40-許されない愛
今は秘密の合宿中なので、事務所にはあまり顔を出せない。
だからたまに来ると、内勤の智恵ちゃんが色んな噂を麗叶に教えてくれる。
奥村剛は結局、独立することもなく、事務所に残ったらしい。
「あんなことされたら、私なら辞めますけどね」
と小声で智恵ちゃんが言った。
あんな事…事務所がマスコミに奥村を売った事。
「でも、うち辞めたら、奥村さんって、、、どうなんでしょう?」
上手くいくはずない、奥村以外は全員そう確信している。
「そうそう。中野さん、戻って来たって知ってます?」
「へぇ~そうなの?」
もちろん、麗叶の口利きだ。
事務所も、中野を手の内に置いておいた方が得策だと考えたんだろう。とりあえず、今は…。
「辞めたとばっかり思ってました。私、あの人のこと嫌いだから喜んでたのに、、、残念ですよぉ~」
正直な智恵ちゃんを、なぜか憎めない。
「戻ってきて、ちょっと感じが変わったって誰か言ってましたけど。今だけだと私は思います!」
麗叶は笑ってしまった。
「青木、ちょっと…」
山内が、部屋から顔を出して手招きをした。
(色々たまった業務を押し付けられるんだろうな~。収録が長く押してるから、ちょっと寄っただけなのに)
ため息を一つ、麗叶は山内の部屋へ向かった。
部屋に入ると、渋い顔をした山内が、沸騰しそうな何かを抑えながら訊いた。
「お前、知ってたのか?」
「何の話ですか?」
彼らとの秘密が多すぎて、どれを指しているのか分からない。
「来栖の件だ」
「???」
予想外の名前で驚く。
「ル、来栖直弥が何か?」
「恋人がいるのは聞いてたか?」
「…いえ…知りませんでした。すみません」
「まぁ、あいつはしゃべらんだろうな。ったく!!」
麗叶は嫌な予感がした。
「相手の女性に何か問題でも?」
「大ありだ!!!」
ついに山内が怒声を発した。
「旦那がいる!」
なぜか、麗叶はあまり驚かなかった。
ーーーーーーーーーー
「もう行かなきゃ」
「ん。」
「この前、テレビ見た。やっぱりすごい人気だね」
「…妬ける?」
「わ!!もうこんな時間!」
「。。」
「ごめんね。またね」
「。。。」
ドアの閉まる音を背中で聞きながら、ベッドに座ったルゥは、しばらく空を見つめていた。
ギシ…
ガラス張りの窓に近づいた。
窓に頭をつけて見下ろすと、慌てて走る『センセイ』の姿。
「走ってんじゃねぇよ」
胸が苦しくなる。
「走れないって言ってたじゃん。また転んでも知らないからな」
走れないセンセイが、走る。
急いで、帰る…
俺のモノじゃなくなる。。。
ルゥはシャワールームへ向かった。
こんなに執着してる自分が、嫌になる。
どんどん独占したくなっている。
好きなのかも、分からないのに。
仕事が楽しくなってきたのに。
やりたいコト、見つかったのに。
シャワーの中で、走るセンセイを思い出した。
ルゥは給湯を止め、冷たい水を浴びた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「一刻も早く別れさせろ」
「……。」
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