後ろでのヒロインたち
「ここは……?」
「どうやら離されたようじゃな……」
儂は倒れてきた男によって瞬間移動させられていた。
周りは森に囲われており、森の中には何十人もの人が隠れていた。
全てがうまく気配を隠しているが空間を操る儂にとっては手に取るように分かる。
「ヒーヒッヒ。ようこそお嬢さん。今まであの逃げた実験体野郎と一緒にいたせいであのガキに手を出せなかったが今頃奴は同じく実験体のあの娘に襲われてるだろうさ」
木の陰で隠れてるつもりなのか瞬間移動系の能力者はヒーヒッヒと気持ち悪い笑い方をしていた。
「クークック」
そして変な笑い方を奴だけでなく、儂の隣にも居った。
「お前等組織も動き始めていたか……。だが、私の氷の魔術の敵ではないわ」
「っち、お前も組織について知っているのか……。おまけのつもりで連れてきて慰めものにしようかと思ったが仕方がない。お前ごとやってやるよ」
氷上とか言う厨二娘の発言により、余裕を持っていた男の様子が一変する。
だが、本当にこの娘が組織を知っているとは思えないし、普段の言動を考えればこれはいつも通りの厨二病発言だと分かる。
この厨二娘はこんな時にまで厨二発言を……と呆れかけたが、よく見てみるとその手は震えていた。
「こ、これは武者震い。この程度の敵、私がくぐってきた数多くの敵に比べればなんていうことはない」
儂の視線に気づいたのか、そのように弁解するがただの強がりと簡単に分かった。
だが、自分の思い浮かべている本当の氷の魔術師を再現しようとし、恐怖を押し殺し気丈に振る舞っているのだ。
いつもの背中のマントを翻し、声高らかに言う。
「私は凍える最強の魔女と呼ばれた女。私を倒したければ100人は用意しなさい」
帽子を深くかぶり、表情を隠し言う。
だが、先ほどの様子を見るにその表情は恐怖でひきつっていることだろう。
「100人か……それは良かったよ」
木の陰に隠れた男は喜びにあふれたように言う。
「俺らは元々そこのSSSランクを殺すつもりだったんだ。だからーー」
森の中でゴソゴソと動く音がする。
その数は十や百ではなくーー。
「300人は用意したさ!」
百を余裕で上回る数がいるからだ。
一斉に超能力が放たれる。
その攻撃は様々な種類と人数による大量の攻撃により周囲に迫る壁と化していた。
厨二娘は腰が抜けたのか座り込む。
「じゃが、儂を誰だと思っておる?」
様々な攻撃のせいで相手には聞こえないだろう。だが、厨二娘には聞こえていたのかこちらを向く。
「その程度の壁じゃ儂の壁は崩せぬ」
壁のような攻撃は儂等の遙か手前で全てが止まる。
そこには目には見えない壁、次元の壁が張られていた。
「儂の防御力は同じSSSランクを持ってしても簡単には越えられぬ。SSSランク最強の防御力を持つ儂にっとってはこの程度はもんだいない」
「バカな!!」
「元々300人ぽっちじゃSSSランク相手には時間稼ぎにしかならんじゃろうな。つまりお主等は捨て駒にされたんじゃな」
男の顔にはどんどんと怒りに染まっていく。
「私は主に期待していると言われたのだ。断じて捨て駒などではない! 撃て、撃ち続けろ。そうすればいつか奴の防御も崩れるはずだ」
「無駄じゃ。お主等の攻撃では何億発、何兆発撃たれてもビクともせん。文字通り次元が違うのじゃ」
次元を帰ることによってこの中はいわば別世界。
いくら攻撃しようと世界を移動できるような攻撃ではない限りいくら撃たれようとも問題はない。
だがそれはこちらも同じ、次元を跨ぐようなことをしなければこちらの攻撃も届かない。
「じゃが、こ奴らごとき問題ない」
次元に穴を開け、そこから一つの武器を取り出す。
原理は分からないが超高濃度エネルギー、簡単に言うとレーザーみたいなものを打ち出す装置。撃つまでの溜めが長いのがネックじゃがそれは次元で隔離したこの空間なら全く問題ない。
じゃが、チャージを開始したところで厨二娘がこちらを見てくる。
「かっこいい……」
そうやって見る目は輝いていた。
先ほどまで腰を抜かしておったのに現金なものじゃなと思いつつもその反応は好ましかった。
「使ってみるか?」
「うん!」
予想以上の反応じゃった。
今なら何いっても言うことを聞いてもらえそうなレベルである。
「儂が合図をしたら引き金を引くのじゃ。そして10秒ほど発射され続けるから横に薙払うのじゃ」
そして別の世界にあった別の道具を取り出す。
魔法のある世界で場所にあった形は全く違うがガトリングみたいなものである。
先ほどのレーザーとは違いこちらは精神体を直接撃つため物理的障害物とかを無視して飛んでいく。さらには空気中の魔力を吸って撃つために弾の装填は不要である。
木里に情報を見てもらったところ試作品らしく威力は低く、一発で気絶まで持っていくのには厳しいものがあった。
「じゃが、問題ない。一発で気絶しなければ何発も撃てばいい」
これまた異世界で手に入れたアニメなどでみるようなパワードスーツを纏い、ガトリングの引き金に手をかける。
そして撃ち続けるのが疲れてきたのか、攻撃の勢いが弱まったところで能力を解除する。
「今じゃ!」
そう叫ぶと同時に引き金を引く。
ガトリングから不可視の弾丸が放たれ、木の陰に潜んでいた数々の敵を打ち抜く。
「汚物は消毒……!」
厨二娘は言われた通りにレーザーを放ちながら横に薙払った。
レーザーは容赦なく敵を貫く。
その様子に安心しながらも儂は能力を行使する。
先ほどのように自分を囲って使うのではなく、相手を囲う。
だが、そうやって攻撃をしてるうちにも敵の攻撃は後数メートルのところまで迫っていた。
「おとなしくしてるのじゃ」
厨二娘にそういうとパワードスーツのスラスターを全開にして上空へと飛ぶ。
「と、飛んでる!?」
「そうじゃな。じゃから口を開けてたら舌を噛むぞ」
周りにある木よりも高い位置まで飛び上がったところで上昇をやめる。
「高い……」
「少々高すぎるかの?」
「問題ない……」
それと同時にレーザーを構える。
この厨二娘もなかなか覚悟が決まっているようじゃ。
「それとスカートの下は大丈夫かの?」
本当はこんなこと気にするべきところではないじゃろうが、女子だから気にしないわけにはいかない。
儂はスパッツをいつもはいてるから大丈夫じゃが現在は学校の制服。そうなると女子は必然的にスカートをはいておるからこんな上空ともなるとスカートの中を下の奴らに見られないか不安になる。
「大丈夫。短パンはいてるから」
と、思ったが心配はいらなかったようじゃ。
安心し厨二娘を放す。
突然放されたことに驚きバランスを崩すが今度は空中に立てるようになったことに驚いてるようじゃ。
儂もスラスターを切り、同じように空中に立つ。
「空中に立ってる……!?」
厨二娘は驚きに満ちてるようじゃ。
それも仕方がない。普通なら取り乱しても良い状況だ。
「私に隠された真の力が目覚めた?」
「そんなわけあるかい!!」
思わずつっこんでしまったが時間がなかった。
凪の方には儂と同じSSSランクが敵におる。火力こそないがどんな攻撃にも対応できるため隙はもっとも少ないと考えて良いじゃろう。
「綺麗な海……」
厨二娘は周りを見渡してそのように言った。
周りを見渡して?
「まさかっ……!」
森の外は海に囲まれていた。
瞬間移動したさきは無人島だったてことじゃ。元のいた場所からかなり離れていることが予想できる。
「今更気づいたか。その通り、ここは東京湾に浮かぶ無人島だ。お前が戻る頃にはあの小僧は死んでることだろう」
「黙れ!」
異次元にしまってあったピストル型の銃を男に向かって撃つ。
男の生死は分からないが、気にしてる暇はなかった。
すぐさま能力を行使する。
対象は島全体。これで奴らは逃げることができないはずだ。
本来ならもっといろいろと痛めつけたいところだが
時間がないのでこれ以上は何もしない。何もできなかった。
「厨二娘、儂に捕まれ!」
儂の大声に怯えたように儂に捕まってくる。
しかし、厨二娘のその様子にかまっている余裕はなかった。
「あやつは、あやつは儂と違って一般人のはずじゃ」
本来なら超能力のないここと似たような世界でこのようなことに巻き込まれることなく生きていたはずだ。
儂が連れてきてしまった最初の日。儂が部屋からいなくなった瞬間に泣いてる音が聞こえた。
奴は、凪は誘拐同然に連れてきた儂に罵声を浴びせるどころか気を使ってくれていたのだ。
「あやつは何一つ傷つく必要はないはずじゃ」
スラスターを再び全開にして飛ぶ。
遠くにうっすら見える本州に向かって。
「なぜじゃ、なぜ神様がいるとしたら奴にこんな仕打ちを……」
いや、神に文句を言うのは筋違いだ。
奴を連れてきたのは神ではなく儂の責任。
本来なら本当の家族と仲良く生きていたはずなのにこのような生死がかかった戦いに巻き込まれている。それも大した力も持たずに……。
そのようなことになったのも儂の責任。
だからこそ奴が元の世界に戻れるように努力をし、そしてこちらの生活でも何一つ苦労せずに暮らせるようしたかった。
儂みたいにこの平和な超能力社会の汚い裏側を知らずに生きてほしかった。
せめてこの世界でも平和に暮らせるように守ろうと決めた。
「じゃから凪は殺させるわけにはいかない……」
人一人の運命を狂わせてしまった儂にできるせめてものことだから……。
次いつかは未定になります。
今日できる限り書き、10万文字を超えそうなら今日日中に更新し、無理ならそれをすっとくとして7日以内に更新するようにしていこうと思います




