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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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50/59

50-残酷な真実

麗叶の息が、止まった。

「お互い好きなのに」

「……ルゥ」

突き刺さる言葉。ルゥから愛を奪ったのは……。


麗叶には、ルゥの鋭い視線を受け止めることしかできなかった。


「もしかして、俺に別れろって言ったから?」

「ぇ?」

「だから別れたの?」

「ね、ねぇルゥ、誰の話、してるの?」

麗叶の質問に、ルゥが質問で返す。

「まだ好きなんだろ? 芯のこと」

「!!」

(やっぱり…ルゥは、、気づいてた。)

もう、誤魔化せない。。。


「……うん……私は…好き…」

口にした自分の想いに、胸が詰まりそうになる。

「ならなんで? 」

「ルゥは……お別れしたじゃない」

顔を上げた麗叶を、ルゥはまっすぐ見つめていた。

「……」

「好きなのに」

「麗叶さん、俺さ」

「別れてと言ったのは……私よ」


ルゥはしばらく強い眼差しを向けていたが、ため息をつきながら床へ視線を落とした。

そして、ドサッと後ろのクッションに倒れこみ、天井を見上げた。


開け放たれた南国のロビーに、午前の陽射しが降り注ぐ。

穏やかな風に揺れる光が、天井にゆらゆらと紋様を描いている。


「あーあ。もし、俺が原因だって知ったら……俺、芯に殺されるね?」

そう言うと、フフッと笑った。


「ルゥは関係ない! 私の想いが…芯から奪ってしまう。夢も栄光も。だからね、私が決めた、自分で決めたことなの!」


ルゥは体を起こすと、ソファに浅く座り直した。

「それなら俺も同じ。俺が、決めたんだ。麗叶さんのせいじゃない」

「それにね。。。芯は私のこと、何とも思ってないよ。私たち、付き合ってたわけじゃ…そこには何も……なかったの」


あの夜、街灯だけが照らす公園で訊いた。

『そこに愛はなかった。そうでしょ?』

芯は答えなかった。

麗叶には、YESと聞こえた。


ルゥは一瞬目を丸くしたあと、

「ふぅ…」

仕方ない人だなと言うように目元を和らげた。

「麗叶さん、お願いだから、そんな泣きそうな顔で、笑わないでくれる?」

「……」

急いで目を伏せると、涙が、ポツンと手の甲に落ちた。

ルゥに気づかれないように、そっと手のひらで隠す。


「ねぇ、なんで芯が芸能人になったか知ってる?」

「確か、社長にスカウトされて」

「あいつがスカウトぐらいで芸能人になると思う? 本当の理由だよ」

「…?」

「聞いてみたら? ついでにあいつの気持ち、ちゃんと聞いてやってくんない?」


芯の気持ち。麗叶が怖くて聞けずにいる『気持ち』。


「麗叶さん、俺ね、別に、もう二度と恋愛できないわけじゃないし。だから、俺に遠慮とか、マジ勘弁してほしい」

普段、クールを装うルゥが、明るく饒舌になる。

「別れるんなら、俺と関係ない理由にしてよ」

立ち上がったルゥは

「俺、まだ死にたくないから」

ニヤッと笑って、去っていった。


ーーーーーーーーーーーーーー


撮影も終わり、やっと開放された彼らは、有名レストランへ向かった。

「かんぱーーい!!」

メンバーとスタッフで小規模な打上げが行われた。

料理が運ばれ、みんなが食べ始めた頃、麗叶のカバンの中で着信音が鳴る。

「ちょっと失礼します」

携帯を取り出し、席をたつ麗叶を、芯はぼんやり見上げた。


麗叶は店を出ると、街灯で明るい歩道に立ち、話し始めた。

話をさっさと終わらせて、早くみんなのところに戻りたい。


「…麗ちゃん?」

携帯電話をしまう手が止まった。

振り向くと

「圭ちゃん?!」

さっきまで自分がいた店から、圭吾が出てきた。

「なんで?」

「えっと…旅行じゃけど」

「新婚旅行? あれ? いいの? 美波さんの身体は大丈夫?」


圭吾の頬に、サッと影がさす。

「安定期、入ったけぇの」

「そっか~」

笑顔の麗叶の表情が、次の瞬間こわばった。

「し…ん」

振り返った圭吾は、芯の顔に目を留め、ふと表情を変えた。

「あれ!? 君はもしかして、あの時の…」


「なんでアンタがいるの?!!」

立ち尽くす芯を押しのけ、美波は凄まじい形相で麗叶に詰め寄り、ヒステリックに叫んだ。


「あんたたち、何やってんのよぉー!!」


あまりの剣幕に、麗叶は言葉を失った。

「こうやって、2人でコソコソ会ってたわけ!? ねぇ! そうなんでしょ?!こんな所まで付いて来て! 気持ち悪い! なんで私達をそっとしといてくれないわけ!?」


誰と勘違いしているのか、何を言われているのか、

麗叶は全く理解できない。


「あの、美波さん。私です。圭吾の姉の麗」

「血がつながってないだか何だか知んないけど、今までもずっとずっと圭吾を誘惑してきたんでしょ!?」

「美波!!」


「……ぇ?」


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