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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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19/59

19-熱夜

芯はドアにもたれたまま、気だるそうに立っている。


麗叶は周りを見渡した。


初めて入る芯の部屋。

脱ぎっぱなしの洋服が、椅子にかかっている。

ギターが壁に立てかけられ、

PCの近くには映画のパンフレットが並ぶ。


麗叶はハッと我に返った。

「ゴ、ゴメンなさい!勝手に入っちゃって」


諦めたようにそっとまぶたを閉じ

芯は小さくつぶやいた。

「‥その辺。」

「え?」

「その辺にない?」


ハンガーにかかった長袖Tシャツをみつけた麗叶は

急いで手渡した。

「汗、拭かないとだね。待ってて。

バスタオル持ってくる」


麗叶が自室からバスタオルを手に戻って来ると

扉は再び閉じられていた。


一瞬、手が止まる。

それでも意を決して、


「芯?…芯? 開けるよ?」


ガチャ


麗叶の目に飛び込んできたのは、

ソファに横たわる芯の姿だった。


長身の芯に、このソファじゃ長さが足りない。


「さみっ…」


麗叶は慌てて芯に駆け寄った。

「そんな所にいないで、早くベッドに!」


「…」

勢いで傍まで近づいたが

いざ芯を前にすると、麗叶は動けなくなった。


(どうしよう)

芯に触れる勇気がない。


ためらっている麗叶に気付いた芯は、重い身体を起こし

引きずるようにソファから立ち上がった。

「大丈夫。一人で行ける」


そのまま2,3歩……


ドサッ


「きゃっ!」

崩れ落ちる芯を支えようとした麗叶は、

一緒にベッドに倒れこんだ。


柔らかく、頼りないほどの感触ーー


「ハァハァ…」

芯は意識が遠のいていた。


(そういえば、俺、水飲んで、ねぇかも…)


香水…?

これ…麗叶の、香、、

俺、。。。。。。

麗……


「、か…」


芯が、ベッドと麗叶の間に腕を滑り込ませると


ギュッと強く、優しく、やわらかな肢体を両腕に抱(いだ)く。


「!!」


麗叶は驚きすぎて、抵抗できずにいた。

今、感じている激しい鼓動が、自分のものなのか、芯のそれなのか…

麗叶にも分からない。


芯の手が動いた。

麗叶の髪がほどけ、長いウェーブが芯の手の甲を撫でる。


芯が少し力を緩めたので、麗叶は芯の身体を両手で押し上げた。

「芯…」

芯は、ベッドに横たわる麗叶を上から捉える。


二人の焦点が


ゆっくり


交わって…


本能に囚われた芯の顔。麗叶は釘付けになる。

麗叶の潤んだ瞳。電気が走り、芯を貫いた。


芯の汗が、麗叶の首筋に、


ポツン、、。。と


つたった。


両手で麗叶の頬を、優しく優しく包み込み…


唇が


麗叶に


触れた。




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