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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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8/59

8-お前は、

「芯に。クラブで」

「……だから、妹にキスすんなって」

「たら、あいつ何て?」

「…いや…」

「なに?」

「俺、いつの間にか殴ってたっていうか」

「は~い~?!」

「だって、あの状況だったら誰だってよぉ!」

「あの状況って、なんだよ」

「あんな薄暗いところで、顔なんか近づけやがって」

「ばかか! クラブだろ? 話するのに顔ぐらい近づけるだろ?」

「だって相手は芯だし!!」

「!!」

一瞬、ルゥの瞳が猫のように細長くなった。

「…おい、アキラ」

「な、なんだよ」

「お前、芯に何言った?」

「だからぁー!! さっき言ったろ?! 妹にキスすんなって」

「殴った後だよ」

「っ。」

慌てて視線をそらし、アキラは唇の裏を噛み締めた。

「自分がなんつったか、覚えてんだろ?」

「…ん、まぁ」

追い詰められたアキラが、ガリガリガリと頭を掻きむしった。

「でも!!! つーかさ!! ホントの事だろ?!」

「何が?」

「あいつ、女癖悪ぃし、芯みたいな鬼畜は何すっか分かんねぇんだよ!!」

「!?!」

「だろ?! 俺が勘違いして当然なんだって!」

「それを…、アイツに、言った…」

「言った!!」

やぶれかぶれに叫ぶアキラを前に、ふぅ~~~とルゥが細い息を床に落とす。

「な、なんだよ…」

「芯に、どこを殴られたんだっけ?」

「左の頬だよ! ここ!! ここんとこ、思いっきり!」


ドンっ!!!

「ウッ!!」

うずくまるアキラの頭上で、ルゥが抑えた声を出す。

「大丈夫。腹なら痣が出来ても、テレビには映んない」

どうにか息を吸い込んだアキラが、顔を持ち上げる。

「な…なにすんだよ。ルゥ!」

「アイツが女癖悪い? お前、それ誰に聞いたわけ?」

「そんなん有名だろ? みんなそう言ってんし」

「みんな?」

「マスコミとかマネージャーとか」

「マネージャーってまさか、中野のゲス野郎のことじゃねぇよな?」

「ぁ…で、でも、、中野が…」

「芯には?…女関係の話…当然!アイツにっ!!」

いつも冷静なルゥの声がとがる。

「アイツに直(ちょく)で聞いたことあんだよなっ!? あ?!」

怒りで段々声が大きくなる。

アキラは、ルゥの激昂に圧倒され、口ごもった。

「…ね、ねぇよ…」

「無い?! 納得するまで、相手が誰だろうと質問しまくるお前が? 大物俳優の橋本卓に突っ込んで聞いてたじゃねぇか!」

アキラは、考えないようにしていた真実が脳裏をよぎり、おずおずと尋ねた。

「てことは、やっぱ違うっつーことか?」

「俺に聞くな」

ルゥが唇を噛みしめ、リビングルームの扉を見つめた。

この合宿所に到着してから、まだ芯の顔を見ていない。

「あいつ…メンバーには信じて欲しかったろうな…」

「!!」

一回り小さくなったアキラが、すがるようにルゥを見た。

「俺って、もしかして、すんげぇ、、バカだったんかな?」

「違ぇよ、お前は…


 最低だ」


「!!」


へたり込むアキラに、扉に手をかけたルゥが追い討ちをかける。


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