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107/125

武将 蒲生氏郷 第107話捕虜・戦利品の処理

(1584年・尾張国/長久手周辺)

敵の退路を断ち、包囲を締めたあと、

街道には倒れた槍、落ちた草鞋、

散らばった旗指物が残っていた。

氏郷は馬を止め、

左馬允へ短く指示した。

「捕虜を後方へ送れ。

 武具をまとめる」

左馬允がうなずき、

兵たちへ合図を送った。

縄を持った兵が前へ出て、

膝をついた敵兵の腕を縛り、

列を作って後方へ歩かせた。

捕虜は八名。

槍を捨てたまま、

うつむいて街道を進んだ。

荷駄隊が前へ出て、

荷車を街道の中央に寄せた。

兵たちが散らばった武具を拾い集め、

槍を束ね、

刀を鞘ごと並べ、

旗指物を一本ずつ確認した。

「槍、十五。

 刀、八。

 旗指物、三。

 馬、五頭」

左馬允が記録帳を開き、

戦利品の数量を一つずつ書き込んだ。

墨が紙に吸い込まれ、

数字が並んでいく。

馬は手綱をつけ直され、

荷駄隊の馬と一緒に列へ加えられた。

汗で濡れた毛並みが光り、

鼻息が白く揺れた。

氏郷は街道の先を確認し、

隊へ向き直った。

「列を整える。

 槍隊、前へ。

鉄砲隊、右。

弓隊、後方。

荷駄は中央を保て」

伝令が走り、

兵たちが静かに動き始めた。

槍隊が前へ進み、

鉄砲隊が火縄を整え、

弓隊が矢束を背に掛けた。

荷駄隊は荷車を押し、

馬の位置を調整した。

その間、

兵たちは水と兵糧を補給した。

水桶が回され、

兵がひと口ずつ飲み、

口元を袖で拭った。

握り飯が配られ、

兵たちが短く噛みしめて飲み込んだ。

鉄砲隊は火薬袋を確認し、

弓隊は矢羽の曲がりを直した。

左馬允が再び地図を広げ、

氏郷のそばへ馬を寄せた。

「殿。

 この先、街道が二つに分かれます。

 右は長久手の丘陵へ。

 左は湿地を回り込む道。

 敵の本隊は右へ向かっている様子」

氏郷は地図を覗き込み、

進路を確認した。

丘陵の影、

街道の幅、

林の位置。

兵が動ける道を一つずつ見ていく。

「右へ進む。

 長久手へ向かう」

左馬允がうなずき、

伝令が再び走った。

兵たちが列を締め直し、

槍の穂先が揃って前を向いた。

鉄砲隊が火縄を布で包み、

弓隊が矢束を握り直した。

荷駄隊が荷車を押し、

馬がゆっくりと歩き始めた。

捕虜はすでに後方へ送られ、

戦利品は荷車に積まれ、

街道は再び静かになった。

氏郷隊は整った列のまま、

長久手の丘陵へ向けて進んでいった。

前方の空気がわずかに張りつめ、

次の戦いが近いことだけが

街道の風に混じっていた。


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