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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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39/59

39-愛と仕事、どちらを選びますか?

「はぁ~い。お疲れぇ~!んじゃ、早速お聞きします。仕事と、愛。どっちを選びますか?はい、アキラ君から」

「今は仕事! いつか大切な人できたら、分かんねーけど」

「ん~。。僕も今は仕事。器用じゃないから同時にとか無理だよ」

「来栖君は?」

「……」

カメラがルゥをアップで映し出す。

(ルゥ?)

麗叶は祈るようにルゥを見つめる。

「俺は…」

(ルゥ、どうしたの? 早く!!)


「今のままじゃ、選べない……まだ」


麗叶は息を飲んだ。

ルゥは、ハッと我に返る。

(俺…今…なんて言った!?!)


「今のままじゃ?! どういう事?」

司会者の声が裏返った。


(マズイ!!)

自分の言葉を思い返し、必死に言い訳を考えるが、全く思い浮かばない。


「彼女がいるみたいに聞こえるよ! 今 まさに愛と仕事で悩んでるの?!なんか来栖君のバックボーンが見え隠れしちゃったけど!」

司会者の鼻息がどんどん荒くなっている。


(俺、何やってんだ!)

汗が吹き出てきた。

「イヤ、違うんです。そういう意味じゃなくて…」

「ほんと? そんじゃさ、教えてくんない? 俺、ちゃんと聞くからさ」

「つまり、俺が言いたかったのは…」

視線を走らせ、無意識に芯を探した。

(芯!!)


腕組みをした芯の目が『お前はどうしたいんだ?』と訊いている。

公表したいのか、隠したいのか。


(彼女がいるって事だろ? 言いたいなら言えよ、芯はそう思ってる。でも…芯。お前は俺の事情を知らないんだ…)


「期待させたみたいですね。でも、俺、マジで彼女とかいないです!」

ルゥの気持ちを受け取り、芯が静かに目を閉じる。


「お前……ばぁか!」

芯がルゥに近づき、お尻にパスっと蹴りを入れた。

「言葉が足りねぇのはアキラだけにしてくれよ。誤解を招く言い方、止めてくんね?」

「誤解?どういう意味? 芹沢君」

「いや。。今更なに言っても、こじ付けにしか聞こえないと思いますよ」

「いいよ、いいよ。説明してよ」

「実は俺ら、事務所に結構な勢いでこき使われてまして…」

「あははは。そうなの?」

「こんなんじゃ友達と遊ぶ時間もねぇって、コイツ、嘆いてて。だから、

『今の忙しさじゃ、仕事と恋愛を天秤にかけてる余裕なんてない、だから、選べない』と言いたかったんだと。。。だろ?」

芯が笑いながらルゥを見た。

ルゥは、ほっとした表情で笑い返す。

「ま、そんなトコかな。とにかく今は、余裕がないんだよ。選ぶ以前の問題だね」

「あ~そういう事か! 俺もルゥの言ってる意味、超考えまくったじゃねーか!

てかさ、それならそうで、普通、想像して答えんだろ! 真面目か!」

裏読みを全くしないアキラが、ルゥにツッコミを入れている。

「そういうの、苦手なんだよ」

いつものクールな態度で、ニヤッと笑ってみせる。


ルゥは、肩でゆっくりと息を吐いた。

背中の汗が冷たくなっている。


良かった。

ごまかしきれたとは思わないが、言い訳すら浮かばないより全然いい。


愛か仕事か。

どっちを選ぶべきか、分かってる。

でも……

俺はまだ捨てられない。

これが、愛かどうかも、分からないけど。


「ルゥはすっごく優しいからね~。なんだかんだ言って結局、愛を選んじゃいそう」

ノリはスタジオのセットに座って、足をプラプラさせている。

「そうなの? 意外ぃ~!来栖君ってクールなイメージあるから、絶対仕事だと思ったよ」

「ルゥは超優しいよ! 目を開けてるときは特に」

「あはは!ノリくん、それって要するに『寝てない時』って言いたい?」

「ちょい待てよ!ノリ! 優しさ関係ねえって!俺は超ジェントルだけど、今は仕事一筋なんすよ。だって今から世界征服が待っ」

「世界征服?」

「あ!!!!!」

青ざめるアキラの隣で、芯がため息をついた。

「Seven C'sの名の由来通りに実践できたら、世界も征服できるかもな。ま、頑張ろうぜ」

「ん!だよな!!うん。はい!頑張ろう!そういうことっす!はい。あは、あは、あははははは!」

「なぁんか、ごまかされた気もしますが、え~まださっきの質問に答えてもらってないですよね?芹沢君。愛と仕事、さて、ど~っち?」


「ボク、ですか?」

芯が、悠然と微笑んだ。

先ほどまでの、ガチャガチャとした忙しなかった空気が、ス~ッと落ち着きを取り戻す。


「ボクは、愛を守るために、仕事します」


「ヒ~~!カッ、コイイ~!!」

悲鳴を上げた司会者がのけぞって悶える。

「ハイハイ。」

「そんなんアリかよ」

「なんか、ムカつくぅ~」

芯は、不敵に笑ってみせた。


その後の司会者の攻撃もアキラの失言もノリの大ボケも、芯とルゥの活躍で笑いに変わる。

長い収録が終わり、麗叶にどっと疲れが押し寄せた。




もし楽しんでいただけましたら、

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