色々な考え
「そうですか、分かりました。私としても凪を探してくれる人が増えるのは嬉しいので歓迎します」
「よろしく頼むよ」
「お願いします」
俺と那美短く言葉をかわす。
なんか妹と同じ見た目の同じ性格の子が丁寧語を使ってくるのは違和感があるが仕方が無いだろう。
言わば俺たちは初対面と言っても大差ない状態だから。
那美を知っているのも自分の世界の那美でこの世界の那美のことはよく知らない。
「あぁ、なんかイライラするっすよ! なんで兄妹なのによそよそしいんっすか? 異世界って言っても似たような生活してたんなら別にもっと距離近づいていいじゃないっすか!」
俺たちのよそよそしいやり取りに嫌気がさしたのか翼ちゃんがそう言ってきた。
「でも翼ちゃん……。見た目や性格が同じでも別人なんだよ?」
「だったら普通に友達として、先輩として近づけばいいじゃないっすか」
「だがなぁ、翼ちゃん……」
それ以上先は言えなかった。
これ以上近づけばこの世界の那美を俺の世界の那美の代わりとして見そうなんて言ったら何かが終わる気がした。
表情を見る限り那美も同じ事を考えているのだろう。
なんとなくそれが分かった。
「だがも糞もないっすよ! 何を恐れてんっすか、当事者じゃないので気持ちなんか分からないっすけどお互いに近づきたそうにしてるのは分かるっすよ」
その言葉はまさしく図星だった。
だが、それを認めるわけにはいかない。
「メールアドレスの一つぐらい交換すればいいじゃないっすか。なにも兄妹やれって言ってるわけじゃないっすから」
「翼ちゃん! もうやめてよ。私はそんなの望んでないから! もうお話は終わりましたよね? では失礼します」
那美はそう言うと、怒ったように去っていた。
「あちゃー急ぎすぎったっすかね?」
翼ちゃんが頭を抱える。
しかしその表情は急ぎすぎたことに後悔はしてもその行動自体は後悔していないようだった。
「すまぬ……」
ここで今まで口を開かなかった次元が口を開く。
翼ちゃんと違い、その表情には後悔しかなかった。
「はぁ、何回も言ってるだろ? 別に事故だから仕方がない。反省はしなきゃだめだろうけどいつまでも引きずるなって」
何回も言った言葉。
しかしそれを聞こうとも次元の気持ちは晴れる様子はなかった。
「で、翼ちゃん。那美は帰ったけどどうする? 今日はもう解散にすっか?」
「そうっすね。とりあえず私たちだけでもメールアドレス交換しましょっか。那美のお兄さんの情報を知るたびに中等部に来てもらうわけにはいかないっすから」
そういえばそうだった。
この世界の俺を探し出した後のことは何にも考えてなかった。
「はぁ、お兄さんも目の前のことだけで先を考えてないタイプっすか……」
実際にそのとおりであって何にも言い返せなかった……。
雛の家の前には人が立っていた。
それは俺も知っている人物であったが、どうして家の前にいるのかはわからなかった。
「雛、遅いわよ。待ちくたびれたわ」
そうやって出迎えたのは戸崎さんだった。
現在は次元のリビングで戸崎さんの話を聞いている所である。
「言いにくいんだけど凪君を襲った3人を逃がしっちゃったみたいなのよ。これは完全に警察のミスね。それで雛がいるから怒らせないように親友である私がまったく違う役職のために来たっていうわけよ」
戸崎さんは投げやりに言った。
めんどくさそうに、そして上層部にイラついてるように感じた。
「SSSランクが規格外の力を持つからって腫物を触るようにしなくってもいいじゃないよねぇ」
今までこの世界に疎かったが今までの言葉を思い出す。
ここは政府が用意した場所であり、毎月かなりの金額を政府から貰っていること、翔がSSSランクだからってだけで注意するように言ってきたこと。吹上先生など一部の教師を除く、ほとんどの教師が次元に必要最低限しか話しかけなかったことを……。
今まで俺は強い力をつなぎ留めるだけとしか考えてなかったが、ご機嫌取りの一面もあったというわけか……。
まったく、嫌になる。
「そんでもって凪君はまた襲われる可能性が高いからあまり一人で出歩かないでね。なるべくなら雛の傍にいなさい」
「わざわざありがとうございます」
「いいのよ、このおかげで今日はもうオフになったんだから。それより本当に気を付けてね、この手のケースは同じ人を狙うって言うし気をつけなさい」
それに奴らの目的は俺だ。
前回は校長の助けがあったから無事に生きてるが、それがなかったらどうなってたか分からない。
次元が居る時は襲ってこないって言ってた気もするし、ここは素直に言葉に従うことにしよう。
「そういえば情報はどのぐらい聞き出せたんですか?」
「それが移動中だったからまったくと言っていいほどにわからないのよねぇ」
「そうですか……」
自信満々に那美にあてがあるといってこのざまか……。
いや、おそらくはまた襲ってくるためにこの町に潜んでる可能性が高い。
ならばまだ聞けるチャンスはあるだろう。
日本の警察が無能ではないところを見せてもらうってことにするか。
その後、戸崎さんは普通に次元と雑談して帰った。
もしかしたら次元が元気ないのを見抜いたのかもしれない。
やっぱり大人には敵わないなと思った。




