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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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11/59

11-放火犯

真っ黒な世界に、赤い炎が見える。


「…っぃ!!おい!!」


錯覚?

幻聴?


「おい!!」


誰だよ?うっせーな。

グッ

なんでこんな、、、息、吸いにくいんだ?

イテっ

目が、

目が刺されたみてぇだ。

赤くてアツイ涙が、目を焼いてる。


「おい!!アキラ!!!シッカリしろ!!」

「落ち着いてよ」

「おいっ!!!アキラ!!」

「芯!!落ち着けって!!」


初めて聞く、うろたえた芯の声。


「頭打ってるかもしれないだろ!芯、揺すんな!!」

いつもは冷静なルゥまでも、切羽詰まっている。


「ねぇ、なんで救急車遅れてるの?」

「伊達さん、どいて!!芹沢さんも来栖さんも下がってて下さい!!」


肩に置かれたスタッフの手を力任せに振り払い、芯が、アキラの顔を両手で覆った。

吹き飛ばされたスタッフに、注意を払う者はいない。


「…ンッ」

(この手は?)

自分の頬を覆う誰かの手…、小刻みに震えてる?


「アキラ、返事してくれ…」


(芯の手?まさか…)

あの、何にも動じない奴が?

いつも腹が据わってるっつーか、肝がすわってるっつーか。。

俺の知ってる芯は…。


「…頼む…」


(こんな芯、俺、知らねぇよ)

眉間に力を入れて目を開けようとするのに、うまくいかない。


「うる、せぇよ……。しん」

ショボショボと何度も瞬きを繰り返し、細くこじ開けた瞼の合間から飛び込んできたのは、


「ぁ、、、良、かった…」


小さな小さな少年。


(誰だ、こいつ…)

「芯?」


「生きてる…」


自分の頬を覆う、芯の手の震えが大きくなったので、アキラは、必死に明るい声を絞り出した。

「ったり、めぇだ、、殺すな、っつー…の」


「お前ら下がってろ!!」

なじみで年長のスタッフが、アキラの側から芯を引き剥がす。

脱力した芯は逆らうことなく、フラフラと後ずさり、その場にストンと座り込んだ。


「本田。」

「あ、小野寺の、、、おっちゃん…」

「大丈夫か?」

「痛ぇとこあんけど…大丈夫っす」

「良かった。でもひとまず病院行って来い」

「いや俺、病院とか、、グッ。ゴホっ。イイっす。まだ撮影してねぇし」

「バカか!病院が先だ!」

「いや…行か、なく、て平気っ…す」


頑ななアキラに、ノリがたまらず声をかける。

「ダメだよ、アキラ。ちゃんと診てもらっておいでよ!」

「病院嫌いも、いい加減にしろよな」

心配そうなノリと、腕組みしたルゥがアキラを見下ろしている。


「嫌いとかそんなんじゃ…ゴホ…ただ、俺は」

「本田さん、行きましょう!何もないかどうか、一度しっかり受診して頂きます!」

大人しく優しげな印象だった麗叶の、意外にも強い口調に、アキラはちょっとびっくりした。


「直接連れてった方が早いな」

「そうですね」

そんなやり取りを、下からぼんやり見上げながら、アキラがルゥに尋ねた。

「消防車来た?火は?消えた?」


ビリっと、肌を突き刺すような嫌な空気が、一瞬自分を取り巻いたように感じ、アキラは訝(いぶか)しんだ。

「?」

「すぐに消した。ボヤだったからな。そんなことより本田は自分の心配しろ」

小野寺が先に答えたので、ルゥは言葉を飲み込んだ。


「それでは、本田さん。行きましょう」

「本田。俺の肩に掴まれ」

なぜか小野寺と麗叶が、急いでその場からアキラを連れ出そうとしている。

アキラは、なんとなく落ち着かない気分になりながら立ち上がり、よろよろと歩き出した。

見渡すとさっきとは違う倉庫だとは分かる


ふと、遠巻きに並んでいるスタッフ達が自分と目を合わせないことに気が付いた。

「?」

目が合ったスタッフが、サッと顔を背けた。

「!!」

「本田、しっかり歩け!」

アキラは歩くことに集中できず、どんどん歩調を速める小野寺に付いていけなくなっていた。

(…なんでみんな…?)


静まり返った倉庫内に、3人の足音だけが大きくこだまし始めた時、


「アキラー!!」


芯が、出口へ向かう3人の足を止めた。


「アキラ!お前が、火をつけたのか!?」


芯の問いかけに、全員がギョッとした。


誰もが疑っていながら、それでも口に出すことのできない問いだった。



『ボヤを出したのは、きっと、アキラだ』

『相手はSeven C'sだし、、、文句は言えない』


『わざとか?』

『相手はSeven C'sだし、、、文句は言えない』


『いや、きっと不注意だろう。いつものようにヤンチャしただけだ』

『相手はSeven C'sだし、、、文句は言えない』


『だったら、、、仕方ないよな…』

『相手はSeven C'sだし、、、文句は言えない』


『後日、事務所経由でアキラの関与は否定されるだろう、が』

『相手はSeven C'sだし、、、文句は言えない』


『ボヤの犯人は』


『アキラだ!』




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