25-秘密
「今日も、いい天気…」
夕闇が静かにノリを包み始めていた。
紀人が、アクの強いSeven C'sの中和剤なのは間違いない。
全てを優しい空気に浄化する存在。
以前、そんなイメージを麗叶が口にしたら
「あいつはただ鈍感なだけ!」
アキラがわざと、眉間にシワをよせ、
ひとりカメラの前に立っているノリを指さした。
「あいつがいっちゃん年上のくせに、1番ガキなんだぜ」
「ノリは天然ボケなんだよ」
「ただのボケ。仕方ねぇだろ、老人だから」
撮影待ちの芯とルゥも加わり、
いつものようにノリをおもちゃにして遊びだした。
カメラマンに撮られていたノリが
「なぁに~?呼んだ~?」
ニコニコと手を振った。
「ノリさん、どこ見て笑ってんの?レンズはこっち!」
叱られたノリを見て、3人は大笑いしていた。
ノリはみんなに愛される。
ふと思い立った麗叶は、唐突に切り出した。
「ノリ、何か悩み事ない?」
なんで?無いよぉ~と明るく答えるものだと、軽く考えていたのに
「え?!!?な、なんで?!」
ノリの声は、麗叶が聞いたこともないぐらい、低かった。
ーーーー
ノリは一人っ子だ。
両親も祖母もノリを溺愛し
特に少女趣味の母は、たびたび彼を着せ替え人形にして遊んだ。
優しい性格ゆえに、いじめられてもおかしくなかったが
愛くるしい容姿とキャラクターで女の子たちに守られて生きてきた。
ノリにとって女の子はみんな、「お母さん」だった。
あまりにも女の子とばかり遊ぶ我が子を心配した父は
突然、一人息子を私立中学へ入れた。
男子校だった。
そこでもノリはみんなに愛される。
高校生になり、ノリも初めて人を愛した。
相手の名は
「哲也」。
今ではトランスジェンダーや同性同士の恋愛も認知されやすくなり
男子校内は『カップル』で溢れている。
それでも、
ノリはそんな自分を、恥ずかしいと思ってしまう。
誰にも知られたくない。
認めたくない。
好きになったテッちゃんにも、告白なんてするつもりはなかった。
女の子は嫌いじゃない。
きっと好きになれるはず!
そんな望みもあり、学友が出した履歴書で芸能事務所に入った。
可愛い女の子をたくさん見たら、きっと『普通』の男になれる!
しかし奥底で
(女の子に騒がれる自分を見て、テッちゃんに嫉妬して欲しい…)
ノリは少しだけ、望んだ。
だが実際には、事務所に入りたての頃に仕事などほとんどあるはずもない。
ノリは普通に高校生活を送り、そのまま大学へ進学した。
いよいよ”Seven C's”としてデビューが決まった時
すでにテッちゃんはアメリカへ渡っていた。
テッちゃんに恋をしてから、もう7年。
今まで女性と付き合った事もある。
SEXもした。
でも、悲しくて悲しくてたまらなかった。
だから、考えるのを止める事にした。
メンバーはみんないい奴で、今のマネージャーの麗ちゃんは可愛い。
家族も大好き。
ファンも大好き。
仕事も楽しい。
「僕は幸せだ!」
(芯たちが知ったら、きっと軽蔑される。
マーミヤさんのこと、アキラは気持ち悪って言ってた…)
閉じた蓋は、めったに開かない。
だから、ノリはいつも元気だ。
ただ…
ただ、一時帰国してたテッちゃんが、今日、再び渡米する。
(会わないでおこう)
クラスメイトの誘いも断った。だけど、
「会っとけば良かった。。かな…」
ノリは庭で
紫煙のような空を見上げている。
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