うちあげる決意
吹上先生から呼び止められた翌日。
金曜日ということもあり普通に学校に通っていた。
吹上先生に話を聞こうにも授業中や人の多いときに聞くわけにもいかず、人の少ない様な時にはすぐにどこかに行ってしまうためまともに話をすることができなかった。
そして本日も授業が終わり吹上先生も捕まらなかったのでもう一つの予定を済ませることにした。
そのために現在は次元を連れ、中等部に向かっている途中である。
中等部は高等部から見て南側にあり、一階の渡り廊下でつながっているがほとんど利用されていない。
それでも中等部の人が高等部に行ったり、高等部の人が中等部に行くことは別に禁止はされていないのである。
2年は10クラスあり、目的の人物がどこの教室かはわからない。
だから近くにいたショートカットの女の子に聞くことにした。
「双神那美って子がどのクラスか知らない?」
「那美っちすか? それなら同じクラスっすよ」
これは運がいい。
400人近くいる中でいきなり那美と同じクラスの人がいるなんて。
「それより怪我は大丈夫っすか? 腕が絆創膏だらけですごいことになってますけど……」
「うん? そんなに酷いかこれ? まぁだ以上だから気にするな。
人に会うたびに心配されてるような気がするがそんなに酷いのだろうか?
「大丈夫ならそれでいいっすけど……。それで凪先輩でいいっすか?」
「!? なんで名前を知ってるの?」
「那美っちから大まかに事情を聴いてますから」
「!」
それはまずいかもしれない。
あまりにもこの世界の住人じゃないことが広がると、その情報を何か悪用されたり、戸籍の偽造などがばれたりする可能性がある。
「安心してください。那美っちは親友の私には話してくれましたけど他の誰にも言ってないみたいっすから。というよりこんな話は誰に話しても信じてもらえないでしょうし、そんなへまするほど那美っちは頭悪くありませんから」
「そっか……」
別に隠してるわけではないがこの子の言うとおり異世界から来たなんて言うのはこの世界であってもおかしいことだ。
なんでも次元が現れるまでは異世界など存在しない。なんていう仮説も支持されていたのだから。
次元の存在で異世界が存在すると証明はされたものの、それは次元が生み出した空間なのか、本当の異世界なのかという推測が色々飛び交っているほどだ。
よって異世界など宇宙人並みに存在してないという考え方も多く存在していた。
なので異世界から来たという話をしても信じてもらえないか、頭が大丈夫か? という顔されるのが落ちだろう。
「別に那美っちの下に案内してもいいっすけど私も話し合いに参加させてもらいますので」
「えっとそれは……」
俺は戸惑いながら次元を見る。
次元も戸惑っているようで困ったような顔をしていた。
「別に邪魔はしないから大丈夫っすよ。それに皆さん当事者見たいっすから第三者視点もあった方が良いっすよ」
確かに本人同士だと熱くなってまともな話ができなくなる可能性がある。
すでに話の概要も知っているようで特に反論も出なかったので一緒に話を聞くことを許可した。
「ありがとうございます。あっ、まだ名前言ってませんでしたね。坂田翼って言います。お二人の名前はうかがっているので大丈夫っすよ」
翼ちゃんは那美を呼んでくるといって教室の中に消えた。
そしてすぐに那美を連れて戻ってきた。
「ここで話すような内容でもないので場所変えましょっか」
そして翼ちゃんに導かれるように別の場所に移動することになった。
「ここら辺でいいっすかね?」
そういってやってきたのは高等部の横辺りにある家一軒ぐらいなら入りそうな広場だった。
翼ちゃんの話によるとここには校舎を建てる際に休憩室としてプレハブがあったらしいが、工事の終了と共に撤去されたようだ。
その後は倉庫を建てる予定だったものも道路から結構離れていて利便性が悪いと放置されたままになっているそうだ。
どうして翼ちゃんがそんなこと知っているかというとこの学校が経った当時からいる先生に聞いたそうだ。
「んじゃ、確認と復習がてら今までの話をまとめると2年ほど前から那美っちのお兄さんが行方不明。それで情報を求めて遠路はるばるお兄さんの情報を求めてこの学校にやってきたと、そして少し前に凪先輩の情報を聞いて行方不明のお兄さんと同姓同名、学年も噂での容姿も同じでもしかしたら行方不明になったお兄さんかもって思って会いに行って自分の目で見ても行方不明となったお兄さんと同じ見た目でこれぞ探してたお兄ちゃんかもって思ったら平行世界のお兄さんだったっと……」
「うん……」
「で、お兄さんの方は大して知らないっすけど次元雛先輩のSSSランクの次元操作で誤ってこの世界に来てしまったと。それで平行世界だと知らずにこの世界で生活してたら妹とそっくりの女の子が自分を探してやってきたと……」
「まぁ、大雑把にはそんな感じだな」
もっと苦労とかもあるが今回は必要ないし、ただの言い訳だ。
それに苦労したからなんだというのだ?
そんなこと那美には関係ないし、それなら俺にも関係ない。
「はぁ……。大筋だけ聞いただけっすけど両方とも小説や漫画にでもできそうな話っすね……」
疲れたように、溜息を吐く。
実際に異世界トリップなど普通はしないし、兄が行方不明になり、ようやく手がかりを見つけたら異世界の男だったなどもあり得ないような話だ。
「で、お兄さんの方が今日那美っちに話があると……」
「あぁ、って言っても大した話じゃない。俺は元の世界に帰って元の世界の那美に会うことにした。って言ってもまだ夢物語だけどな……」
「良かったです。多分あなたの世界の私も不安になってると思うので早めに帰れるように頑張ってください。それとあなたの世界の私によろしく言っておいてください」
「あぁ、それと那美の、この世界の俺探しに協力させてくれ」
もちろん探すからには手掛かりはある。
前襲ってきた連中。
そいつらが俺をもう一度連れ戻す的な発言をしていた。
この世界のおれは一度誘拐され、何とか逃げ出すことに成功したのだろう。
そして現在は警察に3人が捕まっているので少しは情報を聞き出せるはずだ。
当事者ということを考えれば全部とはいかなくてもある程度情報を教えてもらえると思う。
「で、でも……なんも手掛かりがないんですよ? どうやって探すんですか?」
「なに、手掛かりはあるさ。ちょっと危険だから教えられないけどこの世界の俺のしりぬぐいは俺がするよ」




