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そしてその翌日
朝日が昇ると、乙女はまず柳の所に水を運びます。それから、柳の葉が今日も青々しているか枝が折れたりしてないか確認します。そして少しでも早く目を覚まさないかと柳に話しかけたりします。
すると、どこからともなく美しい竪琴の音色が響いてきました。そこで柳ばかり見つめていた乙女は我に返ったように辺りを見渡しました。振り返ると竪琴を弾いていたのは太陽です。ぽかぽかと暖かくなるような穏やかな音色です。乙女は太陽の竪琴に耳を傾けました。すると、突然音色が止みました。太陽が乙女をみつけて竪琴を奏でるのを止めたのです。
『こんにちは、お嬢さん。今日も良い天気ですね』
『ご、ごめんなさい。素敵な演奏を邪魔してしまって』
『いえいえ、深い眠りについている柳さんが目を覚ますのに丁度良いんじゃないかと持って演奏してみたんですけど、うるさくないですか?』
『とても素敵な音色です。柳さんもきっと気に入りますわ』
太陽はキラキラと顔を輝かせて答えます。
『そうですか。それなら僕もうれしいです』
『竪琴がお上手なんですね。私はとてもそんな風に楽器を奏でる事ができません』
『コツを掴んだら簡単ですよ。よろしかったら教えてあげましょうか』
『そんな私にはとても無理です。聞いているだけで十分です』
『そうですか。それならもう少し弾くので是非ここに座って聞いていて下さい』
乙女が横に座ると、太陽が再び竪琴を奏で始めました。乙女はうっとり聞いています。
すると、竪琴の音色に合わせて笛の音が聞こえてきました。乙女は辺りを見渡しました。笛を吹いていたのは北風です。どこまでも澄んだ美しい音色です。
それから暫く竪琴と笛の合奏が続きました。乙女はうっとり目を閉じて聞いていました。
すると温かい手が乙女の手を包みました。太陽でした。
『お嬢さん、良かったら僕と踊ってくれませんか』
乙女は断ろうとしましたが、太陽が乙女の手を包み込んで離しません。
『む、無理です。踊った事はありません』
『大丈夫、俺に任せて』
それから、石像のように固まっている乙女の腰に手を回して、自分の方に引き寄せました。
それから、ちょっと面白くなさろうな顔をしている北風にむかって言いました。
『北風さん、始めは少しゆっくりした曲をお願いします』
そしてキラキラした笑顔を乙女に向けて言いました。
『大丈夫、音楽に合わせて体を左右に揺らすだけです』
北風は乙女に聞こえない小さい舌打ちを打つと、笛を吹きだしました。
そして乙女は断る術を見出せないまま太陽と踊り出しました。始めはゆっくりと。それからだんだん調子が出てくると曲はテンポが速くなり軽いリズムの曲に変わりました。
『上手上手。その調子』
と太陽が乙女を褒めながら優しくリードします。
始めは硬い表情をしていた乙女も最後には楽しそうにくるくる踊って笑っていました。
『楽しい』
ニコニコしながら乙女が息を弾ませています。
そこで、太陽はキラキラした笑顔で言いました。
『お礼は軽く頬にキスしてくれるだけで構わないよ』
そこで、乙女はまず自分の手を引いている太陽の頬にキスをして、それから笛を演奏していた北風の頬にキスをしました。
太陽はますます顔を輝かせ、北風は明らかにがっかりした顔をしました。
乙女は不思議そう聞き返しました。
『あ、あの、どうかしたのですか?』
北風と太陽は声をそろえて答えます。
『なんでもない!なんでもない!』
『でも、北風さんはなんでもないという顔ではありませんけど?』
それでも北風と太陽は声をそろえて答えます。
『なんでもない!なんでもない!』
『私、知ってるわ!』
飛んできた南星が言いました。
『お兄ちゃんね~、北風さんと賭けをしたのよ。お姉ちゃんがお兄ちゃんと北風さんのどっちを好きになってどっちが先にお姉ちゃんにキスしてもらえるかって』
それを聞いた乙女は驚きのあまり目を見開いて北風と太陽を交互に見つめました。
それから大粒の涙を流して泣き出しました。
『ひどいわ!お友だちだと思っていたのに!』
北風と太陽は慌てて謝ったり宥めたりしました。しかし乙女は泣き止みません。
そのうち涙で小さな泉が出来たかと思うと、岩場の湧き出た泉に吸収されてしまいました。




