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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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31/59

31-シャワーの中で

麗叶はシャワーを浴びていた。ぺたんと座り込み、下を向き、

洋服を着たまま。


「し、ん…」

肩で息をしながら、麗叶は泣いていた。


見上げた麗叶の顔に、シャワーがかかる。

(芯、泥も雨も、流れていかないの)

「芯。。。」


麗叶を強く抱きしめた。

「麗叶、ゴメン…ゴメンな…」


「ぁ、ぁ、ぁ…」

ザーザーザー…

「怖かっ…」

搾り出した声。

芯の背中に爪をたてた。

声にならない叫び声。


抱き合った二人に、シャワーがあたる。

麗叶は小刻みに震えていた。


(早く、麗叶をきれいにしてやりたい)


芯は、麗叶の洋服を脱がせ始めた。

手が震え、ボタンがうまくはずせない。


麗叶はそんな芯を見つめる。


緊張の糸は切れ、理性の壁も剥がれていく。


破かれたブラウスを脱がせると、きつそうなブラジャーからはみでた白い肌…赤くなっている。


芯はジッとそれを見つめていたが、顔をあげた。

麗叶の長い睫毛に、水滴が何度もたまっては落ちている。


その下で瞳が芯を誘ってる。。。


「……」


長い指を、麗叶の頬に近づける。


「……」

「……」


「クッ!」

(ダメだ!!これ以上、麗叶を傷つけたくない!)

ギュッと手を握り締め、湧き上がる欲望を押さえ込んだ。

「ちゃんと、風呂、浸かれよ」


立ち上がった芯を、麗叶は、見上げていた。


カ、チャ…


涙がまたシャワーにまぎれた。


芯の後ろ姿が、すりガラスの向こうに消える。

洋服を脱ぎ、バスタブに入る。

ヒリヒリと体中が痛む。


恐怖と一緒に、よみがえる違う傷(いた)み。


(行き先は?)

(オンナんとこ)


ポチャン…っ


お湯の中にもぐった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


芯は、部屋を出て行こうとしていた。

これ以上自分がここにいることで、また麗叶を傷つけるんじゃないか。

それが、とてつもなく怖かった。


カチャ。

廊下に出ると、ルゥが壁にもたれて立っていた。


ルゥは芯を見るなり、目を見開いた。

「…おい!芯!」

「…。」

「芯!…お前…何が、あった?」

びしょぬれの芯は顔をそむけた。

水滴は髪をつたい、床に小さな水溜りを作る。


(水溜り…)

「クッソ!!!!」

壁に拳(こぶし)を叩きつけようとして、直前で止めた。

(麗叶に聞こえる)


「芯?」

「男に、襲われた」

「!!!!」

「いや、襲われかけた。未遂だよ。なんもねぇ。」

「…マジかよ…」

「間一髪(かんいっぱつ)で洋介が見つけた」

「…男って、まさか」

ルゥが鋭い眼差しで問う。

「中野?」


「…」

「ビンゴか…。あいつの愛は屈折してる」

「いや。知らねぇ奴だった」

「芯!!」

嘘をつくなよ、とルゥが無言で抗議した。


ルゥを騙すのは難しい。でも…


「ルゥ。」

芯はルゥに顔を近づけ、小声で怒鳴る。

「麗叶は俺達を守りたいって…あんな状況ん中で…。俺があの場にいたことさえ隠したんだ!!」


「?!」

「あいつがそう望んだ。だからあいつは、中野じゃ、ねぇよ」


ルゥが悔しそうに横を向いた。

「麗叶は襲われたりも、してない」


「でも!」

「ルゥ!!」

二人は、やり場のない怒りをぶつけ合いながら、睨み合った。


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