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異世界トリップしても俺TUEEEなんて夢のまた夢でした  作者: 棘田 清棘
異世界トリップしても平穏な時なんてありませんでした
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演技だった態度

 夜になり、戸崎さんは帰っていた。

 そして翼ちゃんと連絡先を交換して一日も経っていないその日の出来事だった。

 翼ちゃんから早速電話がかかってきた。


『お兄さんすっか!? 大変なんすよ!』


 電話に出たとたんに焦っているのが電話越しでも分かるほどあわてていた。

 会って一日も立っていないがここまで焦るような人には見えなかったのだが何かあったんだろうか?


「おちつけ、どうした?」


 だからこそ端的に、冷静に、短く答えを聞き出そうとする。

 自室で小説を読んでるだろう次元にもノックして呼び出そうとする。


『那美っちが、那美っちが大変なんっすよ』


 錯乱していてよく分からなかったがまとめるとこういうことらしい。

 那美のいる寮から帰ってきてないのでどこにいるか知らないか? と電話がかかってきたらしい。

 そして翼ちゃんも那美の場所が分からなかったので翼ちゃんからも那美に電話してみそうである。

 どうやら那美は俺の危険だけどあてがあるという言葉で誘拐されたのではないかと推測、そして情報を求めて夜の良くない者が集まると言われてる場所を回っていたらしい。

 それで家に戻るように翼ちゃんが説得中に突然電話が落ちる音と共に反応がなくなったらしい。


 って全て俺が原因じゃないか!

 すべて那美の演技だったんだ。

 おそらくは俺が心当たりがあるって聞いた瞬間から演技をし、素直に言いうことを聞くふりをしてこうしてこの世界の俺を探すつもりだったのだろう。

 俺が、俺が学校であんなことを言わなければこんな危険なことをするはずなかったのに!


 俺は次元を呼ぼうとしたのも忘れて外に飛び出していた。

 そして出た瞬間に見えた張り紙、それが怒りや焦りで埋め尽くされていた思考がクリアになっていく。

 これが怒りが頂点を超えて逆に冷静になるってことか?


『とりあえず先生たちにもこのまま連絡を取るっす!」


「あぁ、頼む。それじゃ切るぞ」


 そうして携帯を切る。

 那美の場所は目の前の張り紙に書かれていた。



【妹は預かった

 返してほしければここから南に1kmほど先にある工場跡まで来い

 あくまでも一人だ

 次元雛や他の連中がいるのを確認したらすぐに妹を殺す

                              聖剣&魔銃兄妹】



 舐めた真似を……。

 お望み通り一人で行ってやろうじゃねぇか……。


 俺は張り紙をはぎ取るとそのまま走り出す。

 まだ手に持っていたスマホで方角を確認し、走り出した。


 全力だ。

 一秒でも早く那美を助け出さねばならない。

 そして助け出すにも3人相手なら武器が必要だ。

 俺は空気中の水分を全力疾走をしながら集める。

 なるべく多く、そしてなるべく早く。


 そして10分ぐらいだろうか?

 目的の工場跡にたどり着く。


「よぉ、まってたぜ?」


「外じゃ霧島が見守ってるから仲間が来た瞬間にお前の妹は分かってるよな?」


 聖剣使い、魔銃使いが交互に言う。

 魔銃使いの野郎は那美に拳銃を突きつけ、聖剣使いはその横で校長に居られた剣とはまた別の剣を持ちながら……。

 あの姿を消す奴の姿が見当たらない。

 姿を消してるのか、奴らが言った霧島ってやつが姿を消す奴なのか。

 どちらか分からないがとりあえず悪い方に考えていた方が良いだろう。

 那美は気絶させられてるのか、先ほどからピクリとも動いてなかった。


「さてと、さっさとやられてくんねぇかな? あの爺もいねぇし、さっさと死んでくれるとありがたいんだけど?」


「まぁ、せっかく一人で来てくれたことだし妹ちゃんは解放してあげるからさ」


 そうやって突きつけた銃を放し、那美を放り投げるように解放する。

 そのままでは頭を打ちかねないので俺はあわてて空気操作エアーを発動し、できるだけ衝撃を和らげようとする。

 しかし敵の目の前でそんなことは愚の骨頂。

 魔銃使いがこちらに銃を向け銃を放つ。

 俺には、というより人間にはマンガみたいに銃弾を受けとめたり、避けたりできるはずもない。

 銃弾は俺の右肩を打ち抜き、その衝撃で吹き飛ばされた。

 そして痛みで集中力が途切れ、今まで維持していた水球が一気に破裂する。

 制御の失った水球は様々な場所へ衝撃波を放ち、最も近くにいた俺自身にも衝撃波が来て、そのまま吹き飛ばされる。


「ツぅ……」


 起き上がろうとしたが右手が動かず、起きるのにも時間がかかった。


「てめぇーずいぶん余裕そうだな?」


 せめてもの抵抗。

 俺自身もだいぶ余裕があるように見せ、前と同じように銃を湿気らせるため時間を稼ごうとする。

 しかし同じ手が二度も通じるはずもなく、起き上がるのと同時に左手も打ち抜かれまたしても転倒する。


「おっ、まだ撃てるようだな。よかった、よかった」


 確実に相手は遊んでいた。

 殺そうと思えばいつでも殺せるはずだし、わざわざ立つのを待つ必要もない。

 それは逆恨みからか、それともただ趣味なのかは分からないが俺にはどちらも絶望的で関係なかった。


 ゆっくりと、ゆっくりと聖剣使いが近づいてくる。

 俺はあわてて立とうとするが両手が使い物にならないので腹筋と足の力のみで起きるしかなく、何度も転んだ。

 そして何度目かの店頭の時、頭に衝撃が来る。

 頭を上げようとするも上から抑えられて動けなかった。

 じろりと視線だけ向ければ片足だけ見える。

 おそらくは踏みつけられてるんだろう。


 両手の痛み、頭への痛み、今すぐ泣き叫ばないのは怒りのおかげだった。

 思考をフル回転させる。

 使えるのは能力と両足のみ。

 状況は絶望的、敵の能力は銃を撃てばすごい威力にできる。

 剣の切れ味を上げる何かってことしかわからない。

 さらに仲間が透明になって潜んでいる可能性もあった。

 状況は絶望的。

 だが那美の命がかかっている以上諦めるわけには行かなかった。

 痛みで意識が飛びそうだ。怒りでつなぎ留める。

 血が流れて意識が遠のきそうだ。ちょうどいい。頭から血を抜き、冷静になるにはぴったりだ。

 怒りで我を忘れそうだ。それでもいい。那美を助けられるのなら。


 俺は必死に能力を発動させる。

 強烈な痛みでイメージなどまともにできるとも思えないがそれでもいい。

 なるべく気づかれないように、こっそりと水を集める。


 俺の頭をふj見つけていい気になってられるのも今のうちだ。

 偽聖剣、魔銃兄妹よ、覚悟してろよ……。

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