8-お前は、
「芯に。クラブで」
「……だから、妹にキスすんなって」
「たら、あいつ何て?」
「…いや…」
「なに?」
「俺、いつの間にか殴ってたっていうか」
「は~い~?!」
「だって、あの状況だったら誰だってよぉ!」
「あの状況って、なんだよ」
「あんな薄暗いところで、顔なんか近づけやがって」
「ばかか! クラブだろ? 話するのに顔ぐらい近づけるだろ?」
「だって相手は芯だし!!」
「!!」
一瞬、ルゥの瞳が猫のように細長くなった。
「…おい、アキラ」
「な、なんだよ」
「お前、芯に何言った?」
「だからぁー!! さっき言ったろ?! 妹にキスすんなって」
「殴った後だよ」
「っ。」
慌てて視線をそらし、アキラは唇の裏を噛み締めた。
「自分がなんつったか、覚えてんだろ?」
「…ん、まぁ」
追い詰められたアキラが、ガリガリガリと頭を掻きむしった。
「でも!!! つーかさ!! ホントの事だろ?!」
「何が?」
「あいつ、女癖悪ぃし、芯みたいな鬼畜は何すっか分かんねぇんだよ!!」
「!?!」
「だろ?! 俺が勘違いして当然なんだって!」
「それを…、アイツに、言った…」
「言った!!」
やぶれかぶれに叫ぶアキラを前に、ふぅ~~~とルゥが細い息を床に落とす。
「な、なんだよ…」
「芯に、どこを殴られたんだっけ?」
「左の頬だよ! ここ!! ここんとこ、思いっきり!」
ドンっ!!!
「ウッ!!」
うずくまるアキラの頭上で、ルゥが抑えた声を出す。
「大丈夫。腹なら痣が出来ても、テレビには映んない」
どうにか息を吸い込んだアキラが、顔を持ち上げる。
「な…なにすんだよ。ルゥ!」
「アイツが女癖悪い? お前、それ誰に聞いたわけ?」
「そんなん有名だろ? みんなそう言ってんし」
「みんな?」
「マスコミとかマネージャーとか」
「マネージャーってまさか、中野のゲス野郎のことじゃねぇよな?」
「ぁ…で、でも、、中野が…」
「芯には?…女関係の話…当然!アイツにっ!!」
いつも冷静なルゥの声がとがる。
「アイツに直で聞いたことあんだよなっ!? あ?!」
怒りで段々声が大きくなる。
アキラは、ルゥの激昂に圧倒され、口ごもった。
「…ね、ねぇよ…」
「無い?! 納得するまで、相手が誰だろうと質問しまくるお前が? 大物俳優の橋本卓に突っ込んで聞いてたじゃねぇか!」
アキラは、考えないようにしていた真実が脳裏をよぎり、おずおずと尋ねた。
「てことは、やっぱ違うっつーことか?」
「俺に聞くな」
ルゥが唇を噛みしめ、リビングルームの扉を見つめた。
この合宿所に到着してから、まだ芯の顔を見ていない。
「あいつ…メンバーには信じて欲しかったろうな…」
「!!」
一回り小さくなったアキラが、すがるようにルゥを見た。
「俺って、もしかして、すんげぇ、、バカだったんかな?」
「違ぇよ、お前は…
最低だ」
「!!」
へたり込むアキラに、扉に手をかけたルゥが追い討ちをかける。




