39-愛と仕事、どちらを選びますか?
「はぁ~い。お疲れぇ~!んじゃ、早速お聞きします。仕事と、愛。どっちを選びますか?はい、アキラ君から」
「今は仕事! いつか大切な人できたら、分かんねーけど」
「ん~。。僕も今は仕事。器用じゃないから同時にとか無理だよ」
「来栖君は?」
「……」
カメラがルゥをアップで映し出す。
(ルゥ?)
麗叶は祈るようにルゥを見つめる。
「俺は…」
(ルゥ、どうしたの? 早く!!)
「今のままじゃ、選べない……まだ」
麗叶は息を飲んだ。
ルゥは、ハッと我に返る。
(俺…今…なんて言った!?!)
「今のままじゃ?! どういう事?」
司会者の声が裏返った。
(マズイ!!)
自分の言葉を思い返し、必死に言い訳を考えるが、全く思い浮かばない。
「彼女がいるみたいに聞こえるよ! 今 まさに愛と仕事で悩んでるの?!なんか来栖君のバックボーンが見え隠れしちゃったけど!」
司会者の鼻息がどんどん荒くなっている。
(俺、何やってんだ!)
汗が吹き出てきた。
「イヤ、違うんです。そういう意味じゃなくて…」
「ほんと? そんじゃさ、教えてくんない? 俺、ちゃんと聞くからさ」
「つまり、俺が言いたかったのは…」
視線を走らせ、無意識に芯を探した。
(芯!!)
腕組みをした芯の目が『お前はどうしたいんだ?』と訊いている。
公表したいのか、隠したいのか。
(彼女がいるって事だろ? 言いたいなら言えよ、芯はそう思ってる。でも…芯。お前は俺の事情を知らないんだ…)
「期待させたみたいですね。でも、俺、マジで彼女とかいないです!」
ルゥの気持ちを受け取り、芯が静かに目を閉じる。
「お前……ばぁか!」
芯がルゥに近づき、お尻にパスっと蹴りを入れた。
「言葉が足りねぇのはアキラだけにしてくれよ。誤解を招く言い方、止めてくんね?」
「誤解?どういう意味? 芹沢君」
「いや。。今更なに言っても、こじ付けにしか聞こえないと思いますよ」
「いいよ、いいよ。説明してよ」
「実は俺ら、事務所に結構な勢いでこき使われてまして…」
「あははは。そうなの?」
「こんなんじゃ友達と遊ぶ時間もねぇって、コイツ、嘆いてて。だから、
『今の忙しさじゃ、仕事と恋愛を天秤にかけてる余裕なんてない、だから、選べない』と言いたかったんだと。。。だろ?」
芯が笑いながらルゥを見た。
ルゥは、ほっとした表情で笑い返す。
「ま、そんなトコかな。とにかく今は、余裕がないんだよ。選ぶ以前の問題だね」
「あ~そういう事か! 俺もルゥの言ってる意味、超考えまくったじゃねーか!
てかさ、それならそうで、普通、想像して答えんだろ! 真面目か!」
裏読みを全くしないアキラが、ルゥにツッコミを入れている。
「そういうの、苦手なんだよ」
いつものクールな態度で、ニヤッと笑ってみせる。
ルゥは、肩でゆっくりと息を吐いた。
背中の汗が冷たくなっている。
良かった。
ごまかしきれたとは思わないが、言い訳すら浮かばないより全然いい。
愛か仕事か。
どっちを選ぶべきか、分かってる。
でも……
俺はまだ捨てられない。
これが、愛かどうかも、分からないけど。
「ルゥはすっごく優しいからね~。なんだかんだ言って結局、愛を選んじゃいそう」
ノリはスタジオのセットに座って、足をプラプラさせている。
「そうなの? 意外ぃ~!来栖君ってクールなイメージあるから、絶対仕事だと思ったよ」
「ルゥは超優しいよ! 目を開けてるときは特に」
「あはは!ノリくん、それって要するに『寝てない時』って言いたい?」
「ちょい待てよ!ノリ! 優しさ関係ねえって!俺は超ジェントルだけど、今は仕事一筋なんすよ。だって今から世界征服が待っ」
「世界征服?」
「あ!!!!!」
青ざめるアキラの隣で、芯がため息をついた。
「Seven C'sの名の由来通りに実践できたら、世界も征服できるかもな。ま、頑張ろうぜ」
「ん!だよな!!うん。はい!頑張ろう!そういうことっす!はい。あは、あは、あははははは!」
「なぁんか、ごまかされた気もしますが、え~まださっきの質問に答えてもらってないですよね?芹沢君。愛と仕事、さて、ど~っち?」
「ボク、ですか?」
芯が、悠然と微笑んだ。
先ほどまでの、ガチャガチャとした忙しなかった空気が、ス~ッと落ち着きを取り戻す。
「ボクは、愛を守るために、仕事します」
「ヒ~~!カッ、コイイ~!!」
悲鳴を上げた司会者がのけぞって悶える。
「ハイハイ。」
「そんなんアリかよ」
「なんか、ムカつくぅ~」
芯は、不敵に笑ってみせた。
その後の司会者の攻撃もアキラの失言もノリの大ボケも、芯とルゥの活躍で笑いに変わる。
長い収録が終わり、麗叶にどっと疲れが押し寄せた。
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