20-唇から
遠のく意識を、必死に繋ぎとめながら、
芯は激しく、麗叶の唇に自分を押し当てる。
クチュ
二人の唇が、卑猥な音を作った。
「っ」
刹那、麗叶の口が、薄く、開いた。
すばやく、唇の隙間へ芯の熱い舌が入りこむ。
チュ、ク…
「ぁ」
麗叶の胸の奥、何かがパリンと弾け飛んだ。
芯は舌を硬くし
麗叶の唇も舌も、すべてをくれ、と欲望をぶつけてくる。
そんな芯の激情に
熱い舌で必死に応える麗叶。
「ッ、ぁ、、ん!」
二人は、無我夢中でお互いの唇を求めていた。
夢なのか
現実なのか
これは、、、
ホントに自分に起こっているのか…
「麗叶…。」
突然、糸がプチンと切れ、芯の意識が遠ざかっていった。
その全体重が麗叶に圧し掛かる。
「ハァハァハァハァ…」
麗叶は必死に空気を吸った。
(私、、、、私、、、、何やってんの…?)
呆然としたまま、しばらく動けずにいた。
「ハァハァハァハァ…」
足りなくなっていた酸素。
早く、、、身体にいれないと、、
芯とベッドの間から、なんとか抜け出す。
心臓は、バクバクと音をたてている。
「ハァハァハァ」
麗叶は震える手で乱れた髪と服を直し、
部屋を出て行こうとした、その耳にーー
「麗叶…」
麗叶の頭が真っ白になる。
バタン!!!!
自己嫌悪を振り払うように、芯の部屋を飛び出した。
ーーーーーーー
一睡も出来ないまま、アラームが鳴った。
麗叶は重い身体を引きずるようにして、シャワールームへ向かう。
熱めのシャワーを背中に当てると、ゾクゾクと身体が震えた。
昨夜の出来事。
薄暗い月夜の夢だった。と思いたい。
しかし、芯の舌の感触が、今も生々しく残ってる。
あの後、、30分後、
胸のざわめきを押し殺し、麗叶は、芯の部屋へ戻っていた。
「私、仕事しなきゃ」
生真面目な麗叶が、仕事モードで接する。
心は無にして。
水まくらに寝かせ、
冷却シートをおでこに貼り、
水と薬を飲ませた。
芯は、大人しかった。
シャワーを浴びながら考えた。
(私に看病されながら、芯は何を考えてたんだろう?)
キスしたの…覚えてる?
(夢だったと、思って欲しい)
シャワーを止める。
(ホントニ?)
鏡の中の意地悪な麗叶が、
戸惑う麗叶に問い掛けてくる。
鏡に背を向けた。
ーーー
「おはよ!」
麗叶は、自分が熱っぽいことを自覚していた。
「わぉ!麗ちゃん。マスクマン!?」
「ちょっと喉が痛いだけ。
全然平気なんだけどね、うつしちゃマズイから念のためのマスク。
ノリも今日は私に近づかないでね」
シャワーを浴びたのか、
芯が半乾きの髪のまま、リビングルームへ入ってきた。
「おい、芯。もう平気なのかよ」
アキラが心配そうに、ダイニングルームから身を乗り出して訊いた。
「…」
なんとなく、くすぐったくて、芯は無言になる。
「スッキリした顔してるね~! 芯、熱は?」
ノリの差し出したコップを受け取り
「下がった、、、たぶん」
わざとぶっきらぼうに答えると、
芯は水を口にする。
食卓の椅子を引きながら、ルゥが訊く。
「随分早く治ったね。麗叶さんに移したから?」
カシャーン!
「キャッ!!」
グレープフルーツジュースがダイニングテーブルに広がっていった。
「やだ。ごめん!」
「あ~あ~あ~あ~。なぁにやってんの?麗さん」
アキラが、倒れたコップを起こし、テーブルを拭いている。
「麗ちゃん、やっぱりちょっとオカシイよ。
今日はお仕事、休んだらぁ?」
ノリがケラケラ笑ってる。
芯はソファに体育座りすると、膝に顔を埋めた。
得意のポーカーフェイス。
今は出来ない。
パスっ
見上げると、ルゥがニヤリと笑っている。
「いってーな!何だよ?!」
ルゥが芯の隣にポンと座って
「別に~」
と言いながら麗叶に視線を向ける。
「ウゼッ」
わざと苦い顔を作って、膝に埋める。
ルゥは芯の隣で、楽しげに口笛を吹き始めた。
ーーーーーーーーーーーーーー
麗叶は、日に日に体調が悪くなるのを感じていた。
「今日こそ病院行けよ。麗叶」
芯が心配そうに覗き込む。
「うん。」
さすがに運転は危ない。
明日は山内さんに相談しよう、そう決心した矢先…
「麗叶っ!!」
倒れる瞬間を、芯は見ていた。
マーミヤ越しに、鏡にうつる姿。
視界の隅で、さっきまで立っていたはずの麗叶が、
二、三歩、足元をふらつかせたかと思うと、
ユラリと下へ消えた。
「麗叶!!!!」
「…ぁ…」
芯の慌てて駆け寄る姿が、ぼんやりと霞む。
優しく抱えられながら、麗叶は闇に落ちた。
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