6-判決
「この前のクラブの件だろ? なら、俺とアキラだけで良いはずだ! 3ヶ月でも1年でも、好きなだけ閉じ込めときゃいい。だが、こいつらは」
「芹沢、いいかげんにしろ!!! もう決まった事だ!」
「おい、おっさん、何か言えよ!」
「せりっ!!社長に向かってなんて口をっ」
地を這う青い炎のような芯の怒りを、社長は無表情で受け流している。
「まぁさ、軟禁生活はイイとして、」と、ルゥは壁にもたれ掛かって腕を組みなおし、
「でも、3ヶ月はちょっと長すぎじゃない?」
片目を細めた。
「3ヶ月以上だ! 期間は決まっていないと言っただろ? ほら! こっちに来い、芹沢!」
詰め寄る芯を社長から遠ざけながら、山内が言った。
芯は近くにあった椅子を蹴り倒した。
シャイなイメージの強かった芯の意外な激昂に、麗叶は圧倒された。
あまりの迫力にオロオロしていたノリが「あ、あのさ」と、芯とアキラを必死に庇おうとする。
「2人の喧嘩なんて毎度おなじみだよ。何も悪い事なんてしてないし」
ふぅ~と、わざと大きくため息をつき、社長は表情を硬くした。
「アイドルで、模範となるべきあなた達が、未成年をクラブに連れて行って良い、とでも?」
「でもね、社長さん! 妹ちゃんはお酒飲んでないよ。芯もアキラも誕生日を祝ってあげたかっただけで」
「未成年の誕生日で『クラブ』へ行く必要があったんですか?」
「場所はクラブだけどね、どっかのセレブのプライベートパーティらしいって」
「夜の『クラブ』で、よりによって殴り合い。その結果、周囲に自分達の存在を知らしめてしまいました」
「麻薬常習者がいるような場所で、だぞ!」
「山内さん、芯たちに限って麻薬なんてあるわけないよ」
「当然です!!!」
社長の鋭い怒号にビクッと体を縮ませたノリに
「いいですか?ノリヒト。世間が持つ、『クラブ』に対するイメージを、侮ってはいけません」
「……は、…ぃ。ごめん、、なさい」
「お前が謝る必要ねぇ! おっさん!! ノリは関係ねぇだろ! 怒鳴んな!」
「芯、もういいって!!」
ルゥが、今にも殴りかかりそうな芯を、羽交い絞めにする。
「社長殴ったら、軟禁だけじゃ済まなくなる」
「……っ…」
そんな芯とルゥを前に、細い目をますます細め、社長が首を振った。
「今まで私は、君たちを甘やかし過ぎたようです。今回の事が発端ですが、これまでも色々ありましたよね。来栖もノリヒトも思い当たる悪行があるはずです。なにより、」
社長は、鍵をかけるように一人ひとりに視線を置いていく。
「積み重ねなんです。今までの行いが良ければ、こんな大事には至たらなかったはずですよ」
4人の心に、何かがドンっとぶつかった。
「残念だがな、マスコミも世間も、お前らが問題を起こしそうだと思ってんだよ」
と、山内がダメ押しをした。
「……」
「。。。」
「、、、」
「・・・」
「だから、根も葉もない噂も、真実になっちまう」
普段は大声の山内が、静かに語りかけてくる。それがますます不気味で、4人は徐々に追い詰められていった。
暗い沈黙。
「さて、、、と。」社長が息をつく。
「明朝8時、手荷物だけ持って事務所にいらっしゃい」
「明日?! ずいぶん急な話だね」
ルゥの疑問に、山内が低く答えた。
「中野が行方不明だ。奴がどう出るか、分からんからな」
麗叶の胃が、またキリキリと痛んだ。
社長はニッコリと微笑む。
「中野くんの件はすぐに手を打ちますから、心配は要りません。
しかし、念には念をいれましょう。この合宿は『君たちを守るもの』でもあるんですよ」
「しばらく大人しくしてろよ! 嵐が過ぎ去るのを待とう。な?!!」
山内が力強くそういうと、空気が少しだけ和んだ。
少しだけ和やかな空気が流れ始めていたのに、
続く山内の言葉に、麗叶は耳を疑った。
「必要なものは一通り揃っているから荷物は最低限だ。どうしても運びたいもんは申告しろ。青木、お前も荷物まとめとけ」
「え?!」麗叶は目を丸くした。
合宿に同行するのは、別の男性社員と聞いていた。
「私も行くんですか?!!」
「も、じゃない。お前が、だ」
「?!」
「なんだ、青木。問題ないだろ?!」
「でも、部長! 合宿は」
「お前に異論は無いはずだ!!」
「女ひとり入った合宿生活を、もしマスコミが知ったら」
「細心の注意を払え! それで済む話だ!」
こういう時、必要な質問ですら怒鳴られると、麗叶は経験から知っている。それでも聞かないわけにはいかない。
「ですが、彼らと常に行動するとなると、マネージメントに支障をきたしませんか? 営業周りだってあるし、スケジューリングや会議だって。仕事はどう回します?先方との打合せで、別行動は必須です!」
「しばらくは、チーフマネージャーの俺がまわす。お前は、こいつらの見張りを最優先にしろ!」
「見張りって…」
そう呟き、ルゥが口の端を片方だけ歪めて嗤う。
(悪名高きSeven C'sと共同生活を?…私に出来る?)
「フォローはする。安心しろ」
と、山内は麗叶の不安を察し、父親のように力強く言い切った。
「青木君も、この合宿で成長できるんじゃないですか? 優秀な青木君のことです。行方不明になる直前の中野君とのやり取りを思い返し、反省する点を、見つけたはずですからね。
た、く、さ、ん。」
社長は机をコツコツと叩いた。
「あ…」
『これは、罰です』『しっかりと、反省、なさい』
(そうか。この合宿は、私への罰でもあるんだ…)
麗叶は覚悟を決めた。
「かしこまりました。同行いたします」
重い足取りで扉へ向かって歩き出す背中へ
「芯、アキラ。君たちには言っておくことがあります」
もし楽しんでいただけましたら、
ブックマークや評価(★)、感想やリアクションなどで応援いただけると
執筆の大きな励みになります。
これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!




