32-葛藤
「…分かった」
ポタポタと音をたて、芯の周りに水溜りは増えている。
「麗叶さん、一人にしていいの?」
後ろの扉は重く閉じられている。入りたい、、傍にいたい、でも…、
「…じゃ、俺が入る」
と、ルゥが足を踏み出した。
「え?」
「こういう時って誰かに傍にいて欲しいもんだろ?お前が一緒にいられないなら俺がいる」
「……」
ドアに手をかけたルゥは、ちょっと考えて、芯をまっすぐ見た。
「俺、抱くよ」
「?!」
「抱きしめてあげてる内に、どうなっちゃうかなんて、分かんないしね。一応、宣言」
そういってノブに手をかけた。
ガシっ!!
ルゥの手を芯が止める。
芯はすごい勢いでルゥを払いのけ、無言のまま、重い扉を開けた。
ーーーーーーーーーーーー
シャワーで泥を落としたのに、芯は部屋にいなかった。
心が痛い。
痛すぎる。
恐怖だけが原因じゃない。
(芯にはオンナがいる…分かってる。そんなこと…)
バスタオルにくるまった麗叶は倒れこみ、ベッドに顔をうずめた。
(いやーーー!)
(お願い、止めっ)
(キャーーー!!)
フラッシュバック。
鳥肌が後頭部に駆け上がり
毛穴が一気に広がった。
意識は一気に闇へ落ちていく――
そこへ、
バタンっ!
扉が勢いよく音を立てる。
「っ!!」
弾かれたように、麗叶は顔を上げた。
「…ぁ。し、ん…」
芯の前に、
麗叶の泣き顔。
その頬が、赤く艶めいてる。
白い首筋にはキラリと光る水滴。
長い髪は、淫靡に麗叶の躰にまとわりついている。
普段は、地味で目立たないマネージャーに徹している麗叶。
だが今、芯の前にいるのは、鎧を脱ぎ捨てた――
「麗叶…」
「…芯。」
夢と現実の狭間に麗叶はいる。
目に映る芯が現実かどうかなんて、もうどうでも良かった。
思考回路は破壊され、理性も自制心もシャワーで流れていった。
麗叶を止めるものは、もう、ない。
芯は踏み出そうとして
濡れて重くなった衣類に、強い嫌悪感が湧き上がった。
(雨…)
本当に、いいのか…
このまま
麗叶に、、、触れて…
芯が拳を固くした。
「き…て…」
麗叶が
まっすぐに、手を、差し出した。。。
ドック、ンッ!
芯の全身、熱く激しい血が駆け巡った。
芯は自分の迷いや躊躇を振り払うように
忌々しい雨に汚されたデニムを脱ぎ捨てる。
虚ろな表情の麗叶を見つめ、、
芯は
一歩…前へ。。。
次回更新予定の33-1話はR18描写が含まれるため、R18版にて掲載となります。
苦手な方や対象年齢未満の方は、後日、こちら(全年齢版)に掲載する33話をお待ちいただけますと幸いです。
どちらをお読みいただいても物語の進行に支障はございません。




