崩れる予定
「次元……。ちょっと話があるんだが……」
俺は次の日。次元にそう話しかけた。
次元は昨日とは様子の違う俺に戸惑いながらも耳を傾けてくれた。
「俺。中国に行こうと思う」
「はぁ? なんじゃそれは……」
次元は頭が大丈夫か? そう問うような顔で言ってくる。
俺としては真面目な話でそんな顔されるのは心外だがあまりにも唐突すぎたので仕方がないのかもしれない。
「吹上が残したノート。そこにいくつかアリサのいた組織について場所の推測が残ってた。そして一番本部の可能性が高いのは中国だって話だ」
その理由は聖剣、魔銃兄弟がいた所だからだ。
勿論偶然その二人がいた可能性もあるがほかの理由も考えると可能性は高いと思う。
人工的SSSランクの超能力者を研究する過程で生まれた超能力を増大する装置。それが存在するのもこの中国であった。
――と言ってもすべてはこの世界の俺の推測だが……。
だが、それでも行く必要があると俺は考えている。吹上の仇を討つため、非人道的な実験を止めるため……。
「じゃから?」
「金を貸してくれ……」
「……」
可哀そうなものを見る目だ!
次元の目はまさしくそれである。
だけど仕方がないだろ! 俺は元々この世界の住人ではないからお金なんて持ってないんだよ!
本当だったら俺もこんな情けないことを言わずに行きたかった。
それに絶対に行くのを止められると思った。
だからこそ一人でひっそり行こうと思ったんだ。
だが……
「はぁ……。そんなこと許すと思ってるのか? 儂はお前さんに危険なことをさせるの訳には行かないのじゃ」
やっぱりか……。
だが、これで諦める訳には行かなかった。
「じゃあこの世界の俺の仇は誰が討つんだよ。あいつは俺を助けて死んだ。俺にこのノートを託して死んだんだ!」
奴ら組織を潰す。
こればかりは退けない。退くわけにはいかなかった。
「警察に任せればよい。何の力を持たぬお主が行ったところで死ぬだけじゃ」
「俺にだって能力がある!」
「この世界じゃ誰もが持っておる。そのちょっと珍しい程度の能力じゃ無いも同然じゃ」
元の世界では特別だったであろうこの能力は飴をなめるだけで手に入る。
無意識に元の世界と同じ気分だった俺はこの能力が特別に感じていた。そう自覚させられた。
「でも、それじゃあ退く理由にはならない」
「行く理由もないはずじゃ。お主はたまたまこの世界に居ったお主と間違われただけなのじゃ。退く理由は無くとも行く理由も無いじゃろう」
その通りだ。
なにを言ったとしても俺はたまたま巻き込まれただけの大きな力を持たぬ一般人だ。
「だけどこの状況を知って見て見ぬ振りをするのは俺の憧れてきた主人公じゃありえねぇ」
「お主は漫画や小説のキャラクターではない。現実とフィクションを一緒にするでない!」
「分かってるよ……。だが、ここで退いたら俺がヒーロー、主人公になることは一生無いだろうよ。だからこそここで退きたくない。ただのモブに、ただ社会を回すだけの歯車にはなりたくないんだよ!」
社会にはそのように社会を回す人も必要だろう。そして俺はその人たちがいるからこうして生きていけるのも理解してるので見下してもいない。
だが、俺がそうなりたくない。特別な存在になりたいと思う。
漫画や小説の主人公に憧れて生きてきた。なれなくとも良い。だけど主人公のようになりたいと思って生きてきた人生、そんな風に生きてきたからこそ苦しんでいる人たちが居ると知り、なにもなかったように生きていくことは出来なかった。
「警察に任せれば良い……と言っても聴かないのじゃろうな……」
「当たり前だ」
「なら、儂もついていく。これが儂の出来る最大限の譲歩じゃ」
予想以上にすんなりといった説得に俺は拍子抜けする。
「なにを驚いているのじゃ? 儂もネット小説とかまで読むオタク畑の人間。そんなこと言われて心が動かないはずは無いじゃないのじゃ」
そう言えばこいつも同じサイトで小説を読んでたし、漫画も結構読んでいたな、と思い出す。
「流石に今すぐ出発とか行かない。明日の飛行機を予約するから今日は明日に備えて休むのじゃ。学校もそろそろ休みとなるとくることじゃろう」
昨日教員の一人が亡くなった。
その前に学校の生徒の一人が暴れ、しかもその生徒がSSSランクとなれば学校が休校となるのもうなずける。
「あぁ、分かってる……」
とは口では言ったもののゆっくり休んでるつもりは無かった。
乗り込むのは敵地。そうなれば色々準備が必要である。そして那美のことを頼むのも必要であった。
「もしもし、永井先輩? ちょっと頼みたい事があってーー」
「氷上? ちょっと頼みたいことがーー」
「おう、船井。ちょっと頼みたいことがあってなーー」
「翼ちゃん? ちょっと遠出するから那美のことーー」
「校長先生。頼みごとがあってーー」
俺は少しでも事情を知っている者に次々と電話をかける。
中には事情を知らない者もいるが、それはまた別のことを頼んだ。
「完二さん。実はやつらの本拠地の目星がついたので少し行ってきます」
『奴らの本拠地がって……!? 凪君。早まっちゃだめだ
! 君が死んだら……』
「大丈夫です。完二さん。別にやけになってるわけではないですよ。無理はしませんって」
『だったらいいんだけど……。その本拠地は日本かい?』
「いえ、国外です」
『そっか……。残念だけど国外だとなるとすぐに追って行くのも無理そうだ……。本当は止めるべき何だろうけど止めたところで無理そうだね……。だけど絶対に行くから無茶はしないでくれよ……』
「分かってます」
そう言って電話を切る。
次の電話で俺がこの世界で知り合い、そして事情を知るものの最後である。
正直言ってあまり長く話したこともなくどんな人かもよくわからない。だが、この人に言えば安心できると自然に思える人だった。
「もしもし……」
『その声は……確か双神だっけな……?』
「はい、そうです。突然すいませんーー雄介さん」
武智雄介。警視総監の両腕の一人。
明智完二と共に見せた動きは相手がどう動くのか完全に分かってると思わせるような動きを見せていた。
救世の10人の一人にして救世主と呼ばれる男。
『なぁ、突然だけど俺のと完二の能力ランク知ってるか?』
あまりにも唐突な質問に頭の中に疑問符が浮かぶ。
教えられた覚えもないし正直に「いいえ」と返した。
「完二の能力はSSランクの収納操作。生き物以外すべての物を異空間に仕舞うことが出来る。俺はアイテムボックスって呼んでいる。救世の十人、王道勇者様にふさわしい能力だ。そして俺の能力は武具操作。能力レベルAだ」
それは俺に確かな驚きを与える。
この世界には能力レベルの差がそのまま戦闘レベルの差だと思っていたからだ。
もちろんそれが全てではないし、相性や能力の使い方で差を埋めれたりすると思っている。だが、それでも能力レベルが高いほど有利なのには変わりがない。
警視総監の片腕と言われるほどなのでもっと能力が高いと思っていたのだ。
『俺は操れる数は多いが引き金を引いたり、弦を引いたりとと細かい操作が出来ない。だから銃や弓とかの飛び道具は使えない。つまりは適当に武器を振り回すのが精一杯だし、全ての武器を自分の頭で操作しなければならない。だからこそのAランク判定なのさ』
思い出してみればアリサ・ビューティーとの戦いで飛ばした剣ははほとんどまっすぐに飛ばしたり、空中で足場にする程度の単純な軌道だった。
それに奇襲で使った複雑な軌道を描いた剣も一本だけであった。
『まぁ、つまりなにが言いたいかというと全ては戦いの前の優劣だけで決まるわけではない。戦国時代には数千対数万を巻き返すなんてのも数多く存在……はしてないがそこそこ有るもんだ。まぁ、なんだ? とりあえず勝てない勝負ではない』
どうやらこの人は励まそうとしてるらしい。
敵の本拠地に乗り込むということで自分でも気づかないうちに体がこわばっていたようだ。
自然と余分な力が抜け、それでも必要な力まで抜けた訳ではない。最高とも思える状態だった。
「ありがとうございます。雄介さん」
『おう、頑張れ! それと大丈夫かどうかは分からないが上に助っ人が行けるように頼んでみるわ。俺たちは無理だろうけどそいつは好きに使ってくれ』
それはありがたいと素直に思う。
敵はSSSランクの聖剣、魔銃兄弟にその他にも次元の話を聞くならば数百人のSSランクは有るであろう能力者が居るらしい。
一人でも戦力が多い事に越したことはない。
『最高の運命を掴みとれ! 頑張って来いよ』
「はい!」
敵は中国。
本陣へ直接乗り込む最後の戦いが始まる。
タイトルは作者の予定……。
いえ、なんでもないです……。
NEXT12月1日
少しお休みください。
ちょっとここ最近予定通りに更新できてないので一度書き溜めというものに挑戦しようかな? と
それと今リレー小説と書きたい短編がいくつかあるのでそちらに時間を割きたい次第です。
どうかご了承のほどお願いします。
PS 書き溜めあまり期待しないでください……できるだけ頑張りますが……




