↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/59

52-呪縛

麗叶は人形のように、ダランと身体を預けている。

「圭ちゃん、ど、どういう事か、私…」

「俺が、勝手に好きになったんだ。勝手に…。俺にとって麗ちゃんは…。ごめんな、麗ちゃん…ごめん…」

圭吾の声が涙を含んでいる。

「で、でも…圭ちゃんは私の」

「分かってる! 分かってた!!」

圭吾の肩が上下する。絞り出した言葉。

「でも…姉じゃなかったんだ…俺には…」


パラパラと水滴がふる。海の水を風が運ぶ。


「今だけ、今だけ、こうしててくれ。今だけでいい…」

圭吾の腕に力が入る。

「麗叶、ずっと愛してた…」

圭吾は泣いた。肩を揺らし、泣きながら麗叶を抱きしめた。

麗叶は息も忘れて。。。


海がたんわりと、麗叶のふくらはぎを濡らし始めている。


「麗ちゃん。さよならじゃ」

「…」

「俺は結婚した。子供も産まれる。そう分かってても気持ちは変えられなかった。どんなに頑張っても、出来なかった…」

圭吾は震える手で麗叶の肩を握り、必死に二人の間に距離を作った。

「でもな?」

麗叶の目の前で、見たことのない人物が、苦悩している。

「男じゃけぇね。家庭を守らんと、いけん。妻と子供を一番に大切にせんと…」

圭吾は泣きながら微笑んだ。

「もう…姉と弟には…戻れんわ…」


麗叶の涙は、風に飛ばされた。


「知られなかったら…俺が気持ち、、隠せてたら…」

圭吾は鳴咽した。

「もう二度と、麗ちゃんに会わん………会えん…」


圭吾は麗叶の頬を両手でおおい、唇を近づけた…

震える唇…

思考力を失った麗叶はなすがまま、近づく圭吾を眺めた。

二つの息が触れる、瞬間

「…けい…」

「…!!…くっ」

バッと麗叶から身体を離した。

「うっうっうっ…」

ぽろぽろと、砂浜に圭吾の涙が吸い込まれていく。


圭吾は揺れる肩を抑えながら、声を絞り出した。

「麗ちゃん…元気で暮らすんで」

麗叶は動けない。言葉も出てこない。

「ほいじゃーね」

圭吾は口の端をあげた。

そして、静かに麗叶から離れ、立ち去った。


麗叶は冷たい砂の上に、座り続けている。

嵐が海を、激しく揺らしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「麗叶ぁー!! れーかぁーーーー!!」

二人を見失った芯が、汗だくで叫び続けている。

(早く見つけねぇと。取り乱して何するか分かんねぇ!)


キョロキョロと見渡しながら走っていると、ベンチでうな垂れる圭吾を見つけた。

「……」

カッカッカッカと、芯は近づき、胸ぐらを掴んだ。

「…て、めーーー!!」

泣きはらし虚ろな目の圭吾を、睨みつける。

「てめぇ、何やってんだよ!!追いかける相手が違うだろ?!麗叶は、麗叶はどこにいんだよ!!」

「君は…」

「どこにいるか、早く言えよ!!」

「広島で…」

「あいつを一人にしちゃダメなの、てめぇだって分かるだろ?!」

「おっきくなったな…」

「うるせー!!」

ガン!!

芯は圭吾を殴った。

「うっせーんだよ!!」

圭吾はヨロヨロと倒れこんだ。


「あぁそうだよ! 広島で告白して撃沈したのは俺だ! 麗叶は気付きもしねぇがな! 」

芯はもう一度、圭吾を立ち上がらせた。


「なぁ、なんで隠せなかったんだ?! 一生誰にも言うなっつっただろ?! あんたは墓まで持っていくべきだったんだ。なんでだ! おい!! なんでだよ!!」


「もしかして」

「あ?!」

「キミはまだ…麗ちゃんのこと…」

ガッシっ!!

芯は力任せに圭吾を地面に叩きつけた。

「だったら悪ぃかよ!!」

「……」

圭吾は涙に濡れた顔を持ち上げた。


「ハァハァ…」

芯は肩で息をしながら、圭吾を見下ろしている。


「なんで?」

「は?」

「きっとキミは、今は芸能人なんだろ? 芸能界なら、いっぱい出会いもあるんじゃないのか? なんで…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。