41-1年の罪
「青木?」
「あの…相手の女性は離婚を考えていると仰いましたよね?」
「…それがどうした…」
「原因は夫のDVのようですから、離婚もそう先の話ではないんじゃないでしょうか?」
「それがどうした?」
「成立したら彼女は…」
「だからそれがどうしたっ!!!?」
山内の声量がMAXになる。
麗叶は言葉を失った。
「不倫してた女が離婚した。それだけの話だ」
「…そうですね…」
麗叶も分かってる。
二人の恋が祝福されないってことは…
二人の…。
「それに、あの女は別れん。都合のいい、保身の強い女だよ。あれは」
苦々しそうに、山内が吐き捨てる。
「何でもいいから、すぐに別れるよう手を回せ。多少強引でも構わん」
「まずは来栖直弥と話をしてみます」
「あいつが不倫してるのは事実だ!!直接話を聞いたって新しい情報なんてない。何でもいい。早く別れるように手を回せ」
「でも!! でも、その前にルゥの、来栖直弥の気持ちを…」
「ばかやろー!!あいつの気持ちなんてどうでもいいんだ。青木、これはビジネスなんだぞ!!」
麗叶の中でプチンと糸が切れる。
「彼らは人間です! 道具じゃない!!」
悔しくて悔しくて声が震えた。
「あの人達だって人を愛します。ルゥは1年間も、、苦しい恋をしてたんです。そんな簡単に別れろなんて」
「そんなこと、俺だって分かってる!!」
「だったら、」
「んじゃ、あいつに不倫を続けろって言うのか? あいつはまだ22だぞ。これからって時に黒いシミをつけるんだぞ!!」
「分かってます!」
「お前は分かってない!! いつまでも甘いこと言ってるんじゃない!」
「そんなに簡単に取り上げるんですか? 愛を奪っていいんですか?!」
麗叶だって分かっているんだ。
こんなことが世間に知れたらどうなるか…
でも…
そんなことが分からないルゥじゃない。
あのクレバーで冷静で大人のルゥが、分かってないわけない。
許されないことだって、ルゥが1番分かってる。
それでも関係を続けたんだ。
1年も。
(今のままじゃ、選べない……まだ)
いつかのバラエティで、ルゥは言った。
仕事か愛か選べない。今のままじゃ、まだ。
「お前はあいつの将来を潰す気か?!」
「……」
「お前が動かないなら、俺がやる」
麗叶は山内を睨んでいたが、やっと決心した。
「分かりました。私がルゥを説得します。だから、それまで待って下さい」
「猶予はないんだ」
「必ず別れるよう説得しますから。無茶なことはしないで下さい」
「……。」
「お願いします。山内部長!」
山内は長い沈黙の中、麗叶の覚悟を測るように、強い視線を向けていた。
やがて、短く息を吐く。
「マスコミの動きが怪しい。2日だけだ」
「わかりました。」
麗叶は一礼して廊下へ出た。
『別れなさい』
どう言ったって変わらない。
ルゥが傷つくことに変わりはない。
ルゥの愛を奪うんだから…。
「あれ? マーミヤさんに会いませんでした? 麗叶さんを探して、部長の部屋の方に行ったんですよ」
智恵ちゃんに生返事をして、麗叶は上の空のまま事務所を後にした。




