49-嵐の予感
ワイキキの高級ホテル、オーシャンフロントの最上階。社長からのご褒美だった。
「いい眺めじゃん」
「はぁぁあ!!最高だぜー!!」
「ん~!! なんかさぁ~、久しぶりにのんびり息してる感じだよぉ~」
芯だけが、開け放たれた窓から、光る海を静かに眺めている。
下の階に麗叶が泊まっている。
同行したがっていた山内のスケジュールが、どうしても調整できなかったのだ。
プルルルルルル。
客室電話が鳴った。
「おい。芯、電話出ろよ」
「なんで俺?」
「英語しゃべれんだろ。お前」
プルルルルルル。
「はぁやぁくっ!!」
「芯、頼むってー!」
カチャ。
ルゥが受話器を取り
「はい、芯。ヨロシク」
さっさと芯に渡した。
「…ハァ~…………Hello. Yes, speaking…… Mm, sure. Got it
ホテルのオペレーターから。別の部屋から電話だって。たぶんマネージャーだろ」
「麗叶さんから?」
芯はルゥに受話器を押し付けると、ベランダに出ていった。
「…麗叶さん? なに?…あー ごめん。みんな、スマホの電源切ったままかも。ノリとアキラ? うん、俺らの部屋に来てるよ。…うん…ふーん。。。」
ルゥが受話器から顔をあげ、声を大きくする。
「おい、撮影の日程が変更になったって。今夜から天気が怪しいから、午後から撮影したいんだってさ」
「げ!!2時間後?!飯食ったらすぐじゃん。中途半端で海も行けねぇ!!」
「え~! 僕、まだ時差ぼけだよ~」
「麗叶さん、アキラとノリの嘆く声、聞こえた? ていうかさ、ハワイまで来て雨とか、マジでテンション下がるんだけど」
ルゥが大きなため息をつく。
「え?!……マジ?!ま、待って。おい! みんな聞いて!!
今日、撮影終わらせたら、明日から1週間、完全フリーにしてくれるって!」
「ホントに?!」
「そういうことなら俺、頑張っちゃう!」
「オイ!…しーーーんっ」
「……ぁ?」
「聞いてた?」
「……」
この2ヶ月、芯の笑顔を誰も見ていない。
しかし、ツアーで『本気』を出した芯は、自身を覆う闇さえも妖しく耀かせた。
世界は、そんな姿に破滅の美学を感じ、魅了されていく。
『もう俺にはSeven C'sしかない。自分の道を見つけなければ』
と、もがく芯を、ルゥは黙って見守るしかなかった。
「はぁ~」
ルゥは、小さくため息をついた。
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「麗叶さん」
ルゥがホテルのロビーラウンジに降りると、麗叶がソファに座り、手帳を眺めていた。
「あれ? ルゥ。早いね。集合時間にはまだあるよ?」
「うん。まぁね」
ルゥは、麗叶の向かいのラタンソファに腰を下ろす。
「何か飲む? いつものグレープフルーツジュース?」
いたずらっぽく笑っても、ルゥの表情は曇ったままだった。
「…ルゥ?」
「ねぇ。」
「なに?」
「なんで、好きなのに別れなきゃなんないの?」
「!!」




