生まれた時よりの親
「さて、奴らとは言ってるものの名前すら分かっていない状態だからねぇ。分かってることといえば超巨大組織であり、一部の構成員と研究目的。それも裏か表か分からないやつだ。実に情けない限りだよ」
優秀だと思われる日本の警察でもまともに分からない組織。そんな存在が自分を狙ってるとなるとぞっとする。
『ねぇ。なんで私がいる前でそんな話してるのかなぁ? 嫌な予感しかしないんだけど』
永井先輩の念話が話を打ち切り飛んでくる。
そもそも永井先輩が呼ばれる理由に俺も心当たりがなかった。ただ単に自分の娘だと紹介するだけならば呼ぶ必要もないし、呼んだとしてもこの話を聞かせることはしないだろう。
だからこそ何かしらの理由がある。そしてそのことに永井先輩も気づいてるということなんだろう。
「うん、それは連絡と警戒を頼みたいんだよ。娘を危険に晒すのはどうかと思うけど娘の安全のためにそれがいいと思ってねぇ」
『矛盾してるよね。そして話の前後に脈絡がないと思うんだけど?』
「あ、うんそうだね。とりあえず音夢里の風の警戒網を学校中に広げてほしいんだ。それで不審者が出たらここにいる中で学校にいる人全員に念話で知らせてほしいんだ。凪君は当事者だしあの二人は護衛でこの学校に侵入する。そして雛君とこの校長は世界きっての実力者だからね。無関係の人を今回の事件に巻き込むのは避けたいところだが相手が相手だからね。そうも言ってられないんだよ」
永井警視総監はそう言った。
確かに二人だけでは探索や警戒に向いた能力がない限りこの学校全体を警戒をするのは無理だろう。そして連絡にも若干の時間のロスを避けられない。
しかし、永井先輩の能力でなら普段から周囲の様子を能力で伺っていて、念じるだけで任意の相手に一方的とはいえ念話ができる。風の調査能力がどれぐらいまでできるのか分からないが親の永井警視総監が言ったセリフを考えると学校全体をカバーできるほどなのかもしれない。
ただこの作戦には一つだけ完全に抜けている者があった。永井警視総監が見逃してるとも思えないがそれはーー
『面倒……』
――永井先輩の性格である。そもそもめんど臭がりな永井先輩がこんな面倒なことをやると思えなかった。そしてその予想はあっていたようだ。
「うん、そうだな。それじゃあ凪君。家来る? ちょっと音夢里の小さい時の写真とかいろいろあるよ?」
「ちょ、父さん!?」
直接声を出し、さらには普段のんびりとした姿だけしか見せない永井先輩の、見たこともない焦った声。
俺はこんなに焦る永井先輩にあっけにとられていた。
『分かったよ……。父さん、今日のことは母さんに行っとくから』
「ね、音夢里……? まってくれ、それはマジで勘弁してくれ」
『父さんの頼みは聞くことにしたからもういい? もう眠いんだけど?』
先ほどとは立場が逆転し、永井警視総監が慌てる番となった。
これ以上永井先輩と共にいると威厳を保てないと感じたのか、あっさりと許可を出す。
いや、もうすでに遅い気はするのだが……。
そして永井先輩は宣言通り部屋を後にした。
「凪君、雛君。娘と仲良くしてくれてありがとう」
永井警視総監がそう言う。
何の脈絡もないその言葉に俺はなんて答えればいのか分からなかった。
「本来あの子は正義感の強く、正義活動とか言って積極的に人助けをしてたんだけどねぇ。その正義感を利用され、そして私が警察の重鎮であったことを利用され、それからというのも人間不信。そしてあのような性格になってしまった」
永井先輩はいつも能力で周囲を警戒していた。今まで特に気にしていなかったが人間不信、それが原因なのだろうか?
「あの正確になってもかわいい娘だし、結局のところ正義感、それに優しさも変わっていない。そして信頼する相手には今まで以上に信頼するようになった」
俺の能力の特訓にいつも面倒だと言いながらも付き合ってくれた。本当に面倒なら突き放せばいいだけなのに。
永井先輩が優しさ、面倒見の良さをは俺もよく分かっていた。
「だからなんだという話なんだろうけどね。見てたら今のところ凪君と音夢里はお互いにに恋愛感情はなさそうだし、親としたら喜べばいいのか、娘に春が来てないことを嘆けばいいのか……」
俺と永井先輩が?
考えたこともなかった。
「兎に角だ。二人にはこれからも仲良くしてほしい。それが戸崎木里君の不正に凪君の戸籍を用意したことを見逃す条件だ」
俺と次元は飲み物を何か飲んでいたら盛大に噴出していたことだろう。
俺はこの世界の存在ではないため、もちろん戸籍も存在してなかった。
それを次元の友人である戸崎木里さんを経由して作ってもらったのだが当然どこで生まれたかなど証明できないので正規の方法で戸籍が作れるはずもなくこっそりと不正に作っていたのだ。
「な、なんのことじゃ?」
明らかに動揺を隠せてないのに次元はしらを切ろうとしている。その態度は明らかにその通りですと言ってるようなものだ。
「なに、怒ってるわけでも君らを犯罪者にしたいわけでもないんだよ。ちょっと今回凪君が襲われたので少し身元の確認のために凪君の戸籍を調べたら偽装されていたものだったよ。まぁ異世界から人を連れてきてはいけませんって法律はないからねぇ」
そう言って人の悪い笑みを浮かべる。
この人は優しいだけではないらしい。優秀であり、腹芸もできるからこその警視総監なのだろう。
「そこまでわかってるのじゃな……」
逃げ道はないと悟り、観念したようにそう言った。そもそも見逃してくれるというのなら素直に認めた方が良いのだろう。
「さすがに異世界から来た人の戸籍を用意するための法律など存在しないからね。ある程度は仕方がないとしても警察に相談してほしかったかな? と言いたいところだけどそんな与太話に付き合ってられっかていうひともいるからね」
永井警視総監が苦笑しながらそう言う。
「とりあえずは娘のことをよろしく頼むよ。自分で協力するように言っておいてなんだけど娘を危険なまねさせる訳にはいかないからね。できる限り手を打っておきたいんだ」
そう言う永井警視総監にははっきりと一人の娘を思いやる父親を感じた。
予定より一週間と半日遅れ……
どうしてこんなに遅れてしまった……
マジですいません
言い訳のしようもないです
昨日の本来の投稿分はなるべく早く投稿しますのでよろしくお願いします
もちろん日曜日にはいつも通り日曜更新に戻るようにしますので
本当に遅れてすいません




