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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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41/59

41-1年の罪

「青木?」

「あの…相手の女性は離婚を考えていると仰いましたよね?」

「…それがどうした…」

「原因は夫のDVのようですから、離婚もそう先の話ではないんじゃないでしょうか?」

「それがどうした?」

「成立したら彼女は…」


「だからそれがどうしたっ!!!?」

山内の声量がMAXになる。

麗叶は言葉を失った。


「不倫してた女が離婚した。それだけの話だ」

「…そうですね…」

麗叶も分かってる。

二人の恋が祝福されないってことは…


二人の…。


「それに、あの女は別れん。都合のいい、保身の強い女だよ。あれは」

苦々しそうに、山内が吐き捨てる。

「何でもいいから、すぐに別れるよう手を回せ。多少強引でも構わん」

「まずは来栖直弥と話をしてみます」

「あいつが不倫してるのは事実だ!!直接話を聞いたって新しい情報なんてない。何でもいい。早く別れるように手を回せ」

「でも!! でも、その前にルゥの、来栖直弥の気持ちを…」

「ばかやろー!!あいつの気持ちなんてどうでもいいんだ。青木、これはビジネスなんだぞ!!」


麗叶の中でプチンと糸が切れる。

「彼らは人間です! 道具じゃない!!」

悔しくて悔しくて声が震えた。

「あの人達だって人を愛します。ルゥは1年間も、、苦しい恋をしてたんです。そんな簡単に別れろなんて」

「そんなこと、俺だって分かってる!!」

「だったら、」

「んじゃ、あいつに不倫を続けろって言うのか? あいつはまだ22だぞ。これからって時に黒いシミをつけるんだぞ!!」

「分かってます!」

「お前は分かってない!! いつまでも甘いこと言ってるんじゃない!」

「そんなに簡単に取り上げるんですか? 愛を奪っていいんですか?!」


麗叶だって分かっているんだ。

こんなことが世間に知れたらどうなるか…

でも…

そんなことが分からないルゥじゃない。

あのクレバーで冷静で大人のルゥが、分かってないわけない。

許されないことだって、ルゥが1番分かってる。

それでも関係を続けたんだ。

1年も。


(今のままじゃ、選べない……まだ)

いつかのバラエティで、ルゥは言った。

仕事か愛か選べない。今のままじゃ、まだ。


「お前はあいつの将来を潰す気か?!」

「……」

「お前が動かないなら、俺がやる」

麗叶は山内を睨んでいたが、やっと決心した。

「分かりました。私がルゥを説得します。だから、それまで待って下さい」

「猶予はないんだ」

「必ず別れるよう説得しますから。無茶なことはしないで下さい」

「……。」

「お願いします。山内部長!」

山内は長い沈黙の中、麗叶の覚悟を測るように、強い視線を向けていた。

やがて、短く息を吐く。

「マスコミの動きが怪しい。2日だけだ」

「わかりました。」

麗叶は一礼して廊下へ出た。


『別れなさい』

どう言ったって変わらない。

ルゥが傷つくことに変わりはない。

ルゥの愛を奪うんだから…。


「あれ? マーミヤさんに会いませんでした? 麗叶さんを探して、部長の部屋の方に行ったんですよ」

智恵ちゃんに生返事をして、麗叶は上の空のまま事務所を後にした。



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