なら教えてやる
それでも先ほどと状況は変わらない。
SSSランクの能力者に実力者が三人と素人が一人。
正直に言ってまともにやったら俺が三人の足を引っ張ることが分かる。
だからこそ俺は頭をひねらなければならない。
実力が三人に劣るならほかのところで補うまでだ。
「さて、今回は僕からだ。警察特性の登録した人の超能力以外の影響を受けない特別性の剣と盾だよ」
その言葉と同時に取り出されたのは100を越える剣と大中小、様々な盾であった。
「さて、伝説の10人の主人公。その勇者の名に恥じない戦いをしないとね」
「なら俺は救世主の名に恥じないように敵ですら救ってみせるさ」
教科書に載るほど大きな事件。
その解決の立役者ふたりの本気だ。
「どいつもこいつも暑苦しい……」
全く、こいつは空気が読めないのかよ。
それが自分自身のことになると言うことに目を逸らしつつそう思う。
「だが、嫌いじゃないだろう?」
寧ろ大好物だろう。
俺の幼い頃を形作った少年マンガ。
その熱いのりをどんな風になろうと忘れることはない。
「まぁな」
そうやって吹上はクスリと笑う。
「なぁ吹上」
「なんだ?」
正直言って俺自身である吹上との連携は抜群だ。
悔しいことに元々同一人物であるため思考回路が同じだから次にどう動くか手に取るように分かる。
だが、それでも地獄を味わった吹上と戦場を知らずに生きてきた俺とでは少しずつ変わってくる。
「地獄を味わってない俺がお前に会わせるのは無理だ。だから俺に会わせてくれ」
「勝手な奴だ……。それを俺がオッケー出すとでも」
「出すさ」
「何故そう思う?」
「だって同一人物だろうが」
一瞬吹上ーーいや、この世界の俺は虚を突かれたような表情をする。
だが面白そうに笑うと、口元を上げてニヤリと効果音がつきそうな感じで再び笑う。
「いいだろう。お前に完璧なまでに合わせてやるよ」
正直言って俺はこいつのことが嫌いだ。
それはこいつもそうだろう。
自分自身をみてるようで、実際にその通りで、いやな部分がいやでも分かる。
普段は自覚していても無意識のうちにそらしてるような小さなことだ。
しかし実際に別人として目の前に立たれると、だめな部分を見せられ自分自身が嫌になってくる。
だが、それでもこいつは俺自身である。
「だからお前は俺のサポートを完全に信じろ。そして一片すら疑うな」
「分かってる。お前に背中を任せたときからそのつもりだ」
すべてを完全に任せられる存在が居るとするならばこんなに頼もしいことはないと思った。
そして、これならばSSSランクだろうが世界だろうが敵に回せる力を与えてくれる。
そして両サイドには完全に息の合った二人、俺の後ろにはすべてを任せられる存在。もうなにも怖くないと思う。
「俺、完二さん達が動き出した直後だ」
「了解だ、俺」
そして大量に展開された無数の剣が浮かび上がる。
それがどちらの能力かは分からない。だが、動き出すにはここしかないと思った。
ドカッ
そのような音が後ろから聞こえる。
俺の予想が正しければこの世界の俺がマンホールを切ったのだろう。
遊園地にも人が居る以上はマンホールは存在する。
そしてその中に水が流れてるのも当たり前のことだ。
「来い!」
位置は把握している。
後ろでは俺の能力によって大量の水が吹き出てるだろう。
そして隣を風が通りすぎる。
この世界の俺が斬り、筋肉の繊維を無数に増やして強化された筋力で投げられたものである。
後数センチで俺を直撃していただろうその二つに分かれたマンホールはアリサ・ビューティーの虚を突くことには成功していた。
あわてた様に能力を発動させ、マンホールの蓋を止める。
おそらくは念動力系の能力だろう。
だが、攻撃はそれでは終わらなかった。無数の剣がアリサに向かって飛んでいく。
そしてその能力に身を任せて飛んでいるのは完二さんだ。
浮く剣に捕まりながらアリサ・ビューティーの真上に位置取る。
上に逃げても完二さんが周囲には完二さんがどこからか取り出し、雄介さんの操る剣があった。
そして地面をドーム状にすることにより360度すべてをガードする。
そして恐らくは視覚操作だかなんかで俺らの様子も見ていることだろう。
その証拠に鉄の人形が完二さんを正確無比に襲ってきた。
だが完二さんは体を回転させることにより鉄の人形の手を転がることによって避わす。
そして剣すら防ぐドームには俺が操る水が浴びせられる。
「その壁は結局土でできてる。土に水吸わせたらもろくなるのは当たり前のことだよな?」
俺は僅かに身を前に倒す。
背中を思いっきり踏まれるのが分かった。
俺を踏み台にして高く飛んだこの世界の俺は、その動きをみて盾を構えた完二さんの盾を足場に真下に向かって飛ぶ。
「オッラァァ!!」
先ほどと同じように極限まで筋肉繊維を増やしたそのパンチはもろくなった壁を破壊し、その中に居た少女を外に出す。
そして少女は筋力強化系の能力を使ったのかこの世界の俺をありえないほど大きく蹴りとばす。
だが、その攻撃は完二さんや雄介さん、この世界の俺のような洗礼された動きではなくただ単に力任せの一撃。
そのような一撃を繰り出した後ではバランスを崩すのも当然で着地にふらつく。
もちろんそこを見逃す警察コンビではなく、完璧なタイミングで攻撃を繰り出そうとする。
しかしそれは鉄の巨人が崩れさり、小さくなった鉄の雨を防ぐ為に中断せねばならなかった。
だが、俺はかまわずに走る。
上空では俺を守るために雄介さんの操る巨大な盾がその鉄の雨を防いでいてくれた。
「おい、お前を殻は消えたぜ?」
先ほどのドームは俺には卵の様に見えた。
すべてを命令通りに動き、自分の居きる意味。そして免罪符にするための言い訳に使って自分を守っていた少女。
この戦いを通して俺は確信する。
『私には感情はない』
そんなわけあるか!
人間は誰しも感情はある。
壊れるかもしれないし、傷つきたくないなどと思う弱い心が。
じゃなければ何故この戦いでいきようと必死そうな目をしている。
『私には感情はない』
じゃあ何でこの戦いで動揺しているんだ?
揺り動く感情がなければ動揺も焦りもないんじゃないのか?
『ねぇ死ぬってどんな気もち?』
何故俺にそう言った?
警戒を生むだけで命令通りに動いてるだけならばそんな事言う必要はねえじゃねえか。
そしてーー
『どんな気持ち?』
お前は知りたいって感情があるじゃねえか。
3人が俺を守ってくれ、生み出されたアリサ・ビューティーにつながる道。
俺は拳を握る。
「知りたいなら教えてやる。まずは痛いって感情からだ!」
名にも鍛えてないただの高校生の力任せのパンチ。
完二さんや雄介さんみたいに鍛えてるわけでもなく、そしてこの世界の俺やアリサ・ビューティーみたいに能力で強化してるわけでもない。ただの喧嘩パンチをアリサ・ビューティーの腹に思いっきりたたき込んだ。
4人の連携により届いた最初の攻撃。
そして届いたかは分からないが俺の本当の気持ちを乗せたパンチだった。
「ほら、ほかにも色々と教えてやる。怒り、悲しみ、苦しみ、哀れみ」
それだけでは終わらない。
俺の思いはそれだけではすべて伝えられない。
「喜び、嬉しさ、そして感動を教えてやるよ」
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