50-残酷な真実
麗叶の息が、止まった。
「お互い好きなのに」
「……ルゥ」
突き刺さる言葉。ルゥから愛を奪ったのは……。
麗叶には、ルゥの鋭い視線を受け止めることしかできなかった。
「もしかして、俺に別れろって言ったから?」
「ぇ?」
「だから別れたの?」
「ね、ねぇルゥ、誰の話、してるの?」
麗叶の質問に、ルゥが質問で返す。
「まだ好きなんだろ? 芯のこと」
「!!」
(やっぱり…ルゥは、、気づいてた。)
もう、誤魔化せない。。。
「……うん……私は…好き…」
口にした自分の想いに、胸が詰まりそうになる。
「ならなんで? 」
「ルゥは……お別れしたじゃない」
顔を上げた麗叶を、ルゥはまっすぐ見つめていた。
「……」
「好きなのに」
「麗叶さん、俺さ」
「別れてと言ったのは……私よ」
ルゥはしばらく強い眼差しを向けていたが、ため息をつきながら床へ視線を落とした。
そして、ドサッと後ろのクッションに倒れこみ、天井を見上げた。
開け放たれた南国のロビーに、午前の陽射しが降り注ぐ。
穏やかな風に揺れる光が、天井にゆらゆらと紋様を描いている。
「あーあ。もし、俺が原因だって知ったら……俺、芯に殺されるね?」
そう言うと、フフッと笑った。
「ルゥは関係ない! 私の想いが…芯から奪ってしまう。夢も栄光も。だからね、私が決めた、自分で決めたことなの!」
ルゥは体を起こすと、ソファに浅く座り直した。
「それなら俺も同じ。俺が、決めたんだ。麗叶さんのせいじゃない」
「それにね。。。芯は私のこと、何とも思ってないよ。私たち、付き合ってたわけじゃ…そこには何も……なかったの」
あの夜、街灯だけが照らす公園で訊いた。
『そこに愛はなかった。そうでしょ?』
芯は答えなかった。
麗叶には、YESと聞こえた。
ルゥは一瞬目を丸くしたあと、
「ふぅ…」
仕方ない人だなと言うように目元を和らげた。
「麗叶さん、お願いだから、そんな泣きそうな顔で、笑わないでくれる?」
「……」
急いで目を伏せると、涙が、ポツンと手の甲に落ちた。
ルゥに気づかれないように、そっと手のひらで隠す。
「ねぇ、なんで芯が芸能人になったか知ってる?」
「確か、社長にスカウトされて」
「あいつがスカウトぐらいで芸能人になると思う? 本当の理由だよ」
「…?」
「聞いてみたら? ついでにあいつの気持ち、ちゃんと聞いてやってくんない?」
芯の気持ち。麗叶が怖くて聞けずにいる『気持ち』。
「麗叶さん、俺ね、別に、もう二度と恋愛できないわけじゃないし。だから、俺に遠慮とか、マジ勘弁してほしい」
普段、クールを装うルゥが、明るく饒舌になる。
「別れるんなら、俺と関係ない理由にしてよ」
立ち上がったルゥは
「俺、まだ死にたくないから」
ニヤッと笑って、去っていった。
ーーーーーーーーーーーーーー
撮影も終わり、やっと開放された彼らは、有名レストランへ向かった。
「かんぱーーい!!」
メンバーとスタッフで小規模な打上げが行われた。
料理が運ばれ、みんなが食べ始めた頃、麗叶のカバンの中で着信音が鳴る。
「ちょっと失礼します」
携帯を取り出し、席をたつ麗叶を、芯はぼんやり見上げた。
麗叶は店を出ると、街灯で明るい歩道に立ち、話し始めた。
話をさっさと終わらせて、早くみんなのところに戻りたい。
「…麗ちゃん?」
携帯電話をしまう手が止まった。
振り向くと
「圭ちゃん?!」
さっきまで自分がいた店から、圭吾が出てきた。
「なんで?」
「えっと…旅行じゃけど」
「新婚旅行? あれ? いいの? 美波さんの身体は大丈夫?」
圭吾の頬に、サッと影がさす。
「安定期、入ったけぇの」
「そっか~」
笑顔の麗叶の表情が、次の瞬間こわばった。
「し…ん」
振り返った圭吾は、芯の顔に目を留め、ふと表情を変えた。
「あれ!? 君はもしかして、あの時の…」
「なんでアンタがいるの?!!」
立ち尽くす芯を押しのけ、美波は凄まじい形相で麗叶に詰め寄り、ヒステリックに叫んだ。
「あんたたち、何やってんのよぉー!!」
あまりの剣幕に、麗叶は言葉を失った。
「こうやって、2人でコソコソ会ってたわけ!? ねぇ! そうなんでしょ?!こんな所まで付いて来て! 気持ち悪い! なんで私達をそっとしといてくれないわけ!?」
誰と勘違いしているのか、何を言われているのか、
麗叶は全く理解できない。
「あの、美波さん。私です。圭吾の姉の麗」
「血がつながってないだか何だか知んないけど、今までもずっとずっと圭吾を誘惑してきたんでしょ!?」
「美波!!」
「……ぇ?」




