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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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18/58

18-マネージャー失格

「今日の予定って何だっけ?」

「ノ~リ~!それぐらい覚えとけ。

今日はMUSIC AREAの日」

「アキラ、それ明日だよ」

「あ、そっか。今日はweb系の2本取りだっけ?」

「それと、GAMEの打ち合わせ?」

「ゲぇ~!!!」


「ゲェ~って、GAMEはキミ達の冠番組じゃない」

麗叶は笑いながら、ノリとアキラが食べ終わった皿やコップを片付ける。


カチャ

扉が開く。

「…。」

「あ、ルゥ、おはよう」

「…。」

無言のまま、テーブルに俯せになったルゥに、いつものグレープフルーツジュースを置いてやる。


カチャ

「…。」

「あれぇ~?芯も寝坊?珍しいね?」

「違ぇよ、ノリ。ほら、ルゥだろ?」


朝からの仕事でだいたい寝坊するのは、ルゥだった。

そんなルゥを、芯は時々起こしてやる。


「俺も眠ぃ~」

アキラは大あくびした。


ーーーーーーーーーーーー


スタジオ奥に並べられたパイプ椅子に座り、セット交換を眺めていたルゥが、首をグルグルと回した。


「なんだかさ、疲れが取れない…」

「これでドラマ入ってたら、完璧死んでたな」

「アキラはこの前クランクアップしたばっかだろ?」

「あぁ。でもよー、芝居してぇなぁ~。映画の話とか来ねぇかなぁ~」

「ハイハイ。」

アキラのいつもの芝居談議を予想して、ルゥが軽くあしらう。

「んか~!映画、出てぇー!」

「俺が映画撮る時、絶対お前は使わないから、安心しろよ」

「芯が作った映画に出る役者なんていねぇーから、安心しろよ」

「あ?」

「あぁ?」

睨みあっていた芯とアキラが、一緒に噴き出した。


「芯ってさぁ、テレビで見るイメージと違うでしょ?」

少し離れた所に座っていたノリが、麗叶を見ずに話しかける。

「うん。やっぱりノリもそう思う?」


「人見知り、激しいんだよ、芯は」

ノリは、チョコレートをポンっと口に入れた。

「テレビの収録なのに、面白くないと愛想笑いもしてくれないっていうのも、人見知りのせい?」


「キャハハハ。芯は不器用だからね。これでも慣れた方だよ。

昔なんてさ、雑誌撮影の時とかす~~んごく大変だったんだよ!

カメラマンが笑って~って言っても、照れて、全然駄目でさ」


「なのに芸能人になっちゃう辺り、よく分かんないわ。ホント面白いね」

麗叶も可笑しそうに笑った。


「普段、一番良く笑うのは芯。

とっても優しいくせに、頑固で意地っ張りなガキだから、僕も時々困るんだ」

ノリはアメリカ人のように、両肩をすくめてみせた。


ーーーーーーーーーーーーー

ガタンっ!


「皆さん、お疲れ様でした」

「お疲れ様ぁぁぁ~」

「おっつ」

「ほらっ。芯、着いたぞ」

ルゥが寝ていた芯を起こした。


「…ん。」

フラフラと芯がステップを降り、トテトテ歩いて玄関に向かっている。


それを見送っていたルゥは、後部座席から運転席のシートを掴んで、麗叶にささやいた。

「風邪薬ってある?」

「あると思うけど、、ルゥ!!体調悪いの?!」


「アレ。」

芯を顎で指し、続けた。

「熱、かなり高いと思う。朝からおかしかったし」


(おかしかった?芯が?!)


麗叶は今日一日の芯の言動を思い起こしたが、全く思い当たらない。

「芯、あんなに笑ってたのに?私…全然気付けなかった…」


「麗叶さんには特に気付かれないようにしてたからね。ま、分かんなくて普通」

ルゥはスッと車を降りて行った。


麗叶はショックだった。

「私、マネージャー失格だ。。。」


ーーーーーー


「往診が駄目だとしても、なんで救急病院に連れて行っちゃ駄目なんですか?!

……でも!…そんな……では、朝一で直接、病院に連れて行きます!!」

山内の非情な発言にカッとなった麗叶は、一方的に通話を切った。


ーーーーーー


芯の部屋の前に立った麗叶は、控えめにノックした。

「芯。具合はどう?欲しいものはある?」


「……」


麗叶は、心配でその場を離れられずにいた。


芯があんな風にフラフラになるなんて、よっぽど具合が悪いのだ。

肋骨を折っても誰にも告げず、隠して舞台の千秋楽を迎えるぐらい、芯は強情で意地っ張り。

なのに…


「芯、薬とおかゆ、ここに置いとくね。水も飲んでね」

持っていたお盆をそっと廊下に置いて立ち去ろうとした時、麗叶の後ろで静かにドアが開いた。


振り向くと、汗でTシャツを身体にはりつけた芯が、ドアに寄り掛かって立っていた。


「芯…」


息が荒い。顔も赤い。


「何やってるの?着替えは?!そんな恰好じゃますます悪くなっちゃう!」

とっさに麗叶は芯の前を横切り、開かれた部屋へ入った。

「着替えは?!どこ?」


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