって周りとは隔絶され、次元に影響を与えるようなレベルではなければ内からも外からも破壊できない。
「おい、出せ! 相手はSSSランクが二人だぞ」
「何を言っておる? 儂らもSSSランクが二人じゃ」
その言葉と同時にすぐそばに次元の狭間を作り、その中に保存している異世界の武器コレクションを取り出した。
「今回は信じてもいいんじゃろ? アリサよ」
「大丈夫。色々な感情を教えてもらうまで彼を死なせない」
その言葉と同時にアリサの後ろに様々な色の火の玉が出現する。
また、次元が小さく何かを呟くと同時に体が一瞬光る。次の瞬間には機械のようなものを纏っていた。
それは異世界の戦闘用スーツ。高速戦闘などを目的とし、火力もスピードもある優れものだと前に次元が教えてくれたのを思い出す。
「行け」
そうやってアリサが小さくつぶやくとともに様々な色の火球が聖剣魔銃兄弟に向かっていく。
「無駄だ。”火を払う聖剣”」
その言葉と共に聖剣使いの手に一本の大剣が現れ、それを振るうとともに様々な色の炎が一瞬にして消え去った。
剣を振り切った姿勢である聖剣使いに次元は素早い動きで光線銃を取り出すと同時に乱射する。
光の速さで届くそれを防ぐ手段など無い――と思っていたのだが次の瞬間にはそれが覆された。
「”光を喰らう魔銃”兄ちゃん大丈夫かい? 大丈夫?」
言葉と同時に出てきた拳銃。すぐに魔銃使いは銃は撃つ。銃口から発射された闇はレーザーの光を喰らい尽くす。
そしてその闇は次元に向かって飛んでいくが、その前に展開された次元の壁に呑み込まれた。
それだけの攻防が10秒にも満たない時間で行われる。その一つ一つが俺が必死に防御しても防ぎ切れるかどうかというものであり、この戦いに加わるどころか、援護すらできる気がしなかった。
アリサ・ビューティーはSSSランクにて最弱の火力である。そのように聞かされてはいたが正直戦った感想としてそんなことはないだろうと心のどこかで思っていた。
だが、これは次元が違う。この瞬間にも大地が巨大な人型になり、魔銃使いに襲いかかると、一瞬にして聖剣使いにその先にある雲ごと斬られていた。
「兄ちゃん。全然攻撃が通らないよ。届かないよ」
「そうだな。全くもってこちらの攻撃が届かない。その通りだ」
言葉とは裏腹に攻撃が通らなくって当たり前、むしろこれぐらいで通ってしまったら困るとでも言いたげな様子である。
俺と吹上。完二さん、雄介さんの4人で協力したところでこの攻撃を無傷どころか、生き残ることも不可能だと思えた。
「全くもって同感じゃな。あまり攻撃が得意ではないとはいえここまで当たらないとなると悲しくなってくるわ」
その言葉の応酬のうちに大地の支配権を広げていたのか、聖剣魔銃兄弟の足元が大きく陥没する。
「土砂操作。高熱操作。人形操作。複合、炎の巨人」
一瞬にして造り出された砂で出来た人形。それが燃え上がり、その状態のまま陥没した部分を連続で殴る。
一撃ごとに揺れる大地。しかしそれも何度か重ねた後に元の砂のサイズにまで切り刻まれた。
「全砲門一斉発射!!」
空中に浮かびあがった次元による異世界の技術。そのミサイルの嵐が吹き溢れる。
爆発が起こり、それなりに離れているはずのこちらにまで視界が埋まるレベルの砂が巻き上げられた。
「”物まねのマシンガン”」
だが、隕石でも落ちたのかと思うほどのクレーターの中にそいつらは無傷で居た。
おそらくはそいつの言った物まねのマシンガンによるものであろう。言葉通りだとすれば次元と全く同じ攻撃を連射しているのだろう。
だが、まだ攻撃が終わったわけではない。
大量の砂、津波のレベルの土が二人を全方位から包み込む。そして一瞬のうちにその津波は斬り裂かれ、崩れ落ちる。
「”大地を斬る聖剣”」
最早その戦いは何でもアリだった。僕の考えた最強の能力。まさにそういう相手に合わせて後付け設定でもされたのではないかという理不尽な戦い。
お互いに有効打が与えられず、いつまでも続きそうな戦い。しかし、何事にも終わりは訪れる。
次元が攻撃を防ごうと周囲の次元をずらす。それはどんな攻撃も通さぬ最強の盾となるはずだった。
「”次元を越える弾丸を放つ魔銃”」
その弾は聖剣使いの斬檄を防いでいる次元に向けられた。やがて放たれた弾丸は次元の壁を越え、その中にいた少女を貫く。
体をとっさに捻り、さらにパワードスーツの装甲があったため致命傷は避けている。しかし、その傷は大きく均衡を崩すには十分であった。
「あーあ。疲れるけど仕方ねぇな。あーあ」
聖剣使いのそのような気の抜けた声。それと同時に展開されたのは無数の剣であった。
今まで使ってきた聖剣と同等の、しかしその数は数えるのが馬鹿らしくなるほどの剣がアリサに向かって射出される。それに対抗すべく大量の砂が、水が、火が、草が、風が、雷が、氷が迎え撃つが拮抗させるのも一瞬が限界であった。
やがてその数に対応できなくなり、アリサの元へ大量の剣が襲い掛かる。
「やった? やっちゃった?」
次元は膝を着き、アリサは土煙の中で姿が見えない。
一瞬俺の頭に最悪の想像が思い浮かぶ。
「そんな訳ねぇ、そんなわけねぇよ」
自分に言い聞かせる様にそう繰り返す。
二人は最強クラスの強さを誇るSSSランクだ。そう簡単にやられるわけがない。それにアリサは4人掛かりでようやく倒した相手である。それに相手のやったか? は生きてるフラグだし死ぬはずがない。
俺は必死に死ぬ可能性を否定する。
どれもが一言で崩壊するような脆い言い訳。そして、言い訳を否定するかのように目の前には地面に突き刺さった剣以外何もなかった……。




