上辺だけの言葉
生み出された雷は轟音と共に落ちる。
雷は空気の薄い方へ落ちやすい。
つまり空気操作使えばある程度方向性を決めてやることもできるのであった
雷は人がよけれる速さではないし、まともに受けたら死亡する例がほとんどである。
だからこそ自身を持った一撃、最後に残しておいたエース。
これで正真正銘奥の手のジョーカーと切り札のエースを使い切った。
仕留められなければ俺の負けである。
いや、その前に意識がすでにほとんどない。
「……た……。こん…………う……い…………れたら………………――」
小さく聞こえた声、それを最後に完全に意識はなくなった。
「なんじゃ? やっと起きたのか?」
目を覚まして一番に聞いたのは次元のそんな言葉だった。
周りを見わわすとそこは次元の家のリビングだった。
どうやらリビングのソファに寝かされていたらしい。
「あれ? 那美は? もう一人の俺は?」
「何寝ぼけてんじゃ? 那美はお主が見つけたのじゃろ? あの翼って娘が吹上先生に気を失ったお主の妹とお主自身を渡してきたって聞いたがの」
翼ちゃんは翼ちゃんで俺が戦っている間にも探し続けていたのか、連絡も取れなくって心配もかけてしまっただろう。
「そもそもじゃ、怪我はどうしたんじゃ?」
「えっ!?」
俺はその言葉に驚いて体のあちこっちを触ってみる。
そこで気づく、両腕が動いてることに。
魔獣使いに撃たれて両腕は動かなかったのに……。
さらには明らかに重症となっていた貫かれた腹の傷もなかった。
一番最初偽物の聖剣使いと魔銃使いと闘った時の傷もだ。
転がったせいで擦り傷などがかなり多かったのだがその傷もなくなっている。
「なんで……?」
なぜ治ってる? なぜ生きている?
明らかに死ぬ感覚があった。
いくら超能力がある世界とはいえ一瞬でけがを治せるものなのか?
その前に誰が治した?
夢落ち、ということはないはずだ。
それは次元の反応の仕方からも分かる。
しかしあの場で俺の治療などできるものなど一人しかいなかった。
あの場にいたのは俺を合わせて5人。
聖剣使いに魔銃使い。なんか姿を消せる奴もいたはずだ。
それと俺にこの世界の俺。
前二人は俺と同じように気絶してたし、この世界の俺の様子を見るに廃工場に入ってくる前に倒したのだろう。
じゃないとそいつの顔になるなんて不可能だし。
となるとそいつもダメ、俺も動けなかったってことになると残るのは一人である。
能力は自分の肉体を操作する能力、もし俺も自分の肉体と認識できるのなら傷一つなく治すことも可能であるはず……。
いやいや、それはない。
だって傷つけてきたのはあいつだぜ? 殺す気だったのに何で俺を治すんだ?
だからない。きっとない。
「どうしたんじゃ? さっきから様子が変じゃぞ?」
「いや、なんでもないよ」
そうだ。
あんな少年心を忘れたあいつなんてほっておけ。
あんなことがあったんだからもう会うこともないだろう。
「と、見事にフラグだった……」
「おい、双神授業中だぞ? どこを向いている?」
俺が現実逃避気味にそんなことをつぶやいていると吹上先生が注意してくる。
うん、吹上と名前を変えたこの世界の俺が……。
「なんでいるんだよ! 昨日あんなことしといてよく顔だせたな!?」
思わず怒鳴ってしまった。
それだけに普通に吹上がいるのが予想外だった。
見た目はいつも通りで一切昨日のダメージは感じさせなかった。
「昨日あんなこと……。そう言えば前も吹上先生が双神君を呼び出してたような」
「それってもしかしたら」
「吹上先生×双神君?」
「ちょっと待って、それなら逆じゃない?」
「生徒と教師、そして性別を超えた禁断の愛!」
「そこの婦女子ども! 黙ろうか!」
なんで女子はすぐにそんな風に持っていきたがるのかなぁ?
俺と俺の絡みなんて死んでもごめんである。
「おいおい、双神。なんで誤解を招くような言い方をするんだ? ただ酒を飲みすぎてよく覚えてないがなんか色々と恥ずかしいこと言ってたとは思うがそんな堂々と言われることじゃないと思うぞ? それに酒で醜態をさらしてしまったからって仕事を休むわけにもいかないだろう」
俺は吹上をにらみつけ、吹上は俺をにらみつける。
どちらかともなく火花を散らし始めたこの戦いは婦女子たちの黄色い歓声により不毛さを理解した”俺”が引き下がったのだ。
吹上と比べて俺は大人なのである。
「よぉ、双神。いつの間に先生と仲良くなったんだ?」
「別に仲良くなってねぇよ」
後ろに座ってる翔が話しかけてきたが正直うっとおしく感じた。
別にあいつとは仲良くなっていない。
苦手な奴から気に食わないやつになったぐらいだ。
そして氷上は俺が異常性癖者であるような批判的な眼をやめろ。
「俺はあいつのことが嫌いだし、多分あいつもそうだろ」
「あいつとか先生に使っちゃっていいのかな?」
ニヤニヤすんな。
なんでそんなにうれしそうなんだよ。
「おい、先生。体育館裏来いや。すべての決着をつけようぜ?」
「すでに決着はついてると思うがいいだろう。受けて立ってやるよ」
俺の意図を察してくれたのか、正体も分かった以上隠すこともないのか逃げずに応じた。
「何々? 決闘!?」
「現代でそんなことする奴初めて見たぜ」
「あっ、でも結構いるって聞くけど」
氷上は先ほどとは打って変わって目を輝かせてるし、そんなに決闘って言葉が良いのか……。
いや、もう何も考えまい。
先ほどからのクラスメイトの反応に吹上も顔をひきつらせていた。
その気持ちはよく分かる。
というより同一人物なのだから思っていることも同じなんだろう。
こいつと同一人物なんて事実すごいいやだが。
「次元、立会人頼むわ」
「ふむ、いいのじゃ」
次元が意図を察して了承してくれる。
これで話が漏れることはない。
次元に迷惑をかけるのは嫌だが仕方がない。
知ってる人が少なければ少ないほど俺も吹上も助かるだろう。
「んじゃ、授業を再開するぞ」
放したいことは山ほどあるが後にいくらでも時間があるからそっちでしようと思う。
氷上が面白そうだから混ぜろと目で語ってくるが無視だ。
というよりいつから俺は氷上の言いたいことが目で分かるようになったんだ?
すべては放課後。
体育館裏ですべての決着がつく。
今までの上辺だけじゃない本気の言葉で。




